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虎獣人の威を借る半狐-3
「これをつけた男と一緒になるつもりか、紗那」
紗那は涙ぐんでいた双眸を何度も瞬きさせた。
荒々しい行為が始まってからというのも、それまでずっと無言でいた幻楼丸がやっと口を開いたことに、ほんの少しだけ恐怖が緩んだ。
「ふぇ……お頭ぁ……?」
強さ漲る強靭な爪持つ手が紗那の片耳を、耳飾りのついた狐耳に触れた。
「こんなもの、食い千切ってやることができたら、どんなにいいものか」
まだ幻楼丸の気持ちがわからない紗那は再び恐怖に心臓を鷲掴みにされた。
「ッ……ごめんなさい、お頭ぁ……オレぇ……勝手なことして、助けてもらったのに、育ててもらったのに、いつまで経ってもバカで……半端者で……ごめんなさぃぃ……」
幻楼丸の真下でぽろぽろ涙する紗那。
服を引き裂かれて瑞々しさに富んだ褐色肌が覗いている。
ツンと膨れた乳首も片方だけ。
熟し始めた若々しい体。
育っていくにつれて毒薬のように幻楼丸の心を蝕みつつあった悩ましげな半妖黒狐。
『母上がしんで……おれぇ……ひとりぼっちなの……』
最初に出会ったときはそれはそれは小さく、頼りなく、すぐに壊れてしまいそうな。
だから大事に育てた。
『お頭ぁ、雨降ってきましたぁ、きもちいいねっ』
雨で無邪気に水遊びする小さな紗那を小脇に抱えて宿に持ち帰り、風邪を引かないよう念入りに拭いてやった。
それが。
いつの頃からか。
『雨だぁ、もっと降れ降れ、コンコン』
いつまで経っても雨で水遊びしようとする紗那に呆れ、小脇に抱えようとして、ふと止まった幻楼丸の腕。
『きもちいい』
しなやかに伸び育った肢体に張りついた服。
体の線が露となり、褐色肌の瑞々しさが増して、しっとり濡れて。
小さかったはずの紗那はいつの間にこどもじゃなくなっていた。
花開くように美しい半妖へと変化 していた。
「……オ、オレのこと食い千切るって……お頭……オレのこと、そんなに嫌いなの……?」
紗那の問いかけに幻楼丸は目を見開かせた。
真逆のことを言う紗那に呆気にとられた。
「お頭が、もう、でっかくなったオレのこと邪魔くさくなって、一緒にいたくないんだと思って、オレ……だから、ここに残ろうって……それじゃ……だめ……? オレのこと食い千切らないと気が済まない……?」
「紗那」
「……それなら、それでも……いいよ? お頭のためなら、痛いの、オレ、ガマン……する」
健気な紗那にジリジリと疼く幻楼丸の腹。
「……自分のことよりお頭が一番だもん……お頭のことが……オレ……オレは……」
「お前は俺のものだ、紗那」
幻楼丸は耳飾りのついた片耳から頬へ、いとも簡単に覆い尽くすことのできる紗那の顔を両手で挟み込んだ。
「他の男に目移りするな、体を許すな、痕をつけさせるな」
「う……うん、うん、うん」
「俺のことだけ見ていろ」
「……うん」
「お前を愛していいのはこの俺だけだ」
「ッ、ッ、ッ……うん、お頭ぁ……オレ……お頭にだけ……愛される……」
紗那はぎゅうっと幻楼丸の虎頭を抱きしめた。
これまで狂おしい衝動に突き動かされては自らを宥めていた幻楼丸。
「あッッ、あッッ、あぁん……ッッ、ふぁぁぁ……ッッ!!」
床に立つ幻楼丸に抱き上げられ、空中で激しく突き揺さぶられ、縞模様が走る逞しい両腕の中で紗那は仰け反った。
これまでの鬱憤を晴らすように紗那の蕾孔に夢中になる獣人男根。
小刻みに深く奥まで穿つ。
先走りの汁を止め処なく滴らせて肉粘膜の中心を突き貫く。
「ふあんッッ……お頭ぁ……ッ……ッ」
先程までは幻楼丸の真意がわからずに怯え、ただただ翻弄されていた紗那だが、気持ちが通じ合った今は。
「ッ……変……変だよぉ……ッオレのからだぁ……バラバラになりそぉ……」
体は発達しながらも心はどこかこどもじみていて純粋だった紗那は性について無知だった。
まぁ、それは、何気に下ネタに厳しい幻楼丸が徹底して管理していたせいでもあるのだが。
結局はその本人が戒めをブチ破って自ら実践に至ったわけで、本末転倒、というか……。
幻楼丸は抱き上げて突き揺らしていた紗那を寝台にゆっくり戻した。
互いの狭間でピクピクと悶えている、精通すら知らない初心な性器を、おもむろに握りしめた。
「ひゃんっっ!?」
全身に電流が走るような刺激に紗那はびっくりした。
先端にかかっていた皮をずらす勢いでしごかれると、エビ反りにまでなってガクガク痙攣した。
「やんッ、いやぁッ、お頭ぁッ、こわいッ、こわぃぃッ」
「怖くない、大丈夫だ、俺に身を任せろ、紗那」
「きゅぅぅぅぅぅぅぅぅ……ッン……あッ、あッ、あッ、あッ、あッ……!!」
紗那は十六になってやっと精通を知った。
愛される悦びを知った。
「紗那。不安にさせて悪かった」
愛し合う尊さを知った半妖黒狐。
手触りのいい虎頭に頬擦りし、きゅるきゅる鳴いて、何度もコクコク頷いた。
「お頭ぁ……ずっといっしょ、いてね……」
甘える紗那をクールにあやしてやりつつも、後ろでは長い尻尾が上機嫌で揺れている幻楼丸なのであった。
end
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