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いろいろツイてるリーマン彼氏-2
去年ぶりに密に重なった恋人同士の唇。
「ン……っ……ン……」
芳近のお願いごとを聞くなり盛ってしまった薫は我慢できずにキスした。
百八十近い自分より数センチ低い細身の彼をソファに押し倒し、年が明けてからの初キスに夢中になった。
最初は控え目だった彼の舌が自分に応えるように絡んできて。
その内こちらのペースを上回るくらいの積極性を見せ始めて。
芳近もまた久し振りのキスに溺れているのかと思うと嬉しくて、薫は、真下に横たわる彼を薄目がちにうっとり見つめた。
視線を繋げながら交わす口づけは興奮を煽って。
物欲しくなって、それだけじゃあ足りなくて、もっと求めて。
「ンっ」
服越しに意味深に肌身を辿り出した薫の手に芳近は眉根を寄せた。
「薫……」
「ね。見せて?」
「ッ……無理だ、そんな……こんなちぐはぐな体……お前に見せたくない」
「芳近クン。そんなこと言わないで?」
カチャカチャとベルトが外される音色に芳近は赤面した、しかしそれ以上薫を拒むこともなく、ファスナーが下ろされると明後日の方向に視線を縫いつけて濡れた唇をぐっと噛み締めた。
……勃ってる、芳近クン。
……で、例のヤツはどの辺に、
「あ」
ボクサーパンツをやや押し上げた熱源、根元の膨らみを過ぎった指先が到着した感触に、薫は目を見開かせた。
睾丸のほぼ付け根に位置した亀裂。
布越しに上下にゆっくりなぞってみれば、指の腹に引っ掛かった、硬く芽吹いた突起。
芳近はさらに唇を噛んだ。
ぶわりと一気に全身が発汗し、耳たぶまで満遍なく熱くなった。
「や、やっぱり無理だ」
「無理じゃないよ」
「薫ッ……怖いんだ、ソコ……感覚が全然違ってて」
「違うって。それって。もう試したってこと?」
芳近は恥ずかしさの余りぎゅっと目を閉じた。
「ちょっと待ってよ。俺より先に、だ、誰かに見せたのっ?」
「違……ッ違う、自分で……ッ」
「ココでひとりえっちしたの?」
不安を忘れるくらいの快感にのめり込んだひと時が確かにあった芳近は、肯定も否定もできず、呻吟した。
「うう……」
恥辱で悶える恋人に、正直、ムラムラしてしまう薫。
「自分の指……ココにいれたの?」
少し強めに亀裂をなぞり上げる。
「あッ」
「コッチとかも……いぢったの?」
肉芽を緩々と撫で回す。
「んん……ッ」
「ね、教えて……?」
「……い……一本だけ、指……」
「指いれながらしごいたの?」
「ッ……薫、も……聞かないでくれ、こんなの耐えられない……ッ」
どうしよう。
可愛過ぎる、芳近クン。
セックスのときだって必死で声を我慢する君が、触れただけでもう喘ぎそうになって、喉を上擦らせるなんて。
「真面目で、どれだけ難しい内容だって仕事なら何でも自分で解決しちゃう、居酒屋でもネクタイを緩めない君が。ココに夢中になってオナニーしちゃうなんて。すごくエッチだと思う」
ボクサーパンツの中にまで潜り込んだ薫の利き手。
フロントを持ち上げるペニスをおざなりに撫で、二つの膨らみ下に潜む亀裂を直に……上下になぞってみた。
「は……ッッ」
「ちょっと濡れてるね」
「ッ……やめろッ……そんなこと言うなッ」
「どうして? 俺、すごく嬉しいけど。感じてくれてる証拠でしょ?」
肉襞を割るように。
ゆっくり、慎重に、粘膜のせめぎ合うナカへ捻じ込まれていく中指。
「あッ、あッ……!」
「ん。すごく熱い……優しくするから、もうちょっと……」
細やかに収縮する窮屈な奥へ。
「あああ……ッッ」
容易く声を上げる芳近に、指を容赦なく締めつける肉孔に、薫もまた我が身を硬くしていく。
「やばいかも、これ」
スラックスを太腿に引っ掛け、清潔感ある白ワイシャツに覆われた上半身を波打たせてピクピクと痙攣していた芳近は涙目で薫を見上げた。
「……あ」
盛り上がった恋人の下半身を目にした瞬間、肉孔奥に捻じ込まれた指をより締めつけてしまう。
「ぬ、抜いて、指……」
「抜かない」
底抜けに優しいかと思えば時に駄々をこねる子供みたいにワガママになる恋人。
「俺の指でもいってみて……?」
ソファに仰向けになって体中火照らせていた芳近はギクリとした。
おもむろに開始された中指の抜き挿しに甘い戦慄が止まらずに、ぐっと、自分より逞しい肩を掴んだ。
「だ、だめだ……っほんと……むり……ッ」
「自分の指でするよりイイよね……?」
「ッ……俺を怒らせたいのか……ッ」
「俺の指、気持ちいい……?」
腹側の内壁をじっくり緩やかに愛撫されて。
きつく瞼を閉ざした芳近の目元に淡く散った涙の雫。
「……きもち……いい……」
「……」
「お前の指……イイ……薫……」
滅多に「イイ」なんて口にしなかった生真面目な唇が素直に快楽を認めて、薫は、脳天まで発熱させた。
我を忘れてがむしゃらにキスして。
口内の微熱を共有しながら。
あっという間に濡れ渡った肉孔奥で熱心に中指を動かした。
「ッ、ッ、ッ……んん……ッッ!!」
濃厚なキスをされながら小刻みに指を出し入れされて芳近は胸を反らした。
ろくに触れられていないペニスを膨張させ、いつにもまして甲斐甲斐しい淫らな指に貫かれ、甘過ぎる快楽に理性を痺れさせて。
「んーーーーーー……ッッ!!!!」
成す術もなく達した。
射精を伴わずに、肉孔への刺激のみで、目の前が爆ぜるような絶頂に心身ともに落ちた。
「っ……芳近クン」
「ぷはっっ……はぁっ……はぁっ……ン、ぅっ……はぁっっ」
「今……いってくれた?」
「っ……はぁ……薫……お前だって……」
「あ」
薫はビクリと背中を震わせた。
芳近の汗ばんだ手が乱れていない着衣越しにもぞりとペニスを撫で、みるみる勃起していった自分がいつの間に射精を迎えていたことに気がついて……真っ赤になった。
「……まるで、思春期、だな」
「っ……どうしよう、俺、早漏になっちゃうかも」
「……」
「芳近クンがエッチ過ぎて困ります」
「俺のせいにするな……ッ……ん」
飽きない薫にまたキスされて、唇を暖め合うような切なる密着に、芳近の喉骨は小さく震えた。
かけがえのない恋人の温もりに仄かに酔い、そのまま身を任せた……。
それぞれ風呂に入った二人は床に座り込んで深夜のビールを嗜んだ。
「久しぶりだし一緒に入りたかったなぁ」
「俺は初心者なんだぞ、手加減しろ」
「なにそれ。その言い方、何だかヤラシイなぁ」
呆れ、ほんのちょっとだけ怒った芳近、薫の手から缶ビールを奪い取って半分以下だった残りを飲み干した。
恋人の飲みっぷりに薫は堂々と見惚れる。
ほんとに嬉しいよ、芳近クン。
君のお願い、近い将来、きっと現実にしてあげるからね。
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