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キミの女装に乾杯!!-3

「あれっ?」 侑月はパチパチ瞬きした。 毛足が長く座り心地のいいラグとは別の感触が頬に触れている。 近くへ寄れば洗剤の香りを控え目に鼻先に感じる、皺のない、いつも清潔なワイシャツの感触が。 俊敏に立ち上がって転倒しそうになった別の課の酔っ払い部下を抱き止めた上司の腕の中で、侑月は、さすがに恐縮した。 「か、か、課長、この度はくるくるして転倒しそうになったところを救って頂いて、お、おお、お手数おかけしました……っ」 「……」 すっ転んでなくてもこんな有り様じゃあ嫌われる!! 「き、嫌わないで……」 錯乱中のグミめく唇から本音がついついポロリした。 「か、課長、俺、浮かれ過ぎちゃいました」 「……」 「この間の飲み会で女装なんかして、軽蔑されたのかと思って、課長って真面目で潔癖そうだから、でも、今日、お誘いあって、う、嬉しくって、嫌われてなかったんだぁって……よかったなぁって……ほっとしちゃったら、浮かれて、くるくるして……このザマです……俺がだめだめ部下なのは弁解の余地がありません……」 「……」 「諸岡課長……やっぱり俺のこと嫌っちゃいます……? また、ぷいって、されますか……?」 顔を直視できない侑月は諸岡の懐でぎこちなく問いかけた。 「嫌うわけないだろう」 爽やかめのグリーンシトラスがほんのり香る侑月の首筋に諸岡の回答は舞い降りた。 「課は違うけれど君のことを駄目な部下だなんて思ったことは一度もないよ」 職場で秘かに最も尊敬している諸岡課長にそう言われて侑月は……感極まった。 「か……課長ぉ……」 いつまで経っても解かれない抱擁を疑問に思うこともなく、もぞりと顔を上げ、自分を真摯に見下ろしていた諸岡と目が合い、これまた胸がいっぱいになった。 「おれぇ……嬉ひぃです……」 うるうるしたアーモンドアイに上目遣いに見つめられ、感極まる余り上擦った声で精一杯感謝の思いを告げられて、諸岡は浅く頷いてみせた。 「そろそろ俺も堂々と浮かれていいかな、侑月君」 あ。 課長、僕じゃなくて、俺って言ったーーーー ほんのちょこっとだけ本性を見せた諸岡課長は一年近く味わってみたかったグミの果実を今日やっとテイスティングすることができた。

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