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二名様カウンターです/ リーマン×リーマン=根暗風眼鏡後輩×ノンケ先輩

「休みだし、天気いいし、どっか行こ?」 二年前に別れた最終学歴ならぬ最終恋人は夏でもないのに海やら郊外のカフェへお食事やら、よく晴れた休日にはとにかく遠出したがった。 せっかくの休みなんだからウチでのんびり正しく休む、という選択肢はなかったらしい。 だけどこいつは。 「あ、ちょっと寝てました、何回か前にスキップしてもらえます」 よく晴れた行楽日和の日曜日。 買い置きしていた缶ビール片手に冷蔵庫の余り物で作った焼きそばを昼に食べ、撮り溜めしていた深夜映画を観賞していた相澤(あいざわ)(33)は。 三人掛けソファの反対側でつい先刻まで頭をグラグラさせていた安西(あんざい)(28)に言い放ってやる。 「やだ」 「ちょっと説明してもらえます」 「めんどくさい」 「戻します」 「あ。ばか」 コイツといると楽だな。 何にも考えないでいい。 うん、馴染む。 会社の後輩である安西と休日共に自宅で過ごすくらい親しい相澤だが、彼に関して一つだけ気になる点があった。 「戻し過ぎました」 どうも自分に惚れているらしい、という点だ。 黒髪くせっ毛で眼鏡の安西は会社では「根暗っぽい」と評されていた。 あまり自ら進んで周囲とコミュニケーションをとろうとしないから、猫背だから、飲み会ではいつも隅っこだから、理由は定かではない。 「先輩」 情報システム会社の開発部に中途採用で入って数年が経過し、同じ運営課の先輩である相澤にだけは懐き、たまの休日には自宅に遊びくることもしばしば、だ。 「飲み、行きましょう」 積極的にお誘いまでしてくる。 歴代彼女だったならば嫌がりそうな古くて狭い居酒屋に連れていけば「落ち着きます」とカウンターで得意の猫背になって淡々と生ビールを飲む。 古くて狭いが魚や串料理が美味しくて安い店、生ビールからハイボールへ、周囲のご年配による哄笑をBGMにして飲み進めていけば。 「あ、埃だ」 飲んでいたら安西は必ず相澤の髪に触れてきた。 いやいや、いくら古い店だからって埃が落ちてくるほどではない。 飲んでたら毎回頭に埃ついてるって、それおかしいだろ。 「見せろよ」 「もう捨てました」 相澤の代わりに秋刀魚の皮や骨を器用に取り除いて「どうぞ」と皿を差出し、牛スジの煮込みをぱくぱく食べる安西。 やっぱりホモなのかな。 俺に気があるのかな。 「先輩、彼女できました?」 やっぱりホモかも。 「あ、また埃だ、ここに」 あ、やっぱりホモだ。 「今度どこか大きなお風呂とか行きたいです」 …………。 「大きなお風呂って何だよ、温泉だろ」 「温泉って言ったら生々しいかと思って」 あーでも馴染む、ウチにいるみたい、幼馴染みと実家で飯食ってるみたい、古くて狭い居酒屋なのに、そもそも幼馴染みなんて一人もいねーし、酔っ払ったかな。

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