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イケナイ情事で愛されて-3

鳥かごに帰った匡季は玄関で崩れ落ちるようにして蹲っていた。 あの場から走り去って、タクシーを拾って、帰ってきた。 ずっと心臓が急いた鼓動を刻んでいる。 先輩だった。 まさか、そんな、まさか。 「……相模先輩……」 俺のことを捨てた人。 俺の奥を暴いた人。 秩序正しい静かな日々を壊しかけた人……。 「神原」 自宅から一番近いスーパーマーケットで買い物していた匡季は振り返った。 相模が背後に立っていた。 ファーフードがついたカーキのミリタリージャケット、ダメージ加工のブラックデニムに紐ブーツ。 店内で明らかに浮いた存在。 一番際立つのは鋭く尖らされた眼差しだろう。 「お前、何も変わってないな。相変わらず買い物カゴがよく似合ってる」 「先輩、どうして、ここに」 「昨日の夜、お前が逃げたから追いかけただけの話だ」 「え?」 「すぐにタクシー拾ってな。今日の晩飯は上等な和牛か。あの頃は節約してたのに。まぁ、あれだけ立派な家に住んでれば贅沢できるか」 また、匡季の心臓が痛いくらい速い鼓動を刻み始めた。 追いかけた? 立派な家? 先輩、俺のことを尾行したんだ……。 凍りつく匡季とは反対に買い物カゴの中身を一つ一つ手にとって物色していた相模は、長い前髪越しに、かつての恋人に意味深に笑いかけてみせた。 「奥サマ、か、似合いの職業見つけたな、神原」 彼女に相模先輩のことを知られたらどうしよう。 行動力があった先輩のことだ、きっともう彼女の仕事についても把握しているに違いない。 鮎奈さんに何か迷惑をかけてしまったら、どうしよう。 ……先輩はどうして俺を追いかけてきたんだろう? ……俺がよく利用するスーパーにいたんだろう? 俺を一度捨てたあの人が思いがけないタイミングで再会した俺に付き纏う理由なんて、全く、思いつかない。 ……まさか脅すつもりで? ……鮎奈さんに過去を知られたくなかったら、お金を、そういうこと?

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