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【狼】狼と犬と狐/溺愛モフモフ

草花香る風が野原を吹き抜けていく。 空には笑顔満開さながらに輝くお日様。 あたたかな陽光が燦々と降り注いでいる。 そこで重なり合うモフモフ。 立派な爪と牙を持つ黒狼のピアス。 忌み子として森に捨てられた真っ白犬の(つき)。 お調子者狐の玉藻(たまも)。 種族は違うものの共に生活している三匹はこうしてよくいっしょに日向ぼっこ兼お昼寝をする。 「あたし、今、夢を見てましたぁ」 「どんな夢見た、玉藻っ?」 「コンコン。お稲荷さん、たらふく食う夢ですヨ、月?」 「……今のコンコンで起きちまった」 ピアスはかつて群れを率いるボスだったが副リーダーにその座を譲り渡し、独りで行動するようになった。 そんなピアスに昔からちょっかいを出し、くっついたり離れたりを繰り返していた玉藻は。 雪降る夜、森の中でちっちゃなちっちゃな捨て犬を拾って、たまたま満月が雲間に覗いていたものだから<月>なんて名づけたりして。 ピアスと玉藻の元で月はすくすくと育った。 「後少しで新鮮な生肉が食えそうだったのによ」 ピアスの美しい漆黒毛並みに溺れるようにして丸まっていた月と玉藻は顔を見合わせて笑った。 ちなみに月は玉藻よりかは大きくなった。 ピンと尖った立ち耳、フサフサした長い尾っぽ、爪と牙も逞しくなった。 赤い目がとっても特徴的で。 大きさは随分と劣るがピアスにまぁまぁ似た姿形。 黒と白、見事な対に混じるのは焦げたバターのような焦げ茶色。 「月は? なンか夢見ました?」 ふっくら膨らんだ尾っぽをぱたんぱたんさせて玉藻が流し目で尋ねれば月は嬉しそうに答えた。 「ピアスと玉藻の夢!」 「それはそれは」 「夢にまで狐が出てきやがるたぁツイてねぇな」 月は青く澄み渡った湖面を覗き込んでみた。 まだお日様が頭上高くにあってキラキラと輝く畔。 驚いた魚があたふたと遠ざかってできた波紋、それがすぅ……と消えて、凪いだ湖面に写り込んだのは自分自身。 真っ白な髪から真っ白な立ち耳がぴょこん。 青少年の顔立ち、身長は170後半。 ヒト化すると、鎖骨が見えるくらい襟ぐりの大きく開いたシャツ、ズボン、格好まで真っ白になる。 「クーン。まだまだピアスじゃない、ぜんっぜんピアスじゃないっ」 ピアスはもっとオトナだ。 もっと力強い。 もっとかっこいい。 「もっとお肉食べればピアスみたいになれるかな!」 「なれねーよ、バカ犬」 真っ白尾っぽをぶわぁっと膨らませて月が振り返れば。 「お前如きが烏滸がましい。ボスを侮辱してんのと同じだ」 かつてピアスが率いていた黒狼グループの一員、ディスが突っ立っていた。 今現在リーダーの座にいる若雄の弟狼だ、群れから退いたピアスをまだボスと呼んでいる、どうも兄のことを認めていないようだ。 今はヒトの姿をしていて、体型は月とそう変わらない、真っ白肌の月と違って褐色肌、髪も黒、目つきだってすこぶる悪いが。 「ディス!」 懐っこい月が駆け寄ろうとすれば年上のディスはすかさず後ろへ退き「犬が狼に近寄んじゃねぇ! 格下のくせに!」と年上らしからぬ幼稚なことを抜かした。 両腕を大きく広げたままの月はキョトンした。 「かくした? そういえばさっきも何て言ったの? おこがましい? ぶじょく?」 「フン。やっぱあの尻軽な狐に育てられただけある、低能、無知、なんでお前なんざにボスは、」 「ディィィィス!!」 「ぎぇぇ!!」 結局、月にぎゅうぎゅう抱きつかれたディス、慌てて獣化すると大慌てで逃げて行った。 「行っちゃった。もっと遊びたかったのに」 しょんぼりした月だがすぐに笑顔を取り戻してピアスと玉藻のいるおうちに帰ることにした。 大草原に建つ粗削りな木造小屋が三匹の棲家だ。 「あ、ン……今日のアナタったら……すごいですねェ、ピアス……?」 隅っこの寝室からギシギシと寝台の軋む音が鳴っている。 壁からこっそり覗いてみれば。 ゆったりカンフー服の上だけ纏い、下半身には何も身につけていないヒトの玉藻がシーツに縋りついている。 頻りに波打つしなやかな肢体。 股間から育ちきった雄芯が先走りの蜜でしっとり濡れている。 玉藻の背中にのしかかるのは黒狼の姿をしたままのピアスだった。 露となったカタチのよい尻に腰から下を密着させ、荒々しく律動している。 肉食獣の本能を剥き出しにしたかのように膨れ上がった狼ペニス。 玉藻の蕾孔に何度も何度も突き立てる。 奥まで熱く湿り渡る仮膣の温もりを貪るように。 大地を雄々しく駆け抜ける両前脚を玉藻に引っ掛け、乗り上がるようにして、大胆に高々と掲げられた双丘狭間に手加減なしに本能を叩きつける。 艶治なまでに切れ長な双眸に涙を浮かべ、うっすら朱に潤う唇で、玉藻は悦ぶ。 「ン、もっと……この体……アナタので貫いて……もっと奥まで引っ掻いて……?」 ピアスの眼光鋭き双眸が不敵に光った。 フサフサした尾でピシャリと空を打ち、シーツを蹂躙する後ろ脚に力を漲らせ、さらに激しく動き出した。 焦げ茶色の長めの髪を艶めかしいうなじにはりつけ、狐耳をぴくぴく震わせ、玉藻は鳴いた。 「あン……イイです……ピアス……ッ」 帰ってきたばかりの月はそーーっとおうちを後にした。 落ち葉がたくさん降り積もったお気に入りの場所で裸足でゴロゴロしていたら、緩やかに日が落ちて、辺りは西日に包まれた。 「あったかいけど、ちょっと寒い」 寒いので獣化し、夕方の日だまりでモフモフ、ぬくぬく。 ピアスと玉藻はよく交尾してる。 おれ、なんだかそばに行ったらいけないような気がして、ピアスと玉藻が交尾中、いつもここでゴロゴロしてる。 いつもより乱暴になるピアス。 いつもよりきれいになる玉藻。 最近、前はそうじゃなかったのに、そわそわ、そわそわ。 変なの。 いつもと違うピアスと玉藻、見て、おれもいつもと違う、なっちゃった。 赤い双眸をパチパチさせて枝葉の隙間から覗く夕焼け空を眺める月。 そんな月を迎えにやってきたのは。 「こんなところで夕寝したら風邪引くだろうが」 ヒト化したピアスだ。 冷たくなってきた風に黒髪の先を僅かに靡かせ、白刃じみた鋭さ宿る双眸で夕闇を射抜いて、モフモフゴロゴロしていた月の元へ。 「帰るぞ、月」 「うん!」 ピアスが迎えにきてくれて嬉しい月、がばりと起き上がれば白い毛に落ち葉がくっついてきた。 ブルブルしてもとれない落ち葉をピアスにとってもらうと、クンクン、スリスリ。 180超えの長身である彼に抱き上げられると、もうご満悦、尾っぽがブンブン。 おれより細い玉藻はおれのこと重たくて抱っこできない、だけどピアスは平気、ぜんっぜん平気。 ピアスの腕の中、きもちいい。 ゆりかごみたい。 「くぅぅ……」 「だから寝んじゃねぇ、月」 黒ずくめなピアスは褐色腕の中で寝かかっている月に微かに笑った。

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