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召しませ不良くん-4

「深浦君」 愛想がなくて、目つきが悪くて、協調性ゼロの、茶髪にピアスにタバコぷかぷかな不良クンこと周はギクリした。 「進路希望調査のプリント、今、名前を書いてくれるか」 朝のHRからずっと机に突っ伏していた顔をそろーり上げてみれば。 眼鏡をかけて黒髪で知的で背が高くて、学校で女子人気No.1を誇るクラス委員長、嗣巳が自分を見下ろしていた。 『タロー、ご主人様、好き、好き』 に、似過ぎだろ。 こいつに犬耳つけて眼鏡外せばタローじゃねぇか、まんまじゃねぇか。 ンだよ、チクショー、俺のことヤりやがって、このタコ偽善者が。 「どうしてそんなに睨まれなきゃならない?」 ギリギリ歯を食い縛って涙目にまでなって自分を睨んでくる周に嗣巳は首を傾げ、激昂しかけていた周は我に返った。 そうだよな、こいつがタローなわけねぇ。 だって犬から人間になったんだぞ、あいつ。 いぬがみ、と、人、どっちの血も、なんて抜かしてたっけ、意味わからん。 どこ行ったのかも知んねぇけど。 委員長のはずねぇよな。 「おらよ」 きちゃない字で名前だけ書いたプリントを周が突き出せば。 プリントを受け取る前にいつもと違わずだらしなく緩められたネクタイに目がいった嗣巳。 「ついでにネクタイの緩みを正しておこう」 不意に伸ばされた両手。 周の脳裏に昨日の昼下がりが蘇る。 『タロー、ご主人様に精子だすーーー!!』 「うわーッやめろッ俺に触んじゃねぇ!!」 ど真っ赤になって思わず大声を上げて力任せに嗣巳の両手を振り払った。 ぱさりと落ちたプリント。 ざわ……っとするクラスメート達。 はーはー息を荒げる周の前で、教室で、一人だけ平静を保つ嗣巳は床に落ちたプリントを拾い上げた。 「ありがとう、提出してくる」 さすがに罰が悪そうにしている周に完璧微笑を向けたのだった。 やっぱうざ委員長苦手だ。 いつでもどこでも余裕綽々っつーか。 まだタローの方が可愛げあるよな……ッ、いやいや! 俺ヤられただろ!? あいつとんでもねーどすけべ犬だぞ!! 「ふわぁ……タローも委員長も、どーでもいーわ……寝よ」 しかめっ面の周はぼろくさい運動用マットの上で寝返りを打った。 そこは体育館裏にある旧倉庫。 つい最近改装された体育館には倉庫スペースが備わっていて現在はそちらを使用中、こちらは古い体育用具の保管場所となっていた。 扉には南京錠がかかっている、が、先日窓が開いていることに気付いた周、それからちょくちょく寝にきていた。 お世辞にも綺麗と言えないマット上でしかめっ面はあっという間にアホ丸出しな寝顔へと変わっていく。 ……カラカラカラ ロックをさぼってそのままにしていた窓が開かれたことにも気づかず、周は、ぐーすか寝続ける……。

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