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今日は駅前で19時-5

先月まるっと清瀬に会っていない。 仕事中、槇ははたと気が付いた。 「ああ、和解書はそちらで作成して頂けますか、△△様の会員番号と和解日と金額と約款の記載を忘れずに、ハイ」 顧客の過払い請求の件で司法書士と和解し、合意書の作成を依頼し、電話を切った。 デスクの引き出しに常備している板チョコをスラックスのポケットに突っ込むと広いオフィスを出、廊下奥にある休憩コーナーに向かう。 消費者金融の管理センターに勤める槇は司法書士や弁護士相手に過払いやら債務整理の交渉に日々追われている。 残業もほぼ毎日、ストレスでやめていく者も多い。 電話越しに嫌味をぶつけられても怒鳴られても特に何とも思わない、淡泊な性格の槇には合っているようで今は主任というポジションだ、地味ながらも確実に昇給していた。 槇には清瀬という恋人がいた。 広告代理店で働く、大袈裟過ぎない自然な営業スマイルを身につけた、爽やかで清潔感があっておしゃべり上手な、いわゆるデキる男に属性する有能リーマンだった。 槇はバイ、清瀬はゲイだった。 大所帯の男女合コンで人数集めのため呼ばれ、互いに友達の友達として参加し、知り合った。 双方とも忙しくて月二でよく会えた方、ちなみに連絡してくるのはもっぱら清瀬からだ、会えなくても「仕事大変」だとか「オススメ昼飯」とか他愛ないメールを日頃から送ってくれる。 そのメールすらこの一ヶ月ぱったり途絶えていた。 余程忙しいんだろうと、自分からメールしない派の槇はチョコレートを一欠片口に放り込んで一か月前のメールのやり取りをぼんやり眺めるのだった。 その日も法律事務所宛に和解交渉の提案書を作成しまくり、ファックス送信しまくり、残業を終えて槇は退社した。 コンビニ弁当もいい加減、食べ飽きたな。 一週間連続コンビニ弁当だったって聞いたら、清瀬、サラダも食えってしつこく言いそうだ。 その夜、槇の足は前に清瀬と行ったことのある居酒屋に向いた。 カウンターでもゆっくり食事できる雰囲気で清瀬のお気に入りの場所だった。 滅多に外で一人で飲まない槇だが、清瀬と何度か足を運んだことのある店に自然と気持ちが傾いた。 二人並んで座ったカウンターが恋しくなって、街角のビル一階にある、提灯の下がった格子戸をガラガラと開く。 「いらっしゃい」 カウンター内にいた店主と店員に丁度いい声量の挨拶で出迎えられて、スーツを脱いで壁際のハンガーにかければ「こちらにどうぞ」と案内されて。 「え。あ。槇?」 案内されたカウンターのイスの隣には目を見張らせている清瀬がいた。 その隣にはまるで見覚えのない大学生じみた男が座っていた。

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