33 / 195

忍び寄るえろ恐怖!廃墟に潜むスケベ触手!狙われたノンケDT男子学生!-3

夕方のキャンパス、学食でテキスト片手に早めの晩飯をのろのろ食べていた男子学生の公平。 近くで男女のグループがきゃあきゃあしているのをちらっと見、またテキストに視線を戻して、うどんをズルズル。 かたん 同じテーブル、しかも向かい側に誰かが座り、顔見知りの学生かと思って視線を向けてみれば。 「こんばんは、公平君」 あの世にも奇妙な悪夢の巣窟、おぞましい洋館廃墟へいざなった狐目の鈴木があの夜ぶりに目の前に姿を見せたものだから。 「ぶはーーーッ!」 公平はうどんを吐き出してしまった。 帰宅ラッシュで混雑する本通り。 手慣れたハンドル捌きで脇道に抜け、鈴木が運転する軽自動車は裏通りへ。 街中だったのが、どんどん郊外へ、家々は次第に減って、擦れ違う対向車の数も目に見えて少なくなって。 外灯の乏しい峠道に入り、狸でも横切りそうな山深い急勾配、連続するカーブを衰えない速度で走り抜けていく。 くねくね道に気分が悪くなり、公平が無言で助手席側の窓を開けたら鈴木も運転手側の窓を開けた。 「だけど助かったよ、公平君」 ラジオも音楽もかけていない車内、無表情のくせに妙に明るい鈴木の声が浸透する。 「……しょーがないだろ、あんなこと言われたら」 『またあの廃墟に来い!? 無理に決まってんだろーが!』 触手に犯され、あろうことか搾取までされた公平はイヤイヤイヤだと首を左右に振る。 学食にて。 鈴木が現れたことであの夜の記憶が鮮明に蘇り、うどんが食べれなくなってしまった公平の代わりに鈴木はうどんをズルズル啜ってスープまで飲み干した。 『ふー、ごちそうさま、だけど公平君を連れて行かないと、僕、主様に殺されちゃうんだ』 『えっ!?』 『だから、お願い、来てくれないかな?』 「あんなの、ほぼ脅しだ」 「うん、でも、公平君はやっぱり優しい人だね」 「自分のせいで誰かが殺されるとか誰だって嫌だろ」 「そう? へっちゃらな人もいると思うよ」 遠くにぽっかり浮かぶ満月。 峠道の中腹にて舗装されていない山道にがたがた逸れる軽自動車。 少し後ろを走っていた車がブーー……ンと峠を上っていくエンジン音が尾を引いて響いて、消えた。 俺、またあの触手にやられるのか? でも、あの廃墟に行かないと鈴木が殺されるって言うし。 「あそこの学食、おいしいんだね、また行ってみようっと」 あの夜の後日、サークルのメンバーに聞いてみたけれど誰もこいつのことを知らなかった。 「鈴木? そんな奴この間の飲み会に来てたか?」なんて言う奴もいた。 ……あれ、なんか、怖くなってきたぞ? ……そもそも、こいつこそ、誰なんだ? 「なぁ、鈴木、お前って――」 ブルルルル…… 「着いたよ、公平君」 仁貝峠の中腹、誰かさんの死骸でも埋められていそうな暗い深い林に抱かれるようにして佇む、見るからにおどろおどろしい洋館廃墟。 朽ちかけの柵、開かれていた門から中庭へと進入し、停車する車。 横を向けば洋館廃墟の出入り口が確認できる。 観音開きの扉はまるで客人を拒絶するかのように硬く閉ざされている、ように見える。 傷んだ煉瓦壁に纏わりつく無数の蔦。 ヒビだらけの格子窓は暗闇に塗りつぶされて中の様子はまるでわからない。 こ、こ、怖ぇぇぇぇ。 「怖いみたいだね、公平君」 とりあえずエンジンを切った鈴木は助手席ですっかり怖気づいて血の気まで失っている公平に、すまなさそうに、にこっ。 「主様に処女、奪われちゃったんだもんね。それなのに無理を言って連れてきてごめんね」 「……ほんとに申し訳なく思ってるのかよ、鈴木」 「思ってるよ、ふふふふふっ」 あ、こいつ、絶対なーんとも思ってない。 「か、帰りたい、俺」 「えー」 「こ、怖ぇもん、もう搾取されたくない……ぐす」 恐怖の余り、公平、泣き出してしまった。 常に持ち歩いているハンカチを取り出して鈴木は公平の涙を拭いてやる。 「もうケツに触手いれられたくない……っ」 「大丈夫だよ、確実にいれられると思うけど、きっと前より気持ちいいよ?」 「やだーっ……ぐすんっ」 イイ年した大学生のくせに人一倍怖がりな公平がぐすぐす泣く様に何かしら性的なものをくすぐられた鈴木は。 素早く自分のシートベルトを外すと、ぐっと、助手席に身を寄せた。 ぺろっ 「わっ!?」 「あの時も舐めてあげたよね、公平君の涙」 「す、鈴木?」 「おいしいね」 「えっ?」 「もっとちょうだい?」 片手を窓に突かせて、硬直する公平に覆い被さるように接近してきた鈴木。 驚きで涙が止まってしまった公平の頬をれろれろ舐め続ける。 耳たぶまでれろれろぺろぺろ。 ついでに、かぷっと、甘噛み。 「ひゃっっ!」 ええええ、なんだよこれ、鈴木、ほもなのか? がちほもなのか? 「ちょ、やめろよ、くすぐったいって……」 「主様に献上する前に味見したいなぁ、って、そう思って」 献上、とか、味見、とか、怖ぇよ、怖過ぎるよ。 「無理です」 「大丈夫、主様よりよくしてあげるよ、公平君?」 「むーりーでーす! やめろ!」 「暴れられたらもっと興奮するタイプだよ、僕」 だからって「はい、そうですか」って大人しくできるか、バカ鈴木。 「ね、力抜いて、僕に身を委ねて?」 「こっら……! ふざけんなッ! もう帰る! ウチ帰る!」 「そっか、公平君、カーセは無理な人なんだね、じゃあ公平君ちでしっぽり、」 「そういう意味じゃねぇっ、ッ、あ、ぎゃあああああ!!」 「え、あ、主様?」 なんということだろう。 押し迫ってくる鈴木に気を取られて公平は全く気付けなかった、まさか、廃墟の奥に潜んでいるはずの触手が外に出てくるなんて。 扉や格子窓を厳かに突き破って、ぬるぬる、開かれていた窓から車内に侵入してくるなんて。

ともだちにシェアしよう!