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君を喰らわば永遠まで-2

「間違いないだろう。異常に育った体躯に赤毛。ブラッディ・デビルだな」 「気に入った獲物は骨まで食うっていう、あの大食過食の赤狼のことか?」 「奴に襲われて掠り傷程度で済んだなんて良かったじゃないか。従者や犬も無事だったんだろう?」 「ただ……な、どうにもショックが大きかったみたいで」 「そもそも彼は狩りに向いていないようだったからなぁ」 「お父さん、お願いがあります」 青年は生まれ育った町を離れて別の町へ移り住んだ。 父親の知り合いの元、毎日無心となって働き、月の終わりには母親と兄妹らに手紙を書いた。 悪夢に囚われの身であることに変わりはなかったが。 誰にも言えない秘密が息づくあの森を離れて違う空気を吸っていたら少しばかり気持ちは安らいだ。 そうして心身に負った傷を抱えながらも新しい生活にようやく慣れ始めた頃に。 「本日おすすめのコースと葡萄酒を」 青年が働く料理店に一人の客人が訪れた。 長い赤髪を組紐で一つに結んだ、身だしなみに隙のない、片眼鏡の見目麗しい紳士だった。 「あの人、ステキね」 「何のお仕事してるのかしら」 「たくさんのお料理、一人であっという間に平らげてしまって、つい見惚れてしまったわ」 下働きの女性らが厨房ではしゃいでいるのに対し、給仕の青年だけは胸騒ぎがしてならなかった。 まるで見覚えなどないのに。 どうしてだろう、どこかで会ったような。 度々店を訪れるようになった赤髪の紳士。 記憶の底に沈めていた悪夢がふとした瞬間浮上するようになり、憂鬱と不安を持て余す青年。 そうして残酷にもたらされた邂逅。 「どの料理も素晴らしいが、この店一番のメインディッシュを頂きたい」 店を閉める間際にやってきた紳士、弾んだチップに店主はオーダーを受け入れ、いつも通りのフルコース、以前に隠し味全てを言い当てられたコック自らが運んで、また新しく追加したスパイスを匂いのみでさらりと言い当てられ、肩を竦めて厨房へ退散して。 「後は頼んだよ」 店の二階を間借りしている青年だけを残して店主と従業員達は帰って行った。 町の片隅に構えられた料理店。 締められたカーテンの向こう、夜、石畳を行く通行人達はまだたくさんいる。 ここは森じゃない。 狼なんかいない。 それなのにどうしてこんなにも息苦しく恐ろしく感じる。

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