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そんな祭りにだまされて/複数×既婚三十路
九年に一度ある村で奉納祭りが行われる。
寄合で決められた成人男性が重要な奉納のお役目を担うこととなる。
「雛田さん、あんたが一番肝心だからね、まぁよろしく頼むよ」
村長直々のお言葉に、役場に勤める妻子持ちの三十四歳、雛田 は緊張した面持ちで頷いてみせた。
昔々、山の獣を束ねる白狐の神様がいたそうな。
天の災いにより、食べるものが尽きた村に、山の恵みを分けてくれたそうな。
その恩返しに村は狐神様に美しい生娘を捧げたそうな。
村はまだその儀式を密かに続けている。
狐神様の宿るご神木を納めた神輿を担ぎ、村中を練り歩き、夜にはまた神社に返上する、というのが表向きの習わしだ。
だが、本当は。
その夜に村人を一人、狐神様に、捧げている。
さすがに女性を選ぶのは忍びなく、いつの頃からか、そう、捧げられるのは男となった。
狐神様に見立てた四人の男達が供物を頂戴するという。
それが祭りの本当の役割だった。
月齢十五、祭りの夜。
近くで祭囃子の陽気な音色を聞きながら、禊を済ませ、浅黄色の浴衣に着替えた雛田。
村外れにある稲荷神社の境内、障子戸に閉ざされたお堂の中央、板間に敷かれた布団の上で正座していたら。
すぅっと障子戸が開かれた。
緊張した表情で眼差しを向ければ、白い浴衣を着た四人の男達が入ってきた。
皆、狐の面をつけている。
雛田は彼らが村人の誰なのか知らされていない……。
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