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イケナイ情事で愛されて-4

雨が降り出した。 午前中、キッチンで後片付けをしていた匡季は遠くで響く雷鳴を耳にして、ため息をつく。 最近、ため息が多い。 何か心に障ることがある度に反射的に相模の存在が呼び起こされて、つい、ため息が出てしまう。 それに雨は嫌いだった。 父さんが事故で死んだときも雨が降っていた……。 静か過ぎるリビングにやけに大きく響く外の雨音。 浮かない表情の匡季が心ここにあらずといった様子で食器を拭いていたら。 チャイムが鳴った。 モニターを覗き込めばそこに写し出されているのはフードを目深にかぶった相模だった。 『ちょっといいか、神原』 どうしよう、どうしよう。 あ、そうか、お金だ、先輩にお金を渡せばいい。 でも、今、手元にはそんなに。 もういっそ通帳ごと渡してしまえば、でも待って、鮎奈さんにもらったものをそんな簡単に渡してしまうなんて、そんなこと、いいの? 掠れたため息が匡季の喉奥から苦しげに滲み出た。 毎日掃除を怠らずに清潔に保たれているフローリングの廊下、吹き抜けの玄関ホールへ、重い足取りで進んで。 震える手で玄関ドアのロックを外した。 カチャリ 扉を細く開けば狂的なまでの雨音が流れ込んできた。 向こう側に立つ相模と目が合う前に、あまりにも急く鼓動に胸が苦しくなり、匡季はつい俯いてしまう。 ふわりと漂う、深い、鮮やかな、綺麗な香り。 「……え……」 顔を上げれば目の前にあるのは色鮮やかなバラの花束だった。 花弁に寄り添う雨の雫たち。 まるで美しい大輪の花達が涙したかのような。 「結婚おめでとう、神原」

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