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二名様カウンターです-2

明日は出勤でも半ドンでもない一日まるっとお休みの土曜日。 残業を速やかに終らわせた相澤と安西は海鮮鍋を突いていた。 「カキ、もういいぞ」 「いただきます」 相澤の自宅マンションでカセットコンロ鍋を楽しんでいた。 テレビでは八時台のバラエティ番組が流れている。 ダイニングテーブルには買ってきたばかりのブリや締めのラーメン、白ワインなんかも並んでいる。 「やばいです。海老が熱くて剥けません」 そう言いながらも安西は器用に最初に剥いた海老を相澤の取り皿に乗っけ、自分の分を「あちち」と呟きつつ剥き始めた。 上下ゆったりスウェットに着替えた部屋の主に対し、スーツを脱いで、緩めたネクタイは腕捲りした白ワイシャツの胸ポケットに入れている。 「あちち」 前の彼女ん時は俺が剥いてやったっけ。 今は海老も秋刀魚も世話してもらって、自分でやるのは枝豆くらいか。 ん? いやいやいやいや? 安西と歴代彼女を比べるって、おかしいだろ。 「よし。そろそろ白ワインいくか」 「ワイン、湯呑みで飲むんですか」 「グラスねーもん。和風でいいだろ」 「来月の納期、間に合いますかね」 「鍋のテンション落とすな」 愚痴を言い合うでもなく、しんみり語り合うこともなく、ポン酢と刻みネギで淡々と鍋を楽しむ。 気が付けばテレビは十時台のニュースを流していた。 締めのラーメンをずるずる啜っている安西に「終電で帰るのか?」と同じくラーメンをずるずるしながら相澤が尋ねてみたら。 「今日、泊まってもいいですか」 「ッ……」 安西の回答に相澤は危うくラーメンを噴きそうになった。

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