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叢雲に月、俺に貴方-3
とにかく早く深く繋がりたくて。
いっぱいにして、いっぱいにされたくて。
「あ……ぁ……はぁっ」
男根のカリ首が内壁に突っかかり、久史は思いきり喉を反らした。
押し開かれた両足をびくびくと震わせ、口元に片腕を押し当て、嗚咽を堪えている。
ぐっと寄せられた眉根。
きつく閉ざされた瞼。
肉のせめぎ合うナカが収縮しているのがわかる。
「んーー……!!」
辛抱できずに真一は一息に久史の後孔へペニスを埋めきってしまった。
肌と肌がばちんと勢いよく重なる。
すごく熱い。
全身が発火してしまいそうだ。
「ごめ、ん……久史さん……」
ぎゅうぎゅうと根元まで噛みついてくるような締めつけにぐっと腹に力を込め、真一は、言う。
久史は緩々と瞼を持ち上げた。
涙の溜まった双眸が薄闇の中で淡い光を帯びる。
「動くよ」
締めつけに逆らって真一は腰を揺らす。
短めの振り幅で、奥の奥を小刻みに突き、振動じみた律動を刻む。
ずぷずぷと湿った音を紡ぎながらペニスを何度も何度も打ちつけた。
「あ……っはぁ……っあ」
腕の隙間から久史はか細い悲鳴を上げた。
のっけから絶頂を目指すハイペースぶりにがくがくとその身を揺らめかせる。
真一は久史のナカで一気に上り詰めた。
「く……っ、ひさしさん……!」
一頻りがむしゃらに動いていた腰がぴたっと静止する。
代わりに久史の全身が痙攣した。
後孔の深奥に白濁した飛沫をどぷりと放たれて、切なげに、その顔を歪ませる。
「は……っあ……っはぁ……ッ」
「ぁ……しん、いち…………」
そっと洩れた覚束ない呼号。
息を乱していた真一は確かにそれを耳にして、狂的に、胸が軋むのを感じた。
射精に荒ぶる下半身とは別のところからせり上がってくる昂揚感。
服越しに密着させていた上体をおもむろに離せばまだ解放に至っていない久史のものが視界に写る。
緊張感よりも欲望が勝って、真一は。
「え……あ、真一……っ?」
体位も変えずに、硬いままのペニスを肉壁の狭間で緩やかにしごきつつ、しとどに濡れている久史のペニスを五指で愛撫した。
「お、俺のことはいいから……っもうやめ……っんぁ……ぁっ」
くちゅくちゅと掌が一度往復する度に久史のナカはより淫らに蠢いた。
肉粘膜がペニスに隈なく張りついて搾り立てるような収縮を繰り返す。
「俺、またいくから……久史さんもいって……?」
「あっあっしんいち……っ」
「俺と一緒にいって」
艶やかな亀頭を握り込むと強弱をつけて摩擦する。
長い振り幅で、後孔から奥にかけて、激しくペニスを行き来させる。
すでに放った精液が絡みついてきてナカの温度が増したような気がした。
「……んっ」
喘ぐ唇にキスした。
喉の奥まで舌先を突っ込んで、口内を掻き回す。
手と腰を連動させては久史をよがらせる。
集中力を乱されそうな広い奥座敷の片隅、薄闇に執拗に響く交わりの音色。
「んっんっ……ふ…………!!」
久史は真一の背に爪を立てて達した。
しごいていた真一の利き手が途端に白く染められる。
えもいわれぬナカの圧迫感に真一も小さく呻き、連続して、彼のナカに欲望の残滓をぶちまけた。
音程の外れた陽気なカラオケはまだ階下で続いていた。
ティッシュで慌ただしく痕跡を拭い、服を正し、窓を一箇所開け放った。
山から吹く冷たい風と虫の玲瓏たる鳴き声が奥座敷に流れ込んでくる。
ひと時のあられもない火照りが整然とした和室から洗い流されていく。
白い満月がぽっかりと夜空に浮かんでいた。
「シンちゃんは立派になったけど、俺は年食っちゃったなぁ」
少年みたいに両腕を窓の外へ投げ出した久史はぽつりとそんなことを言った。
「……じゃあ真一ってちゃんと呼んでよ」
「やだよ、恥ずかしいもん」
月明かりで片頬を染めて久史は笑う。
「ほら、お月さん、君の名前にぴったりだ、月島真一くん」
「じゃあ、名前通り俺に寄り添ってください、叢雲久史 さん」
「月に叢雲花に風? それ、あんまりいい意味じゃないよ?」
「……」
意味をよく知らなかった真一は自分のかっこわるい発言に閉口し、久史の肩に額を押しつけて黙り込んだ。
久史は声を立ててそっと笑い、甥っ子の頭を撫でてやる。
「じゃあ、叢雲に月、お前の光で俺を照らし続けてくれるか、真一?」
end
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