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忍び寄るえろ恐怖!廃墟に潜むスケベ触手!狙われたノンケDT男子学生!/触手×学生
真夏のサークル飲み会、誰か一人、必ず怖い話を始める人間がいるというものだ。
「振り返ったら目の前に髪の長い女が!!」
「きゃー!」
「やだーやめてよ、森村クン!」
「あ、こいつ聞いてねー! おい、公平!」
怖がりの公平 は両耳にしっかり宛がっていた手を恐る恐る離す。
「……怖い話もう終わったか?」
「公平ウケる!」
「そんなんだから童貞なんだ」
「え! 公平クン、童貞なの!?」
なんでこの場でそれを公表するかな、森村。
まぁ、みんなべろべろに酔ってるから明日には忘れてると思うけど。
高校が一緒だった森村に誘われてこのサークルに入った、どっこにでもいそうな大学生の公平は大盛り上がりのテーブル端っこで枝豆をもそもそつまむ。
「公平君はきっとピュアなんだね」
公平は危うく枝豆を喉に詰まらせそうになった。
「うぇっげほげほ!」
「大丈夫? ほら、お水」
こいつ誰だろう。
大所帯のサークルだから名前知らない奴はけっこういるけど、この顔、全く見覚えがない。
こういう細長い吊り目、狐目っていうのか?
「僕、鈴木っていうんだ、たまにしか顔を出さないから知らないよね」
「うん」
「主様 、気に入りそうだなぁ」
「え?」
「あ、ううん、なんでもないよ」
そんな鈴木、公平にとってとんでもない提案を大盛り上がりの酔っ払い学生たちに持ちかけてきた。
「ちょっとここから遠いけど、出るって言われてる廃墟、みんなで行ってみない?」
「なにそれ、行こう!!」
「えー怖そーむりぃ」
「そうだね、女の子には危険かもしれないからカラオケで待機してもらって、行きたい男子だけ行こうか」
「おーそうしよ!」
女子には危険って、じゃあ男にも危険だろ、平等に危険だろ、俺、絶対行かない。
「お前も来いやぁぁ! こうへーーーい!!」
「声でかいって、森村」
「僕、飲んでないから運転するね」
「ところでさー、キミ、誰だっけ?」
「僕? 僕は、なかむら……じゃない、鈴木だよ」
「自分の名前まちがえんなよ! 実はキミ酔ってんじゃないの!? ぎゃはは!」
「あはは、そうだね、あはははは」
その廃墟は仁貝峠の中腹に佇んでいた。
見るからにやばい雰囲気、だ。
鬱蒼と広がる林のど真ん中、朽ちかけの柵に囲まれ、ぼろぼろの煉瓦壁には縦横無尽に蔦が這い回り、窓ガラスはヒビだらけ、明かりは当然一つもない。
唯一の照明である満月の光を浴びた鈍色の洋館廃墟は馬鹿にならない迫力に漲っていた。
酔っ払い学生たち、びびるどころかテンション加速、早く入ろうと息巻いている。
一人、もちろん、公平を除いて。
「ご、ごめん、俺むりだわ、むりむりむりむりむり」
暗くても顔面蒼白だとわかる公平を笑顔で引っ張っていく森村、それに続く男子学生たち。
最後尾を行く狐目鈴木。
(公平にとって)恐怖の幕は今、開かれた…………。
「こ、公平、実は好きなんだ、お前のこと」
「は? おい、森村、酔いすぎだぞ、お前」
「ちが……ッ、よ、酔ってるけど、ほんと、まじな気持ちだから……!」
真夏とは思えないくらい底冷えする暗い廃墟の中を歩き回っていた男子学生たち。
そのうちあっちに分かれ、こっちに分かれ、いつの間に公平は森村と二人きり、親しい友達を頼りにギシギシ軋む通路をおっかなびっくり進んでいた。
そこへ森村からまさかの告白、だ。
「ずっと、高校ん時から好きだ、公平、公平……っ」
力ずくで抱きしめられて無理矢理キスされかけて。
公平もまた全力で森村を突っ返すと大慌てでその場から逃げ出した。
び、びっくりした、ないないないない、告白とか、キスとか、むりむりむりむり。
だって森村、お前、俺の友達だろ。
俺、ほもじゃないし……。
ぎゅう!!
「わわわわっ!?」
いきなり足首を何かに捕まれて前に思い切りつんのめった公平は。
そのまま床に倒れ込んで前頭部強打、キューっと、そのまま失神した。
痛い、頭、痛い。
「うううう……」
痛みの余り公平は白濁する意識の中で思わず呻いた。
すると。
ぴとりと額に何かが宛がわれた。
ひんやり、ひんやり。
なんだろこれ、冷たくてきもちいい。
氷じゃないし、なんか、ぬるぬるしてっけど。
森村がなんか冷たいモンくっつけてくれてるのかな。
俺、あんな風に逃げ出したのに、いい奴だな。
「森村……ごめんな、さっきは」
「……」
「でも、やっぱ俺にとってお前って……いい友達なんだ」
「……」
「……森村、聞いてんのか?」
そこでやっと公平は閉じていた目を開けた。
そこは洋館廃墟の中心部に当たる広間だった。
蜘蛛の巣がぶらり、埃がふわふわ、しかし他の場所と比べると目立った傷みはなく、壁一面に広がる大きな一枚ガラスにもヒビや汚れが見受けられない。
厳かに差し込む月明かり。
天井には瀟洒なシャンデリア、床は白黒チェックの柄模様、公平が横たわる長椅子はさもアンティーク調で年代物そうだ。
その長椅子に群れる……触手。
仁貝峠の奥に佇む、この洋館廃墟を住処にしている人外の主様、だ。
性器を彷彿とさせるような、にゃんとも卑猥な肉色。
夥しい数に分裂したぶっとい触手ちゃんsがにょろにょろ、にゅるにゅる、白黒床上でそれぞれ歪に蠢いていた。
その一つに額をナデナデされていた公平、正に「あわわわわわ」状態。
「なっなんだこれっあっこれ夢っ? 夢っ!? 夢っ!!」
「夢じゃないよ、公平くーん」
触手ちゃんsに長椅子を取り囲まれて逃げるに逃げ出せない公平、勢いよく声のした方へ視線を向ければ。
のほほん笑う鈴木が広間の隅で遠巻きに手を振っていた。
「やっぱり君が主様に気に入られたねー」
主様はねーガチホモなんだよーだから女子には残ってもらったんだー。
僕はねー主様が好みそうな男子をここへ連れてくる役目なんだー。
夜な夜なねー隙がありそうなコたちを適当に見繕ってねー。
主様は気に入ったコの前でだけねー姿を現すんだよねー。
「ばっばかやろー! あのね~僕ね~大きくなったらね~、みたいなノリで話すな! てかよく聞こえねーよ! てか助けろよ!!」
「主様はガチホモなんだよー!!」
「それは聞こえたわ!!」
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