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この世で一番美しい白雪姫を娘に、二番目に美しい女を妃に迎えた城主様の話/童話パロ/狩人×城主様
■この話は別シリーズ「The Story of.....」から移動させた作品です
黒檀の髪。
赤い唇。
雪のように白い肌。
この世で一番美しいとされる白雪姫を娘にもち、この世で二番目に美しいとされる女を新しい妃に迎えた城主様は、それはそれは見目麗しい人だった。
二人の仲がちっともうまくいかず、城にいればどちらかにどちらかの悪口を囁かれるのを苦にして、彼は息抜きのためにこっそり森を訪れた。
そこで出会ったのは毛皮を体中に纏った狩人。
時々、よい毛皮が手に入れば城へ売りにやってくる、殺生を生業とする一族の子孫だった。
「君はいくつだい?」
「十九だ」
「白雪よりいくつか年上だね」
とても立派な体格に獣を狩るための道具を身につけた年若き狩人。
口数こそ少ないが、共にいる時間が何故だかとても好ましく思え、城主はそれから足繁く森に通うように。
そんなある日、起こった悲劇。
白雪姫が行方知れずとなり、疑いの矛先を向けられたのは一人の狩人頭。
「もう森へ来てはいけない」
「……どうしてだい」
「父は貴方の姫君を殺したかもしれない」
「……」
「もうここへは来るな」
しかし白雪姫は城へと戻ってきた。
白馬に乗った皇子様にエスコートされ、この世で一番の幸福を授かったかのような微笑を浮かべながら。
疑惑の妃はいつの間にか雲隠れ、狩人頭は地下牢から自由の身となり、そして……。
「こんにちは、久し振りだね」
「……」
「白雪は無事城に戻り、そして隣国の皇子の元へと嫁いでいったよ」
「そうか」
「妃も消えて、私は独りぼっちになってしまった」
「……いいや」
「え?」
「貴方には俺がいる」
狩人は寂しげに笑っていた城主を抱き締めた。
強く、強く。
静かな森の中で二人は言葉もなく、ただ、互いの温もりに身を委ねていた。
鏡よ、鏡。
この世で一番私を愛する人は誰?
end
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