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貴方のために奏でましょう-2
「ほら、食べて?」
顔面に足を突きつけられれば男は口を寄せ、指の一本一本、口に含んでは丁寧に隈なく舐め回した。
有名私立の制服を着たままベッドに仰臥した陵はクスクス笑う。
男は時に遠慮がちに頭上を見やっては思う。
この世界にこんなにも綺麗なものがあるなんて。
「豚さん、俺とセックスしたい?」
そう言って陵は男の前で制服を脱いでいった。
肉欲を煽る問いかけをされただけで勃起した男は唾液を纏わせた舌で柔い肌の隅々まで熱心に愛撫する。
「汚いチンチン」
白く長い指がペニスに絡みつく。
「これでイかなかったら俺に突っ込んでいいよ?」
急なピストンが始まって男は呻く。
「フフ、待て、だよ?」
それとも豚さんに「待て」なんて理解できない?
放課後の音楽室で奏でられるピアノの音色。
革靴でペダルを踏む。
譜面を埋め尽くす音符達。
鍵盤の上で滑らかに踊り狂う白い指達。
生き物の命は大事にしなくちゃいけない。
大事にされなかったあの頃の俺は多分死んでいたのだろう。
男の両手首をベッドの骨組みに括りつけて逆向きに跨いだ陵は汚いと笑いながら罵ったペニスを口にした。
男は、すぐ目の前で頭を擡げる陵のペニスに舌を伸ばす。
口腔で頻りに立てる二人の水音が生活感のない部屋に尾を引いた。
「豚さんのチンチン、しょっぱくて臭くて、硬くて汚い……」
両手で男の反り返ったペニスを擦りながら陵は裏筋を舐め回す。
同時に腰を揺らめかせて男の唇を執拗に自分のペニスで犯した。
互いの熱源を飽くまで延々と唾液と先走りで濡らし合う。
「俺に精液ぶち込みたい?」
猫の死体は元の場所に戻さず、近所の公園の隅っこにこっそり埋めた。
花壇から無断で引っこ抜いた花を盛り上がった土の上に飾った。
「死んだら生まれ変わるんだって」
周囲は宵闇に閉ざされて誰もいない。
公園内に設置された常夜灯の明かりの元、陵は土の上をそっと撫でた。
「生まれ変わったら、誰かに、いっぱい好かれるといいね」
車に背中を押しつけ、片足を男に抱えられて、陵は喘いだ。
「あん、ぁ……豚さんのチンチン、気持ちいい……すっごくいいよ……」
怒張した肉塊は肉壁を激しく摩擦する。
男は陵の先走りで服が汚れるのも一切構わずに正面を重ね、もう片足も脇腹に抱え上げ、自分と愛車で細身の肢体を挟み込むとさらに欲深く律動した。
「あ、ぁぁ、ぁぁっ、イクぅ、イっちゃう、ぁ、豚さん、俺に……ちょうだい? 豚さんの精液、俺にいっぱい注いで……?」
陵は男の頭を抱き締めると甘く上擦った声で命じる。
願ってやまない命令に従うため、男は短い声を切れ切れに洩らしながらはしたない音を立て、後孔の入口が捲れるほどに陵を責め苛んだ。
「あああ、だめぇ……もぉ出る……ほんとにイっちゃうよぉ……ぁぁぁ……あ、あ……!」
陵は脇腹に担がれた足先を痙攣させて放埓に射精した。
急に強まった締めつけに男も低い呻き声を出し、陵の中へ一息に射精する。
肉の狭間でドクドクと脈打つ男のペニスに陵はだらしなく唾液を溢れさせた。
「あ……俺の中に……いっぱい……豚さんの精液……奥まできてる……」
絞り取るようにキュッと内壁がさらに締まって男もビクリと腰元を震わせた。
ぎこちない仕草で顔を上げて絶頂の余韻に息づく陵の唇を見つめる。
「……いいよ?」
陵の許しを得た男は彼に口づけた。
溢れていた唾液を吸い上げ、舌尖に自分の舌先を絡ませ、緩々と擦り合わせる。
「ふ……ぁ」
角度を変えては深く唇を交えてくる男に陵は切なげに喉を鳴らす。
下肢を重ねたまま、脇腹に絡ませた両足で腰同士を密着させ、最後の一滴まで呑み込むように後孔を淫らに蠢かせた。
「豚さんはキスが一番上手だね」
マンションの地下駐車場から同居している部屋に帰宅し、冷めやらぬ熱に従順となって靴を履いたまま玄関でもう一度セックスした。
乳首を吸われ、濡れそぼつペニスを扱かれながら突き揺さぶられて、陵はフローリングの上でしどけなく仰け反った。
「あ……あ……またイきそぉ……すごい……」
男は陵の体内に再び肉欲の雫を放ち、その後、風呂場でフェラチオをしながら白濁した残滓を優しく掻き出した。
体を拭いてやり、バスローブを着せ、ドライヤーで艶のある陵の髪を乾かす。
生活感のない部屋の真ん中には不似合いな玩具のピアノがあった。
管理会社に相談すればピアノの搬入も可能だと言った男に陵は首を左右に振り、これでいいと、デパートの玩具売り場で選んだものだった。
フロアに寝転がり、人差し指でキーを叩けば安っぽい音色が甲高く響く。
男は対面式のキッチンでホットミルクをつくっている。
甘い匂いを嗅ぎながら陵は一つずつキーを叩いて音を鳴らす。
いつ、どんなタイミングで、男をちゃんと名前で呼ぶようにしようか。
そんなことを思いながら。
あの屋上で貴方と出会って俺はこの世界に新たに生まれ落ちたんだよ。
いつか教えてあげるね、……さん。
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