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貴方のために奏でましょう/男×少年

救急車のサイレンがどこか近くでしている。 「そんなに俺のチンチン、おいしい?」 深夜、広々とした地下駐車場に漂う冷気に首筋を粟立たせながらも、(りょう)の腰元には熱が満ちる。 コンクリートに膝を突いた男は陵のペニスを口いっぱいに頬張って狂ったように舌を動かしている。 愛玩動物が水を貪るような音色が静寂に響いた。 「俺のチンチンしゃぶりながら勃起してるの?」 駐車してある車と車の間で陵は足元に蹲る男に笑いかける。 ベートーヴェンのピアノソナタを記憶している白い指先が男の頭に伸ばされ、きつく、黒髪を握り締めた。 腰を突き上げて男の喉奥に勃起したペニスを何度も突き刺す。 息苦しさに涙ぐんだものの、それよりも純粋に幸福感が勝り、男は嬉々として陵の行為を受け入れる。 「一滴残さず飲んでね」 零したらお預けだよ、豚さん? 細い腰を掴んだ男の腰が忙しげに前後に動く。 「あっあっもっと早く……あぁん、そぉ……っいいよ、いい……」 男は獣じみた息を吐き、車の窓ガラスに手を突いた陵は囁きじみた嬌声を滴らせる。 長い睫毛は快感に震え、男の口に精液をぶちまけたばかりのペニスは突かれる度に白濁の滓を弾いていた。 「いいよ、豚さんのチンチン……奥まできてる……」 清らかにさえ感じられる艶々とした尻の後孔に浅黒いペニスを何度も何度も行き来させる。 カリ首まで引き抜いては勢いをつけて最奥を抉る。 制服のシャツが捲れて外気に曝された背筋を途中まで撫で上げると華奢な肢体がビクリと痙攣した。 根元まで突き入れ、男自身の白濁した先走りが跳ねた尻の狭間に睾丸を押しつけて円を描くように腰を回した。 「あ……あ……あ……」 ゴリゴリと最奥を突く男のペニスに陵は息絶えんばかりに仰け反った。 小学校の低学年の頃、陵の通う学校で飼育していた兎が殺された。 翌日、道端で車に轢かれて死んでいた猫を家に持って帰ると、母親は顔を引き攣らせて元の場所に戻してきなさい、と陵に言い放った。 可哀想ね、兎さん、殺されてしまって。 生き物の命は大事にしなくちゃいけないのよ、陵? 昨日、お母さんはそう言った。 だから僕は。 陵と男が出会ったのは繁華街に建つ雑居ビルの屋上だった。 陵は手摺りの外側に、男は手摺りの内側にいた。 夜の空に浮かぶ月はなく、街の明かりでそこは仄白く濁っていた。 足元に広がるネオンの色で片頬を染めて、陵は、自分の腕を掴んだ男に笑いかけた。 その一瞬に、男は、陵に魅入られた。

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