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お伽の国のタチとタチ/童話パロリバ/狩人×猟師×狩人
■この話は別シリーズ「The Story of.....」から移動させた作品です
深緑に満たされた森を泳ぐように軽やかに前進するのは。
それはそれは鮮やかな赤。
「猟師さん!」
彼は呼号されるよりも前に躍るような足音と森の中で際立つ色彩を目と耳で捉えていた。
駆け寄ってくるなり脇腹に飛びついてきた相手を呆れたように見下ろす。
「また狼に付き纏われるぞ、赤ずきん」
ハンチング帽に千鳥格子柄のニットベスト、緩めたネクタイ、長い足には乗馬ズボンにブーツ。
黒光りする立派な猟銃を背に負っている。
この森一帯を仕事場としている猟師の彼からぴょんっと離れた赤ずきんは重たそうなバスケットを掲げてみせた。
「これっっ。猟師さんに持ってきたんだぁ。この間、狼から助けてもらったお礼」
「ふぅん。お前も気が利くようになったな、昔は平気で人の昼食つまみ食いしてたのに」
幼い頃からこの森でお世話になっている猟師にそう言われて「ッ……いつの話してんの」と赤ずきんは紅潮していた笑顔をちょっとだけ歪ませた。
「俺、もうガキじゃねーもん」
背の高い常緑樹の天辺から草花の咲き乱れる地面へ、愛らしい小鳥の囀りが穏やかに降り注ぐ。
「はい、どーぞ。俺が焼いたんだよ」
あたたかな日だまりの中で赤ずきんはワインやスコーンの入ったバスケットを猟師に手渡した。
「猟師さんのために作った……大切な人といっしょに食べてね」
森の息吹が薫る昼下がり。
猟師はフードを外していた赤ずきんの頭を大きな掌でくしゃりと撫でた。
「お前こそ早くそういう相手見つけろ、赤ずきん」
フンだ。バーカ。
☆☆☆
曲がりくねった枝と生い茂る葉が青空を隠して昼でも薄暗い森の奥深く。
冷たい水が緩やかに流れる川の畔。
「正式にお嫁にいくことが決まったの」
汚れるのも構わずにドレスの裾を落ち葉の上にふわりと広げて座り込む者がいた。
「お母様が人食いって噂もある隣国の王子様なの」
「……それは物騒だな」
ドレス姿で眼鏡をかけた白雪姫に返事をしたのは。
川の深み、青々とした淵に胸の下まで浸からせて水浴びしている狩人だった。
「それに王子様は僕に無断でこの唇にキスしたの。ストーカーみたい」
無表情で不満をたらたら零す白雪姫は冷え切った川の淵で平然と休んでいる狩人を見つめ、血の色をした唇で呟いた。
「僕、もう一度毒リンゴ食べようかな」
「姫」
濡れた前髪がかき上げられて普段は隠れている額が見え、精悍さに拍車がかかり、適度に筋肉の備わった胸板は冷水を浴びて殊更引き締まっているようで。
一度狙いを定めようものならどんな獲物でも仕留める凄腕の狩人。
でもたった一度だけ。
『……逃げろ、姫』
振り翳した鋭い刃を頭上で自ら止め、手放し、密かに殺すよう言いつけられていた白雪姫を絶対なる殺傷圏内から自分の意思でもって逃がした。
「ねぇ、狩人さん」
「……何だ」
「僕の命が危うくなったら助けにきてくれる?」
切ないくらい真摯な視線の先で狩人は頷いた。
すると白雪姫は珍しくふふっと笑った。
「嬉しい」
「……なぁ、姫」
「なぁに?」
「そろそろ上がる……城に帰れ」
「嫌。まだ僕ここにいたいもん」
「……」
「気にしないでどうぞ上がって? ね?」
「…………」
夕闇へ紛れるように遠ざかっていく漆黒の翼。
西の彼方に危なっかしげにぶら下がる三日月。
夜行性の獣らが本能を見開かせて体の芯から目覚め始める時。
「どれくらいぶりだ?」
「……半年くらいか」
「ああ、もうそんな経つか」
「……そうだな」
しーーーーーーん
森と人里の境目に建つ石造りの家が猟師の住まいである。
久方ぶりに訪問した狩人。
久し振りに会うのに弾まない会話。
思い出したように二言三言交わしては再び静寂に包まれる。
気心知れた二人の間ではいつものことだった。
「……これ、お前が焼いたのか」
テーブルクロスもない殺風景な食卓、食事を始めるでもなく互いに無言でいたかと思えば、狩人の問いかけがおもむろに沈黙を破った。
バスケットから取り出したスコーンを眺める彼に猟師は「まさか」と答える。
「赤ずきん、前に話したことあるだろ。ガキの頃から知ってる奴なんだが、この間ガラ悪ぃ狼に絡まれてたから何発かぶっ放して追っ払ってやったら、その礼だと」
「……そうか」
「食えよ。あ、ワイン開けるか」
「……いや、いらない」
「は?」
こいつスコーン苦手だったか?
「……お前が全部食べろ」
「一人でこんな食えるかよ、十個は軽くあるだろ」
「……ちゃんと食べてやれ」
何が言いたいんだ、こいつは。
「……お前のために作ったんだろ」
訪問早々人のこと苛々させやがって。
「あのなぁ。作った本人が言ったんだよ、大切な人と食べろってな、別に俺一人に食ってもらいてぇわけじゃあ……」
自分の失言にすぐに気が付いた猟師ははたと口を閉ざした。
もちろん狩人は聞き逃さなかった。
褪せたロングジャケットを羽織ったまま、得物の弓矢はねぐらに置いて護身用のダガーだけ腰に差してやってきた彼は嫌味なくらい真っ直ぐに猟師を見据えた。
「……そうか」
見据えられた猟師はここぞとばかりに舌打ちした。
「もういい、全部俺が食う、やっぱりお前は一つも食うんじゃねぇ」
まだ暖炉に火を入れるほどに凍えてはいない夜。
それでもなかなかな冷え込みだ、昼よりも増した冷気に対し毛布一枚では些か心許ない。
「はぁ……ッ」
猟師は狩人に覆いかぶさって彼の体温を奪おうとする。
狩人はワインを飲み過ぎてほろ酔い気味な猟師で暖をとろうとする。
繋げた唇、まさぐるように頻りに擦れ合う舌と舌。
覚束ないランプの明かりの中で止まることなく縺れて、絡んで、捩じれて。
寝台にて獲物を狙う肉食獣じみた仕草で頭を低めに落とした猟師は食い漁っていた唇から喉仏へ移動し、首筋を舐りながら、狩人のシャツを大胆に捲り上げると。
「お。傷、増えてるな」
生傷の絶えない硬質の肌にまた新しく刻みつけられた痕を一つずつ味見。
微かに血の味がする真新しい傷跡もあった。
昔に負った古傷の上に重ねられたものもある。
「……お前、記憶してるのか」
「まぁな」
腹部に危うげに走る爪痕を唇でなぞる。
すでに服を押し上げて存在を主張している熱塊は無視してそこばかり集中して味わっていたら。
「うわ」
急に荒々しく引っ繰り返された。
引っ繰り返されるなり肌蹴ていたシャツを限界までたくし上げられ、噛みつくようなキスが連続し、猟師は眉根を寄せる。
「ここと……ここに一つ……」
「骨折るつもりか、荒ぇんだよ。大体、俺は間抜けに後ろとられた覚えねぇぞ?」
「……ホクロだ」
「は?」
「……ここにも」
肩甲骨の下辺り、背筋の際を啄まれて「う」と不覚にも悲鳴が零れた。
「ッ……おい」
下肢の服を余裕のない手つきで蔑ろにされた。
慌てて肩越しに振り返れば一息にシャツを脱いだ狩人が伸しかかってきて。
自身の唾液で濡らした程度のペニスを猟師の尻孔に押し込んできた。
半年ぶりの拡張で呑み込むのもままならないというのに初っ端から激しく腰を打ちつけられた。
「あッうッ、クソッ、いっつもなんでお前に先にヤられなきゃなんねぇんだよ」
「……我慢できなかった」
「あッ……く……だから荒ぇッ」
もう最奥まで占領されて手加減なしに突き上げられ、歯痒い猟師がまた肩越しに狩人を睨み上げれば、羨望的ラインを描く尻に厚みある腰をぐっと密着させて彼は尋ねた。
「……優しくされたいのか」
女みたいに壊れ物みたいにこいつに優しく抱かれる?
まっぴらごめんだ、ぞっとする、吐き気がする。
答えるのも腹立たしくて猟師が睨み続けていたら「……これくらいがお前には丁度いいだろ」とほざいた狩人。
後から逆襲されるとわかっていても本能のまま乱暴に猟師を抱き続けて、そして。
「征服感堪んねぇな、これ……」
予想した通り、猟師に後ろから過激律動されて寝台に張りついた狩人。
腰から臀部にかけて荒削りな野性味漲るライン、見栄えのいい双丘に五指をめり込ませた猟師は幅をもたせて腰を揺らす。
滾り勃つペニスがキツイ肉孔に出入りするのを心行くまで観賞する。
ロングストロークで尻膣最奥までしっかり支配し、青筋が浮かぶまでに怒張して生じる脈動を胎内に刻み込む。
「奥も入口もすげぇ締めつけてくる……大した名器だよな、なぁ?」
紛れもない雄の肉体を隅々まで発熱させた狩人はじっと耐え忍んでいる。
強情な奴。
だからこうしてやる。
狩人の尻を鷲掴みにした猟師は限界寸前まで引き抜いたペニスを尻膣最奥へ一瞬にして乱暴に突き戻した。
「ッッッ!!」
動きを殺したがるかのように勢いづく肉圧を無視して最奥のみに的を絞って連打する。
「あ……ッあ、ッ、……あ」
「そう……それそれ、堪んねぇよ」
必死になって喘ぎ声を押し殺していた狩人が洩らす僅かな嬌声に猟師の下肢はさらに露骨に滾る。
滾って暴走して一心不乱になった末に……燃焼。
「ッ、ん……ッッ」
「ッッは……あ……!」
狩人の奥底で欲望の火花を好きなだけ散らした。
「俺はこっちが堪らない……」
「ッ……この悪趣味が……」
ギシギシと引っ切り無しに軋む寝台。
全裸となった猟師と狩人の欲望全開な夜更かしに相当酷使されているようだ。
「ベッド壊れたら弁償しろよな……?」
狩人に跨らされた猟師。
ようやくじんわり解れてきた尻孔に硬いままの狩人ペニスがずんずん突き立てられ、すでに達したはずの猟師ペニスは茂みの上で逞しく反り返っている。
狩人の肌にねっとり伝う透明な糸雫。
虚空でビクビクと悶える様が嬌態極まりない。
「……ダブルにするか」
猟師の尻を両手で引っ掴んで彼の最奥を規則的に穿っていた狩人。
止む無く濡れながらもずっと自分を睨み続けている鋭い双眸にそう問いかけた。
「ッ、バカが……俺に添い寝したいんならキングサイズにしろ」
さり気なく割れた腹筋を波打たせて猟師はぞんざいに答える。
規則的だった突き上げが徐々に加速していく。
自身の肌がパンパンと鳴らされて歯軋りした猟師は体勢を保てずに狩人の上へ崩れ落ちた。
「ううッ、クソッ、押し潰してやる……ッ俺で圧死しろ、この遅漏狩人ッ……ああッうッあ……ッ」
「ッ……俺は遅漏じゃない」
「んッぅ……んッ……ンぅぅ……ッ!」
唇奥まで独占されるようなキスとともに体底に絶頂を刻みつけられ、猟師は、悔し紛れに狩人の下唇に噛みついたのだった……。
「狼より獣くせぇんだよ、てめぇ」
「……匂うか?」
「下半身が獣じみてんだよ」
「……お前は悪女よりも手に負えない」
「おい、それどういう意味だ」
定められた天敵より打ち勝ってやりたい相手であるのと同時に。
標的を射抜く生業のはずがその胸を逆に互いに射抜かれた猟師と狩人なのだった。
end
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