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満月じゃなくても変身できます-2
週末、小遣いは自分で稼げと両親に言われている千隼は兄の知り合いが経営している飲食店で夜十時までウェイターのバイトをしていた。
勤務時間を終え、着替える前にゴミの片づけ、裏口に置いてあるポリバケツに可燃ゴミを押し込んでいたら。
引き寄せられるようにして表に誘われた視線。
隣のビルと迫り合う壁と壁の間で直立した千隼は繁華街を行き交う通行人の向こうに彼を見つけて驚いた。
「センセイ」
そのままウェイター姿で表に出、小走りになって後を追いかけ、何の迷いもなく呼べば。
両脇に女の連れがいた彼は振り返った。
やっぱりそうだ、間違ってねぇ。
髪型も眼鏡も違う、猫背じゃねぇし、どえらく雰囲気違ぇけど。
「千隼君、か」
聞き慣れない呼号と見慣れない微笑みに、千隼は、不覚にもどきっとした……。
月曜日の昼休み。
「なぁ、センセイさ」
「うん?」
「ユカ兄って知ってっか」
ばきッッ
実験テーブル前に腰かけていた紫が手にしていた試験管を握り潰し、床に座り込んでいた千隼はぎょっとした。
「あわわ、試験管割ってごめんなさいっ」
『俺はね、紫の中にずっと棲んでるんだ。紫が生まれたときからね』
週末の悪夢じみた出来事を思い出して千隼は……彼が本当のことを言っていたのだと痛感した。
「血、出てんぞ」
「だ、大丈夫……大丈夫です、兵間君」
紫が何一つ覚えていないことも。
両脇にべったりくっついていた女二人を素っ気なく突き放し、紫……ではなく彼のもう一つの人格であるユカは。
ウェイターの格好をしたままの千隼をラブホへ引き摺り込み、ほぼほぼ強引に処女を奪っていった。
「とりあえず洗えよ」
「あう……いつユカと会ったんです、兵間君……というか、このコトは」
「誰にも言わねぇよ」
俺だって知られたくねぇし。
自分を組み敷いた男相手に全力で抗えなかったとか……人生の汚点ぶっちぎりだろ。
「……他には」
少量の血を水で洗い落としたばかりの掌にハンカチを撒いてやっていた千隼は「ん?」と聞き返した。
「……他に、誰か、ユカ以外に」
「は? アイツ以外にも何か変なの宿してんのか?」
「あわわ、わ、忘れてください、もう僕に近づかないで……!」
ほんとだな。
まさかケツ掘られるなんて、な、ろくなことねぇよ。
「……兵間君を傷つけたくないです」
それな。
いちいち俺の心臓つっつくのやめてくれよな、センセイ。
「千隼君、すっかりお尻で感じる体になったね」
三回目のベッドイン。
紫は眠りにつき、その意識を乗っ取ったユカは週末のラブホで千隼を独り占めする。
ローションと精液で奥までトロトロになったアソコ。
ずぶずぶ、ずぶずぶ、一度射精しても尚硬いままのペニスでじっくり押し開かれて、堪らなさそうに淫らに悶える尻孔。
「うる、せぇッ……お前がむりやりッ……」
きちんとセットしていたはずの髪を乱し、普段は白衣で誤魔化している均整のとれたしなやかな体に汗をかいて眼鏡を外したユカは微笑んだ。
「ッ……うるせぇ……」
「君って可愛いな。男っぽいのに骨まで甘くて美味しそう」
「ふざけッ……!」
フーーフーー息を荒げながら涙目で睨んできた千隼にユカは舌なめずりした。
「三人目の紫も君が欲しいって鳴いてるよ」
「ッ……は? どーいう、意味だ……?」
「俺達は三人で一つなんだ」
「ッ……も、一人……いるのかよ? センセイに……まだ別の……」
「まぁね」
君にだけ見せてあげるよ。
三人目の紫。
俺より危険だから扱いには注意してね……?
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