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それは秘密の-2

「……絢彦君?」 暗がりに目が慣れてきた頃、息子の友達が始めたよからぬ手癖に修司は驚いた。 自分が押入れに隠れていたらガラリと戸が開かれて。 先客にびっくりしてどこに隠れようと途方に暮れかけた彼を快く招き入れた。 クスクス笑っていた口元を戯れに覆ってみれば掌に触れた吐息。 「庭かなー、おかーさん、絢彦とおとーさん見たー?」 息子の声が遠ざかって、反則に等しい聞き込みに苦笑しつつ、自分の胸に無防備にもたれて手癖に夢中になっている絢彦に小声で言う。 「絢彦君、そういうことはね、人の前では……」 うるうると濡れた双眸が自分をちらりと仰ぎ見、修司の注意は中途半端なところで途切れた。 愛玩動物じみた愛らしさにそそのかされる。 その口元を掌で覆った些細な悪戯心を上回るれっきとした下心が芽生えて、こんなこども相手に、息子の友達に、そんな倫理観を容易く放り投げる。 「っ」 絢彦は何度も瞬きした。 したらいけないことだと、悪いことなんだと、自ずとちゃんと知っていたけれども。 今日会ったばかりの友達の父親の大きな掌が唇にくすぐったくて。 嗅ぎ慣れないタバコの匂いに何だかドキドキ、ムズムズして。 お風呂場やベッドの中で一人こっそりしていたソレがどうしてもやりたくなって。 服越しにいたいけな性器を絢彦がなぞっていたら。 小さな手に大きな手がそっと重なった。 「っ……っ……っ」 小さな手は優しく退かされて。 大きな手がゆっくり上下に股間を撫でた。 何回も。 何回も。 わぁ。 いつものと違う、自分でするのと、ぜんぜん違う。 おじさんの大きな手でされるとすごくポカポカする。 もっとムズムズする。 おちんちん、ジンジンする……。 吐息どころか掌に滴り出したヨダレ。 修司は気にしないで絢彦を撫で続ける。 さらさらした癖のない髪に頬を押しつけ、忙しげに瞬きするか弱い双眸を覗き込み、少し強めに。 僅かに膨れてきた性器を服越しに擦り続けた。 「~~……っ」 おしっこ、でそう。 でもさっきしたばっかりだから。 だけどおちんちんジンジン、ムズムズして、くすぐったくて。 「絢彦君」 ヨダレが止まらない絢彦に届いた優しい呼びかけ。 「怖い?」 絢彦は……首を左右に振った。 タバコの匂いが染みついた指をぱくっと甘噛みし、自分の股間に差し込まれた大きな手に小さな手を重ねた。 「見つかんないよ、ポチー……」 探すのに飽きた少年が庭で飼い犬と遊び始めている。 母親はキッチンでおやつの準備をしている。 押入れの暗がりの中で初めての遊びに夢中になる絢彦。 小さな我が子の友達に平然と涼しげに過ちを犯す修司。 「っ……っ……っ、っ、っ……!!」 微かな悲鳴は麗らかな昼下がりのありふれた日常の雑音に掻き消されて……。

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