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【わんこ】召しませ不良くん/美形×不良
高校一年生の深浦周 はともだちが少ない。
愛想がなくて、目つきが悪くて、協調性ゼロの、茶髪にピアスにタバコぷかぷかな不良クンだ。
あー学校つまんねぇ。
あー早く家帰って寝てぇ。
授業中から机にうつ伏せになって堂々とヤル気ゼロオーラを出していた周。
そんな不良クンに話しかけるクラスメートなんて……。
「深浦君」
周はめんどくさそうに顔を上げて机の横に立つクラス委員長を睨んだ。
「進路希望のプリント出していないの、君だけだ、今提出してくれるか」
眼鏡をかけて黒髪で知的で背が高くて、学校で女子人気No.1を誇るクラス委員長、嗣巳 に催促されて。
周はそっぽを向いた。
「まだ進路なんて決めらんねーよ」
「じゃあ空白でいいから。名前だけ書いて出してもらえないか」
「プリントどっか行った」
「それなら。先生に頼んでもらってくる。名前だけ書いてすぐに提出してほしい」
「ハイハイ」
周に言い聞かせ、嗣巳は華麗に回れ右をして職員室へ向かった。
休み時間、クラス委員長が戻ってくる前に周は大股で教室を出、学校を勝手に早退した。
嗣巳のヤロー、うざ。
授業さぼろーとしたら「どこ行くんだ、深浦」っていちいち声かけてきやがるし。
ネクタイしてなかったら「予備のを貸してやる」ってわざわざ俺にネクタイ締めようとしやがるし。
予備のネクタイってなんだよ、んなもん用意してくんなよ、うざ委員長。
雨の降り頻る午前中だった。
コンビニにだけ寄り道してお昼ごはんを買い、嗣巳への不平不満を脳内でリピートしながらビニ傘を差し、自宅マンションを目指していたら。
「クーン」
ふと周の耳に届いた鳴き声。
何気なく目を向けてみれば。
道端に置かれた段ボール。
表面には「ひろってください」とこどもが書いたような拙い文字。
段ボールの中には。
雨にすっかり濡れてプルプル震える、それはそれは小さな子犬が。
「クーンっ」
子犬と目が合った周はごくりと息を呑んだ……。
「よしよし! よーしよしよし!」
動物大好きな誰々さん並みにかわゆい子犬と夢中になって戯れる周、十六歳。
父子家庭で昼は誰もいない自宅、バスタオルにくるんだ子犬を笑顔で撫でまくった。
「お前、こっっんなかわいーのに捨てられたのか?」
「クーンクーン」
「ひでぇ飼い主だな! ほら、牛乳飲め飲めっ」
お皿に注いだ牛乳をぺろぺろ飲む子犬に周の笑顔は止まらない。
「でもお前誰かに似てんなー? ん、でも犬が誰かに似てるなんて変な話だな」
タバコをぷーかぷーかしながら片手で子犬をわしわし撫でる。
「どうすっかな、オヤジ怒っかな、でもココってペット可だし、どっかでバイトすりゃー餌代とか病院代とか稼げっか、なぁ、タロー?」
具体的な案を練るだけに留まらず、子犬に名前までつけた周。
「あっ、タバコってやっぱ犬にも悪ぃのかな、消すか!」
オヤジにも禁煙してもらわねーとな。
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