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平凡リーマンのデキすぎ親友がビッチ化した件について-2

先程までテレビ越しに見ていた二人が目の前に揃っているという光景は倫太郎を何とも妙な気分にさせた。 「倫太郎、久し振り」 「てめぇ、ぜんっぜん変わってねぇのなぁ」 海外ブランドで身を固めたスーツ姿にインテリジェンスぷんぷん眼鏡をかけた弁護士・昴。 全身黒ずくめでオールバック、咥えタバコの暴力団若頭・輝政。 上下スウェットで未だ歯ブラシを咥えたままの倫太郎は、最初は、不意討ちの再会に多少戸惑っていた。 しかし高校時代の親友を前にして気持ちは徐々に昂揚していった。 会いにきてくれたことを素直に嬉しく思った。 「もごご、もご、もごご」 「倫太郎、口、ゆすいできたら?」 「やっぱ相変わらずだな」 言われた通り洗面所でがらがら、ぺっ、して、1DKのDK中央に座り込んだ二人の前に戻った。 「さっきまでテレビ出てたのに」 「インタビュー部分は生放送じゃない」 「泡ついてんぞ」 だけどどうして急にこんな時間帯に。 「昴も輝政も、いきなりどうした? 高校卒業振りだから十年振り? あ、ほんとだ、十年振りだ」 正座した昴、胡坐を組んだ輝政は、どこかぽんやりしている親友を見つめて言うのだ。 「好きだよ、倫太郎」 「高校ン頃から好きだ、倫太郎」 「うん。俺も二人のこと好きだよ。十年経とうと、俺達、親友だろ?」 昴と輝政は同時に首を左右に振った。 「友人間の好き、じゃない」 「誰にも渡したくねぇ、お前のこと」 十年後。 二人がそれぞれ自らに課した期日。 それまでに一人前の男になって、想いを告げようと、卒業式に昴と輝政は誓い合った。 「「どちらか選んでくれ、倫太郎」」 半ドン土曜日。 明日は久々まるっとお休みだというのに倫太郎の顔色は優れなかった。 目の前にドーーーーンと聳えるのは外資系ホテル。 シックでラグジュアリーでムーディーなエントランスにちょっと尻込みしてしまう。 しかし行かなければ。 二人が待っているのだ。 『別々の部屋をとった』 『どっちに来るかはお前次第だ』 どちらもナシ、という選択肢は与えられなかった倫太郎、必ずどちらか選べと言われていた、ある意味、うん、脅しだ。 しかし人のいい彼は言われた通り、一生懸命、究極の二択に頭を悩ませていた。 十年、どこにでもいそうな平凡な男の俺に片思いしてくれてたんだぞ。 スルーなんてできない。 応えないと。 でも、どっちに? 倫太郎は多くの客が寛いでいるホテルロビーに入り、エレベーターで目的のフロアへ向かった。 そして二人が並んで泊まっている部屋の前へ。 どちらのドアを開けるか。 どちらを選ぶか。 倫太郎は意を決して、そのドアをノックした……。

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