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マーメイドな上司-5
「眼福ねぇ、コバンザメちゃん……?」
新は仰向けになった上司に跨らされた。
後少しのところで脱げそうなバスローブをその身に引っ掛けて、真下から貫かれて、背筋のゾクゾクがずっと止まらない。
「課長ぉ……ッみずほ、さぁん……っ」
勝手がわからず、ただ成すがまま突き上げられている新は社内一綺麗な男をとろんと見つめた。
「おれ……ずっと、これからも……瑞帆さんのコバンザメでいて……いいですか……?」
普段の刺々しさを捨てて甘えてきた部下に上司は会心の笑みを浮かべる。
「アタシにずっとくっついて泳いでなさい、新……?」
「ひゃ……んッ」
「イケナイコね……タブーを破らせて、雄猫みたいに盛らせて……アタシのことどうするつもり?」
「み、瑞帆さんこそ、こんなッ、こんな激しぃの、おれッ、変になっちゃッ、あんっ、あんっ」
自分の真上でガクガク揺れていた新を引き寄せ、飽き足りずに何回もキスをし、その最奥で瑞帆は果てた。
「んぶっ、んッ、んむッ、ぅ、ッんぷ、ぅ、ッ」
口を塞がれて呼吸がうまくできずに咽ぶ新に最後の一滴まで注ぎ込む。
身も心もすっかりとろとろになった部下をたっぷり甲斐甲斐しく甘やかす……。
「ほら、あれがコバンザメよ、コバンザメちゃん」
「知ってますよ、テレビで見たことありますし」
「あらぁ、でも肝心のアタシがいないわ」
「は?」
週末の昼下がり。
多くの客で賑わう水族館の巨大水槽を前に、瑞帆は、いぶかしそうにしている新ににこやかに告げた。
「人魚」
「……捕獲が難しいのかもしれませんね、意外と凶暴で肉食なのかも、それか永遠に来ない王子様を深海で待ち侘びているか」
「そうねぇ。見目麗しい王子サマも捨て難いけど。ひねくれたコバンザメちゃんの方が好みかもねぇ」
「付き合いきれません」
人前でいちゃつこうとする上司の腕を振り払ってその場から足早に部下は立ち去った。
「……王子様なんて噛みついてやる」
でもちゃっかり嫉妬しちゃうコバンザメちゃんなのだった。
■春先取りオマケ小ネタ
「世にも無駄な時間を過ごしてる……」
「あら、何が無駄なのかしら」
「瀬尾課長」
「ちょっと。こーんなゴージャスな桜の下でオジサン気分にさせないでくれる、コバンザメちゃん」
「花見の席取り、好きでもないお酒に冷えた料理、実りのない会話、何もかもが人生の無駄に思えます」
「言うわね、コバンザメちゃん、アタシの前でならいいけど宴会部長の前では禁句よ」
「ひっく」
「て、なーに、何気に缶ビール空けてるじゃない」
「課長ぉ~……まだまだヒヨッコだからって花見の席取り押しつけられて……他の同期は仮病でサボりやがって……」
「あらあら」
「ひっく……周りは楽しそうで……ひとりぼっち……寂しかったです」
「そんなこと言う部下は宴会終わったらお持ち帰りの刑執行よ」
「……してください……お持ち帰り」
今宵は満月、桜は八分咲き、揺らめく提灯、哄笑三昧。
「Zzz……」
「まだ始まってもいないのにダウンするなんて、困ったコバンザメちゃんね」
春風に溶け込む柔らかな瑞帆の声を子守唄代わりに、なかなか不安定ながらも眠気には勝てず、上司の膝枕に甘んじるツンデレ部下なのだった。
end
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