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今日は駅前で19時/リーマン×リーマン

清瀬拓実(きよせたくみ)(28)は広告代理店で働いている。 「宜しければ月に二回、お試しに無料で紙面掲載、如何でしょうか? 周囲の反応のご様子を見て継続されるか考えてもらえましたら、もしも確かな手応えなどありましたら、是非とも、ご契約して頂けますと、あっ、宜しいでしょうか? ありがとうございます! では原稿サイズですが、お試しの期間中はこちらの小サイズ枠になりまして……」 今日も営業スマイルを振り撒いて一日頑張ってお仕事している。 槇建志(まきけんじ)(28)は消費者金融で働いている。 「あー……Aさんなんですがね、先月と今月、入金、確認できてないんですよね……Aさん、そちらに債務整理依頼して、大目に見て利子は除外、元金返済という話で和解させて頂きましたよね……その元金返済、滞ってるんですよね……携帯に連絡しても電源切ってるんですよね……ですので、そちらから連絡してもらえませんかね……できましたら来月に未納の二か月分も、まとめて入金してもらえると、ウチとしては非常に助かります……」 今日も電話片手に無愛想な声色で精一杯お仕事している。 清瀬と槇は恋人同士だ。 出会いは合コンだった。 とは言っても男×男の合コンではない。 「コイツね、俺の知り合いで清瀬、広告代理店の営業で優秀なんだよ!」 「槇クンは俺の友達、ちょっと愛想ないんだけど根はイイ奴だから」 8×8というなかなかの大所帯男女合コン、人数集めのため呼び出された二人。 自分を呼び出した知り合い以外は男側も含めて初めて見る顔ばかりだった。 仕事面において出会いの場を重宝している清瀬は営業スマイルで男女どちらにも名刺を配り、おしゃべりを楽しみつつ皆のグラスに気を配り、キョロキョロしている者がいればすかさずメニューを差し出したり。 大衆居酒屋の個室、酒が進めばそれぞれ移動して気になる相手の隣へ、自然とグループが出来上がってそれぞれ話に夢中になり出す頃。 急用の電話に対応して座敷に戻ってきた清瀬は壁際で誰と話をするでもなくポテトをのろのろ摘まみ続けている槇を見つけるなり。 「お代わり頼まなくていい?」 その隣にすとんと腰を下ろした。 清瀬は最初から槇が気になっていた。 色んな人と会話を楽しむことは好きだが恋をする相手はいつだって男だった。 槇君、か。 ここ数年の間でぶっちぎりタイプど真ん中、かも。 「あー……頼もうかな……そっちはビール?」 場に溶け込もうとする誠意が全く感じられないボソボソ声で尋ねられた。 「俺、清瀬」 「ああ……きよせ、さん、ね」 「清い、に、瀬戸大橋の、瀬」 「ああ……瀬戸大橋」 「槇君、何歳?」 「……28、すみません、ハイボールと、」 「俺も28、タメだね、モスコミュールと、他、誰か注文ない?」 黒髪で、痩せ型で、明らかにアウトドアではない感じ、百歩譲って釣りはするかもだけど絶対泳がなさそうだ。 私服も何人かいるけど、彼は俺と同じスーツ、今は脱いでネクタイにワイシャツ腕捲り。 何の仕事してるんだろ、SEとか? 「槇君、何の仕事してるの?」 「消費者金融」 次に店員がきたときに下げてもらうグラスをテーブル端にまとめていた清瀬に槇は答えた。 水滴で濡れた骨張った指先が何だか美味しそうで。 清瀬はちょっと釘づけになった。 「……?」 「あ、そうなんだ、窓口?」 「電話口、裏方」 「ふぅん。休みって毎週ちゃんとある?」 「そろそろ二次会に移動しようと思いまーす!」 槇は二次会には行かないと、居酒屋の出入り口で大した言葉もなしに御一行と別れた。 知り合いの幹事や相手方に二次会に来てほしいと言われ、場の空気を読む清瀬、普段なら笑顔で受け入れていたはずだが。 もっと槇と話がしたくて。 「槇君っ」 「え……あれ、二次会は?」 「明日、用事あって朝早いから帰る、俺もこっち方面なんだ」 「へぇ……」 「で、休みって毎週ある?」
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