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さようなら我が初恋/バツイチ当主弟×薄幸使用人

某地方における大地主の綾登利(あやとり)家、その屋敷には複数の使用人がいる。 女性が過半数を占める中、一人だけ、異色の存在。 先代の綾登利家当主の世話になったという今は亡き男の一人息子。 糸耶(いとや)という十九歳の美しい青年だった。 「糸耶ぁ……もっと奥にきて……?」 綾登利家の末息子、(みやび)に願われて糸耶は命に従う。 少女じみたか細い足をさらに左右へ開いて、指を深く刺す。 中学生の雅は布団の上でぴくんと仰け反った。 「ん……いいのぉ……そこ、きもちいい……」 「ここでしょうか」 小柄な雅より上背のある糸耶は肉壁の奥まった箇所を指の腹でぬるりとなぞる。 雅は開かされた太腿をぴくぴく痙攣させ、病的な仕草で何度も頷いてみせた。 「そこぉ……糸耶の綺麗な指で、いっぱい……くすぐって?」 「わかりました、雅様」 糸耶自身、これまで数多の男と嫌というほど体を重ねてきた故、男体のどこが最も感じるのか熟知している。 きゅっと締まる後孔に突き立てた中指を反らし気味にし、粘膜を刺激する。 勃ち始めた雅の包茎を指の輪で優しく愛撫する。 「やぁぁ……」 雅は浴衣を乱して甘ったるい声を零した。 抜き差しを始めれば静止できずに何度もシーツに背中を擦らせる。 普段着である立襟のシャツに黒いズボンのまま、糸耶は、ゆっくりと薬指を追加した。 ぐちゅりとさらに後孔を拡げられて雅の包茎までもがぴくぴくと震える。 「ん、糸耶ぁ……」 「何でしょうか」 「僕のおちんちん、しゃぶって……?」 綾登利家に絶対服従の糸耶は頷く。 「わかりました、雅様」 障子越しに聞こえてくる甥っ子の甘ったれた声音に縁側に立つ綾登利伊佐男(いさお)は眉間の皺を深める。 満月の元、静まり返った庭園。 耳を澄まさなくとも容易に聞き取れる淫らな音色。 この家は狂っている。 そんな場所にどうして俺は戻ってきたのだろうか。 半時も経たずして静かに障子戸が開かれた。 「おやすみなさいませ、雅様」 月光の元に現れた糸耶。 カラスの濡れ羽色と言うに相応しい漆黒の髪が夜気に艶めく。 綾登利家の人間及び当主が連れてきた名士たる男共を虜にしてきた、その双眸は。 体の奥底まで暴きたくなるような扇情的な憂いを秘めていた。 「……伊佐男様」 玲瓏たる声音が赤椿と同じ色を浮かべる唇から零れた。 柱にもたれて腕を組んでいた伊佐男の元へ迷わずやってくる。 「戻られたとは聞いていましたが……あの、私……嬉しいです」 まるで少女のように頬を赤らめる糸耶から、伊佐男は、顔を背けた。 「俺が離婚したことが嬉しいのか」 「あ……っ、いえ……あの……」 自らの失言に糸耶は真っ赤になった。 普段、彼は決してこのように表情をころころと変えたりしない。 だが、昔から伊佐男の前でだけは感情を素直に表現する。 「……おやすみ」と、伊佐男は顔を背けたまま口にし、その場を離れようとした。 そんな伊佐男の浴衣を糸耶はきゅっと掴んだ。 振り返った年嵩の男に美しい青年は震える声で問いかける。 「あの……今から、貴方の寝所へ……伺っては……駄目でしょうか?」

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