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閉鎖症候群ロマンス-4

閉ざされた独房の暗がりに肉欲の交わる音が生々しく響く。 「あ……っん……はぁ……っぁっ……」 寝台に四つん這いにさせられた静架はシーツをぎゅっと握りしめて必死で声を殺す。 腰を掴まれて曝した肉穴には我儘なペニスが傲慢極まりない速度で抽挿されている。 うねり蠢く肉底に飽きることなくじゃれついては支配した痕を刻みつける。 「きもちいい……っきもち、いいっ!」 爪を切ったばかりの指が女性じみた柔肌に食い込んだ。 「俺の棒……っ先生の穴の奥で、すごい、すごい……っこれすごいっっ」 「棒、じゃなくて……っそれ、は……ペニス、です、影朗君……?」 「ぺにす……っ? 俺の棒、ぺにすっていうの?」 あどけなく聞き返してくる影朗に静架の胸底は焦げついた。 延々と紡がれる潮騒を遠くにして、深い海の底に沈んでしまった彼女と交わした約束を思い出す。 『あの子をお願い、静架さん』 ごめんなさい、どうか許してください。 欲深い私を、どうか……。 不意にあれだけ激しかった律動が止んだ。 「……せん……せい?」 影朗が、いや、十朗の声が暗がりの静寂にぽつりと落ちて見えない波紋を描く。 「え……うそ、これ……僕、先生とセックスしてるの……?」 「十朗、く、ん」 「うそ……うそ……」 十朗は白衣が絡まった静架の背に抱きついた。 何度も頬擦りし、下半身に満ちる熱に、密に触れ合う温もりにうっとりとため息をつく。 「うそみたい……」 「あ……」 「気持ちいい……先生……先生……」 十朗が動き始める。 影朗が好きなだけ荒らしていた肉底に、そっと探るように、ペニスを擦りつけてくる。 「あ……あ……」 「ン、先生の奥……熱くて、濡れてるみたい……これ、影朗がしたんだね……? 僕も……していい?」 ずっと恋い焦がれていた静架の正面に両手を這わせ、そのまま腹の下へ。 しっとり濡れて硬く息づく性器をぎこちなく掌で包み込み、撫で上げ、揉みしだく。 「や……っ」 「先生……好き……先生も……好き?」 静架は答えずに、ぎゅうっと、シーツを手繰り寄せた。 危うく出かかった答えは頑なに呑み込んで心臓の裏側に仕舞った……。 はらり、はらり、緩やかに舞い降りるイチョウの葉。 「うさぎは何を見て跳ねる?」 「にんじん!」 「違うわよ、ばかね、好きな人が迎えにきてくれたら嬉しくて跳ねるの」 「ほんと?」 「違うよ、ばーか」 中庭で患者同士がつるんでおしゃべりしている。 白衣の裾を靡かせて降り立った静架は一人で芝生に寝そべっている患者の元へ落ち葉をカサカサ言わせて歩み寄った。 「先生」 「こんにちは、具合はどうですか?」 「ポカポカしてきもちいい」 「そうですね」 「このまま眠ってもいい?」 「ここで眠ると風邪を引きますよ、十朗君」 「じゃあせっくすしたい!」 「……影朗君、もう昨日で最後です、もう二度としませんから」 「……どうして、先生……?」 「……十朗君……それは、あの……」 「……僕のこと……嫌い?」 十朗の顔を覗き込み、そうじゃないと言い訳しかけた静架の唇に、影朗はさっとキスした。 母が眠る海の嗚咽を遠くに聞きながら彼は笑う。 「先生がよわってたら俺のこと食べてもいーよ」 うさぎ、うさぎ、だれ見て跳ねる? end

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