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叢雲に月、俺に貴方/甥っ子×叔父

久し振りに土日まるごと休めた週末を法事のため母方の田舎の本家で費やすことにした月島真一(つきしましんいち)、二十八歳。 久し振りに会う懐かしい親戚の面々に囲まれてどんちゃん騒ぎに耽るのは悪くなかった。 「シンちゃん、銀行の営業なんだって? 出世したもんだねぇ」 特に叔父の久史と飲むのは楽しかった。 とは言っても下戸の久史は烏龍茶ばかり飲んでいたが。 父親を早くに亡くしていた幼い真一を久史は弟のように可愛がってくれた。 真一の母親、つまり姉と一回り近く離れているこの叔父はバツイチで。 都会は肌身に合わなかったらしく、長男が継いだこの家に戻って、役場で窓口の仕事をしているそうだ。 「俺の後、子犬みたいに必死で追いかけてたのが嘘みたい」 三十七歳の叔父は本当は愛人の子だった。 器のでかかったばあちゃんを真一は尊敬する。 だから法事にも毎回顔を出す。 ばあちゃんの遺影の隣で同じく遺影のじいちゃんは縮こまって笑っているように見えた。 本家の主である伯父が真夜中だというのに上機嫌でカラオケを開始した。 普段から接待や飲み会でヨイショ疲れしている真一が、どっと疲労を覚え、うつらうつらしていたら。 「シンちゃん、上、行く?」 「んー……?」 「疲れてるんだろ。風呂は明日の朝にして、今日はゆっくり休んだらいいよ」 「でも……片付けとか……」 「いいから。さ、行こう?」 細身の久史は自分より背の高い真一の片腕を肩に担ぎ、よいしょっと、立ち上がらせた。 マイク越しに甥っ子を引き止めようとする兄を笑ってやり過ごし、そのまま、座布団を枕にして堂々と寝ている親戚を避け、ひんやりした廊下に出る。 勾配と段差の厳しい階段を慣れた足取りで上っていく。 時刻は十時に差し掛かろうとしていた。 二階の奥座敷の襖を開け放つと明かりを点け、畳の上に真一を座らせて、布団をとってくる。 「昼間に干したからふかふかだよ、あったかい」 畳の上に敷布団を広げると、ふわりと、上布団をかけた。 相変わらずうつらうつらしている真一に小さく笑い、膝を突いて、肩を揺さぶる。 「シンちゃん、ほら、ちゃんと布団に――……」 まだ笑みの残る口元に不意に唇を押しつけられて。 ぬるりと、口角を舐め上げられた。 「……酔ってるだろ」 「うん、酔ってる」 酔いなど醒めた。 久史と密着していた場所から、その仄かな体温にじわりと我が身を侵食された時点で。 「……っん」 布団の上に久史を押し倒し、狂ったみたいに、キスした。

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