誰にも明かしてはならない秘められた関係。 「あ……ッ」 薄暗い部屋に掠れた声が落ちる。 そんな声に絡まる動物じみた低い息遣い。 肉奥で奏でられる小刻みな抽挿音。 「あ……ぁ……ッ……ッ」 全ての肌を晒した優生は佐久間の真下で扇情的に身悶えていた。 両足を左右に開かされた状態で膝を固定されて、最初は気恥ずかしそうにしていたが、律動が繰り返されるにつれて羞恥心は否応なしに薄れていった。 狂いそうなくらい全身が火照っている。 隆々と聳え勃つ佐久間のペニスに後孔を抉じ開けられ、肉巣を余すことなく屠られて、腹の底が片時も静まることなく滾っている。 「さく、ま、さ……ッ」 優生と同じく裸身となった佐久間はずっと彼を見下ろしていた。 熱せられた新雪の肌。 触れれば掌によく馴染む。 「あ……っん」 さらに両足を抉じ開けて最奥にペニスの頂を強めに擦りつけてみれば下腹部を波打たせ、優生は、きつく目を閉じた。 「優生」 呼号された優生は怖々と目を開く。 「俺を見ろ」 そう言って、佐久間は。 すでに限界近くまで追い込まれていた優生の熱源をしごき始めた。 「ッ……ッあ、ん、ッぁぁ……っ、ッ……ッ！」 上下に激しく摩擦され、迫っていた射精感がより一気に近づいて優生はもどかしげに胸を反らした。 佐久間の手の中で淫らに濡れそぼつ。 深々と迎え入れた熱いペニスをきつく締めつけ、つい目を閉じてしまう。 「優生」 すると愛撫が無情にも中断された。 「見ろ」 竿の中ほどをきつく握りしめられて優生は思わずしゃくり上げる。 喉元を弱々しげにひくつかせながら、唇をたっぷり潤わせて、従順に薄目がちに佐久間を見つめる。 愛撫が再開された。 前よりも熱心に執拗にしごかれて優生は仰け反り、涙まで溢れさせて、それでも佐久間の言葉に忠実に彼を真摯に見つめ続けて。 佐久間の手の中で愛欲の飛沫を解き放った。 「はぁ……ッ！　ッぁ、はぁッ、ッ……ンッ」 唐突に上体を倒した佐久間に唇を塞がれる。 達したばかりの体に荒々しい律動が刻み込まれる。 「ッ…………」 佐久間も優生を見つめながらその奥底で吐精に至った。 射精の勢いで痙攣するペニスを肉襞でしごかせて、全て、出しきろうとする。 湿り気の増した最奥に自身の証を傲然と刻みつける。 「あ……っあ……っあ……、あ……」 温く滲み渡る佐久間の温度に捩れていた優生の顔がしどけなく解れていく。 「イイ顔だな」 「……ん……佐久間さん……」 「俺がお前のものでいる実感が湧いてくる」 急いた呼吸を反芻していた優生はふわりと微笑み、シーツに沈んでいた手をそっと虚空に泳がせて。 佐久間の右胸から背中にかけて彫られた、花を散らして猛り躍る漆黒の昇竜をゆっくりとなぞった。 「それにしても」 「……？」 「よく俺を見つけたな、優生」 昼よりも人出のある夜の街で自分を見つけた優生。 大した探索能力だ。 優生は佐久間の刺青を恋い慕う五指で緩やかに撫でながら静かに笑った。 「貴方の龍が私を招いてくれたのかもしれません」 「……」 「龍と鶴。添い遂げさせてくださいね、佐久間さん……？」 美しい翼に抱かれるように、佐久間は、その白い腕(かいな)に我が身を捧げてやるのだった。 「ところで佐久間」 「はい」 「例の件ですが」 日本庭園の中心で鯉の餌を両手いっぱいに持っていた佐久間、今回はどの件だろうかと内心頭を捻っていたら。 色鮮やかな鯉達を穏やかな眼差しで見下ろしていた但馬はのんびり続けた。 「お前の懐だと自由に飛び回るようですね」 「……は？」 「飴玉をもらった鶴の恩返し、鶴女房、大事になさいな」 『やるよ、これ』 「ぶはぁっっ」 どうやら秘められた関係、では、最初からなかったようだ……。 end……？ ［オマケ小ネタ／鶴の恩返しパロ］ 「正体を知られたからには、もう、貴方のそばにはいられません」 「優生」 「ッ……離して、ください」 「ここにいろ」 「……だって……私、鶴ですよ……？」 罠にかかって囚われていた美しい鳥。 痛々しく鮮血に滲んでいた白い羽。 「鶴でも鳶でも雀でも構わねぇよ」 儚げで朧な優生。 離したくない。 もう二度と誰にも(どんな罠にも)傷つけられぬよう、この腕を盾として。 害意を振るう者がいれば、この心を修羅に委ねて。 誰であろうと魂ごと断ち尽くしてやる。 「羽を毟って機織りするのも、もうやめろ」 「……佐久間さん」 「お前のそばにいさせてくれ、優生」 「ッ……それは……本当は……私も同じです、佐久間さん」 こうして鶴の優生は恋い慕う８９３な佐久間の鶴女房になったのでした。 めでたし×２