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いろいろツイてるリーマン彼氏-5
日曜日の夕方。
年が明けて夜の入りが次第に遅くなり、まだ西日が空の端々に燻る六時前後。
どこの明かりも点されていない1LDKの部屋は薄暗かった。
「はぁ……っはぁ……っは……ッ」
中途半端に閉ざされた寝室の遮光カーテン。
ゆとりあるセミダブルベッドで悩ましげな吐息が紡がれていた。
「ん、ん……ッ……っ」
部屋の住人である芳近が這い蹲ってクッションにしがみついている。
寝室専用のハロゲンヒーターが消されている中、全て曝された肌はじわりと汗をかいていた。
「あ、あぁ……っ……薫……っ」
彼の恋人である薫も同じような様にあった。
細身である芳近の慎ましいラインを描く腰に両手を添え、ベッドに膝を突き、律動に励んでいた。
「ん、芳近クン……俺ならここにいるよ……?」
緩んだ唇から無意識に洩れた呼号にふやけた口元でわざわざ返事をする。
あからさまに脈動する自分のペニスが芳近の後孔に出入りする様を薄目がちに見下ろす。
執拗に収縮する尻奥の締めつけに背筋をゾクゾクさせつつ、鉛を孕んだみたいに滾る腹底に忠実に、深く深く突き上げる。
「ン……ッ」
薫がここを訪れたのは昼過ぎだった。
キッチンを借り、自分が購入してきた材料でフェットチーネのボロネーゼを遅めのランチに振舞い、芳近と一緒に後片付けをして、芳近がレンタルしていた映画を観始めて。
映画の途中から今現在まで、ずっと、肌を重ねていた。
『も……もうストックがない』
『えっ。教えてくれたら買ってきたのに』
『三回分あれば……足りるかと思ってた……』
『芳近クン、俺を甘く見ないでよ?』
『……帰れ』
『うわっ、ごめんっ、だって……最後までするの久し振りだったから』
平日の夜は翌日の芳近のコンディションを考えて薫は本番を控えている。
『だから……俺は、一回なら、次の日仕事でも、』
『一回だけじゃ絶対おさまらないよ、シちゃったら勢いで日を跨ぐの明らかだって』
『……薫は年中発情期なのか』
『かもね』
重みが増した薄皮の先を手早く結び、ティッシュに包んでダストボックスに捨てた薫を、ベッドに横たわっていた芳近は横目で眺めていた。
未だ芯を失っていない恋人に辟易する一方で。
時に子供みたいにワガママになるくせに、実はちゃんと欲求をコントロールして自分を気遣っていた薫に愛しさが込み上げてきた。
『……こうして週末に会うのも一ヶ月ぶりか』
『そ。なかなかタイミングが合わなくて、ね』
『……つけなくても、いい』
『え?』
横向きに寝ていた芳近はゆっくりと体勢を変えた。
『そのまま……来ていい、薫』
付き合い始めて二年、エチケットをさぼったのは片手で数えられる程度だった。
「んっ、んっ……ぅ……ッぅ……ッ」
「はあッ……こういうの……っ久し振り……」
ナカで直に触れ合う体温に最初よりも興奮を覚え、薫は、つい激しくなってしまう。
パンパンと音が立つ。
湿り気を帯びて絶え間なく波打つ尻に双球が勢いよく当たり、それがまた刺激となって腹底を燃え上がらせる。
薄皮の隔たりがない密なる繋がりに興奮しているのは芳近にも言えた。
いつもより熱くて、薫のカタチが……俺の奥でもっと硬くなっていくのがわかる。
やばいな。
このままナカでいってほしいくらい……。
二度の絶頂を忘れたかのように股間で仰け反り、しとどに濡れ出した、芳近のペニス。
前戯が施された膣孔に至っては氾濫するように愛液が止まらない。
……今、薫に触ってほしい。
……薫の指に好きなだけ貫いてほしい。
そんな欲求、言うに言えず、快楽に喘ぎながらも芳近は湿り渡った皺だらけのシーツの上で一人情けなく煩悶する。
「ぅ……う、ぅ……ぅぅ……っ」
おねだりしようか、するまいか、いや、やっぱり俺には無理だ、死んでも無理だ、そんな逡巡に悶えている恋人の様に薫は。
……何だかすごくヤラシイ、芳近クン。
……久し振りの生のエッチにこんなにも感じてくれるなんて。
「芳近クン……っ」
「あ……!!」
今日一番の激しい突き上げに芳近は目を見開かせた。
ペニスを大きく出し入れされるロングストローク。
引き抜かれる際、腸壁が引っ掻かれるような危うい心地に戦慄にも近い恍惚感に襲われる。
一気に最奥まで押し戻されたかと思えば、また、括れギリギリのところまで引き抜かれて、勢いよく押し戻されて。
いつになく荒々しいピストンに芳近はいつにもまして蕩けそうになる。
思わず言ってしまいそうになる。
なりふり構わず強請りたくなる。
「かお、る……っおねが……っ」
「はーーーっ……はーーーっ……!」
「あっ、あああっ……おれ……おれの、っ……ン……っあ、う……ッこれ……こわれ……ッ……!」
薫は我に返った。
我に返るなり芳近のナカから……完全に脱した。
「あ……っ?」
「ッ……はぁ……ッ……ナカでいっちゃうとこだった……」
「このバカッ、なんで……っ」
「え……? なぁに、芳近クン……?」
逆上せる寸前まで高まっていた芳近は、何度も瞬きし、ついそこまで出かかっていたおねだりやら急すぎる中断への不平不満をゴクリと呑み込んだ。
「……このバカ……そこまで許してない」
「あはは……でしょ……? 俺、ちゃーんとガマンしたよ……?」
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