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今日は駅前で19時-7
久し振りに会えたものの、でしゃばりな弟がいたこともあって槇は恋人の清瀬とあまり話すことができなかった。
週末、午後の休憩コーナーで一欠片のチョコレートとホットココアで過剰糖分を摂取して一息つくと携帯を取り出した。
どうしよう。
メールしてみる? 土日、空いてないかどうか。
でも弟がいて大変そうだったな、いつまでいるんだろう。
面倒臭がっていた割にはビールも飲ませて、ちゃんと面倒見ているみたいだった。
オフィス街を見渡すことのできるガラス張りの休憩コーナーで槇がメールの一文字目を打つのに迷っていたら。
携帯画面にメール受信のお知らせ表示がピロリン。
つい反射的にタップすれば、意中の相手から週末お誘いのメール……ではなく。
<まきさん、夜ごはんおごってください(´3`)>
恋人の弟、大雅から飯おねだりのメールだった。
先日、居酒屋で清瀬がトイレに立った間に強請られてLINE交換していたわけで。
「おいしーです、このレバームース」
槇はこってりイタリアンに大雅を連れて行った。
清瀬はさっぱり和食派で、二人だとなかなか行けない、女性客が多くて一人だと行かない店だった。
「ビール、おかわりしていーですか?」
槇が頷けば悪びれるでもなくおかわり注文、しかも料理を一つ追加。
クリームソースの濃厚パスタを食べる槇は怒るでもない、グラスワインを一口飲んで、次は里芋のニョッキを頬張る。
マイペースな兄の恋人に大雅は興味津々のようだ。
「にーちゃんとはどうやって知り合ったんですか?」
「……合コンで」
「男同士の?」
「……そういうんじゃないけど」
「槇さんって細いけど、けっこーガッツリ食べますね」
「……」
「サラダ、頼まなくていーですか?」
その言葉に思わず槇は笑ってしまった。
声一つ立てずに普段は無愛想で硬い面持ちをほんのちょっとだけ柔らかく崩した。
「清瀬に似てる」
それだけ言って牛の煮込みに夢中になる。
カウンター席で隣に座っていた大雅はそんな年上の男をまじまじと眺めていた。
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