172 / 259
彼は僕の心臓をさらう-3
傷を負った間ノ瀬の背中を舐め上げながら夏生は眸を誘う。
間ノ瀬はシーツにしがみついて甘い声を上げ続けている。
ギシギシとベッドの骨組みが軋んでいた。
「……」
気がつけば眸は自分だけ服を着たままベッドに乗り上がっていた。
間ノ瀬の白い双丘の狭間を浅ましげに行き来する夏生の隆起を眺めていた。
「ほら、交代」
そう言って夏生は間ノ瀬から自身を引き抜いた。
ぶるりと身震いした間ノ瀬の内腿に、つられて流れ出た先走りがねっとりと伝う。
虚空に熱く息づく雄々しいペニスを恥ずかしげもなく掲げて、夏生は、眸のジーンズに手をかけた。
眸はされるがままだ。
酔いと、この二人のセックスに中てられて、理性が飛んでいる状態にあり、いつの間にか自分も勃起していた。
夏生は眸のジーンズとボクサーパンツを膝辺りまでずり下ろすと、外気に跳ね上がった彼の隆起を、虚脱気味でいる間ノ瀬の後孔へと導いた。
「あ……っ」
先端を埋めた瞬間、眸の方が思わず声を上げた。
つい先ほどまで夏生が蝕んでいた領域。
当然、彼の熱が残っているそこに、自分のペニスが呑まれていく。
「……眸?」
さらなる眩暈に貫かれてクラクラしていた眸は、肩越しに振り返る間ノ瀬の右目と目が合い、反射的に謝った。
「ごめん、間ノ瀬、お前……後ろからって、嫌、だったのに」
「……」
「ごめん」
ごめん、と繰り返しながらも眸は自分の腰が動くのを止められなかった。
間ノ瀬の双丘を掴んで前後に激しく律動する。
間ノ瀬は何も言わなかった。
眸の横にいる夏生をちらりと見、また、シーツにしがみつく。
そうして唯一の友達である眸を、夏生の次に、その場所に許した。
「はぁっあっはっ」
堪えきれずに喘ぎながら間ノ瀬を突く眸を夏生は眺めていた。
綺麗な顔立ちをしている間ノ瀬とは違って、眸は極ありふれた容姿をしていて、群集に容易に溶け込む類のタイプだった。
今は目前の快楽に忠実となって無防備に口を開き、時に呻き、果敢に律動に励んでは色欲に目元を濡らしている。
数時間前、初めて顔を合わせた時の、戸惑いと緊張に表情を引き攣らせた眸を思い出して、夏生はうっすらと笑った。
止まることなく頻りに揺らめく彼の腰に手を這わせて、そのまま、下へと伝わらせていく。
「え」
眸は驚いた。
あれだけ夢中になっていた律動を止め、自分に触れてきた夏生を強張った眼差しで見る。
「いいから、そのまま」
反らされた指先が一度も使用したことのない眸の後孔に浅く侵入する。
狭苦しい肉壁の締めつけに逆らって長い指が奥へと進んでいく。
「ん……っ」
「あっ」
眸と、彼に攻められていた間ノ瀬がほぼ同時に声を上げた。
「眸の……んっ、おおきくなった……」
「……使ったことないのか。かなり狭い」
指ごと食い千切られそうだな。
僅かな笑い声と共にそう呟くと、第二関節まで埋めた指先で奥に潜む性感帯を突く。
「ぁっ」
眸は背筋を痙攣させて仰け反った。
「留加がお預け状態だから。動かないと」
「あ、あ、あ」
「ほら」
打ち震える眸の耳元に声を注いで、次に、夏生は唾液に濡れていた唇にキスをした。
ひしめき合う肉壁に沈めた指を出し入れしつつ食むような口づけを眸に施した。
「ん……っ……ぁ」
口角から唾液を零しながらも、眸は、夏生に促されて律動を再開した。
質量の増したペニスに間ノ瀬は鳴き声じみた嬌声を切れ切れに奏でる。
「あ、だめ、いく……っ」
苦しげに眉根を寄せて間ノ瀬は達した。
一気に強まった締めつけに眸も呻き、咄嗟に引き抜いたペニスを柔らかな双丘に擦りつけ、汗ばむ肌身に射精した。
「じゃあ、次は、俺の番」
放精の余韻に呼吸が落ち着く間も与えられずに、眸は、緩やかな手つきで仰向けにされた。
下の衣服を脱がされて両足を大きく開かされ、曝された後孔に、夏生のペニスが宛がわれる。
抵抗する隙も嫌がる余地を抱くのもままならなかった。
濡れた隆起をせめぐ肉壁の中心に割り込ませるようにして、夏生は、眸の中へと突き入った。
「あぁぁあ……っ」
自身の精液に塗れていたペニスをひくつかせて眸は甲高い悲鳴を上げる。
うつ伏せて虚脱している間ノ瀬のすぐ隣で、今日会ったばかりの夏生に、その身を貫かれた。
「中、留加より熱い」
瞬く間に上気した頬を撫で、先走りの絶えないペニスを利き手で刺激し、夏生は眸に問いかける。
「どう?」
鼓膜にこびりつく濁音を執拗に立てて最奥を幾度となく責め苛む。
「いい?」
どうにかなってしまいそうな際どい昂揚感に犯され、嗄れた喉から掠れた声を散らし、眸は、顔の上に翳した腕越しに夏生を見た。
片時も静止することなく動く肩から、恐る恐る、その顔へと視線を移す。
夏生は眸を見つめていた。
危うい獣性をちらつかせる不敵な眼に、眸は、ゾクリとした。
「ンぅ……っん」
前立腺にばかり狙い目をつけたピストンに身を捩らせる。
不要な力に強張る足先を常に揺らめかせて、真上に迫った夏生に、縋った。
「あ、こんなの……俺、っ……もう……む、り」
「大丈夫」
一緒にいってあげるから。
ねぇ、眸?
何かが違うと思った。
それは、多分、心のどこかで惹かれたから。
間ノ瀬が連れてきた夏生という見知らぬ男に。
獣性の双眸にいつの間に心を噛み砕かれた。
こんなの、報われなさ過ぎて、本当、嫌になる。
end
ともだちにシェアしよう!