166 / 259

叢雲に月、俺に貴方-2

以前にも同じようなことがあったのだ。 詰襟の制服を着ていた頃、真一は、久史を犯した。 誰よりも優しかった、手を伸ばせばすぐ握って引き寄せてくれた、笑っているのにどこか悲しそうに見えた叔父を。 「ん……ふ、ぅ……」 あの時、久史は真一に抵抗した。 今は、真一のシャツの合わせ目をぎゅっと握り締めて、ぎこちなく唇を開いて甥っ子を受け入れている。 むしろ自ら求めているような。 日向の匂いがする柔らかな上布団がかさかさと音を立てた。 「……ひさし、さん」 「……本当、立派になったね、シンちゃん」 夢中になって溺れたキスの名残りである銀糸を互いの唇に連ねたまま、二人は、見つめ合った。 真一は父を、久史は母を亡くした身で。 かつては共通するその痛みを埋め合うように少年と青年は寄り添い合っていた。 だけど今は。 「……んっ」 真一はまた久史の唇を深く塞いだ。 濡れた舌先を絡ませ、延々と擦り合わせ、唾液を捏ねて。 確かに上昇する微熱を共有する。 「んんっ」 久史の両足の間に割り込んでいた真一は股間まで彼に擦りつけた。 濃厚なキスですでに火照っていた熱源が服越しにぶつかり合う。 「……シンちゃん、誰か来たら……」 奥座敷の明かりは点けっぱなし、廊下に面する襖が誰かの手によって開かれたら、即座に目撃される。 階下からは音程の外れた演歌がずっと聞こえていた。 「……電気消すから」 「ちょ、待って、消すって……続けるってことか?」 「うん」 「だめだよ……明日……明日、どこか別の場所で」 「明日まで待てるわけない」 キス以上のことを求められて狼狽している久史から真一はさっと離れた。 明かりを消すと、またすぐに久史の真上へ戻るなり、もどかしげに自分のカーゴパンツに手をかける。 薄闇の中、久史は止めることもできずに、真一が目の前で取り出したペニスを完全に硬くさせようとしごくのを、ためらいがちに見つめていた。 ここは本家だ。 いつ誰がやってくるかわかったものではない。 ことは早急に進めなければならなかった。 自身の唾液を馴染ませて勃起したペニスを、真一は、指先でおざなりに解した久史の後孔へあてがった。 根元を支え、向きを調整し、ひくつく肉の中へ焦りがちに捩じ込んでいく。 「う……く……っ」 痛いのは当然だろう。 だが十分に馴らす時間が今はなかった。

ともだちにシェアしよう!