「なにしてンです、月？」 「ゆりかご、乗りたい」 「今のアナタのサイズじゃあ、もう乗れないですヨ？」 部屋の隅っこに追いやられていたゆりかごを壊そうとしているのかと思った玉藻、しょんぼりしている月の頭をイイコイイコと撫でてあげた。 「ほんとにおっきくなりましたねェ、月」 その言葉に月はすぐに笑顔を取り戻した。 「もっとおっきくなるかなっ？」 「なるかもですヨ」 「ピアスくらいっ？」 「あんな狼なんざぁ、すぐに追い越しちゃいますヨ」 「やったーーーー！」 今はちゃんと上下ともカンフー服を纏い、長い髪を一つに結ぶヒト玉藻をヒト月はその場で抱き上げた。 「あらまぁ。月ったら」 玉藻、ほそーい、かるーい。 おれのこと、拾ってくれたときは、とっても大きな手って、思ったのに。 おれはあの頃のこと覚えてる。 目が赤いから「忌み子」だって、怖い声で言われたことも、すぐに目隠しされたことも。 『寒かったでしょうに。雪だるまさんになっちゃいます』 おれのことを拾い上げてくれた玉藻の声も。 「月はいつまで経っても甘えん坊ですねェ」 軽々と自分を抱き上げてスリスリしてくる月に艶治な目をうっとり伏せ、玉藻は、解放されるまで犬耳をヨシヨシしてやった。 またピアスと玉藻が交尾している。 昼下がりのお散歩から帰ってきてみれば奥の寝室から聞こえてきたギッシギッシに、月は、赤まなこをパチパチ瞬きさせた。 そわそわ、して、どきどき、して、壁越しにそっと覗いてみる。 「あたしの、なか……こぉんな拡げて……欲張りな狼ですねェ」 ヒト化したピアスと玉藻が寝台の上で下半身を絡ませ合っていた。 止まることなく揺れる二つの体。 粘ついた音が紡がれている。 いつもならそーーっと木造小屋を後にしていた月。 だけど今日はそわそわが限界に達して引き寄せられるように寝台の方へ。 自分らと同じくヒト化していた月がすぐそばまでやってくると、おもむろに互いに律動を止め、ピアスと玉藻は彼を見上げた。 「ピアス、玉藻、おれ……」 真っ白な頬を仄かに紅潮させている月を二匹はもっと近くへ呼んだ。 「来い、月」 「アナタのこと待っていたンですよ？」 ギシッ、ギシギシッ、ギシ、ギシッ 「あ、熱い……おれ、もぉ、むり……怖い……」 真っ白肌を全て曝した月の逆上せた声。 「ン……初めてにしては上出来ですヨ……？　もうちょっと頑張ってみましょ……？」 カンフー服を肌蹴させ、自ら片足を抱き寄せて大胆に開脚し、寝台に仰向けになった玉藻。 「焦るんじゃねぇ、ゆっくりでいいぞ」 ぎこちなく動く月のそばに寄り添って声をかけてやるピアス。 初めての交尾。 玉藻の蕾孔をぬぷ、ぬぷ、行き来する月のペニス。 奥まで熟し切った蜜壺に抱かれて、腹の底から火照って、眩暈にまで襲われる。 「だ、だめ……なんか……ぞくぞく、するッ」 まだ精通を迎えていなかった月はとにかく何もかもが初めてで、未経験の感覚に怖くなって、赤いまなこからぼろっと涙を溢れさせた。 「大きく育っても可愛いのは変わりないですねェ、月？」 玉藻はするりと月に両腕を絡ませ、抱き寄せると、涙をべろりと舐め上げた。 「そのまま、動いて、止めないで？本能に正直になっていいンですよ……？」 涙しながら「怖い」と言いながらも体奥でどんどん硬くなっていく月に言い聞かせてやる。 「たまもぉ……っ」 「このまま注いでみて……？」 迫りくる猛烈な感覚に堪えきれず月は玉藻の肌を連打した。 「あ……っあ……っなにこれ……っ、っ、っ、うーーーー……っ」 月は仰け反った。 目の前がパチパチと爆ぜるような、むず痒かった全身が総毛立つような、腹の底が滾るような。 「あ……あれ……？」 ずる……と、玉藻の蕾孔からペニスを引き摺り出してみれば、次の瞬間、とぷりと溢れ出た白濁。 「……なにこれ？」 「アナタの大事な欠片ですヨ……？」 「……欠片？」 「お前の素みてぇなモンだ、月」 精通を迎えたばかりで息が乱れている月にピアスはのしかかった。 玉藻との行為を中断して、下腹につきそうなくらい屹立していたペニスを月の双丘にぐっと押しつける。 「相手が雌だったら、その子宮に歓迎されたら。お前のこどもが宿る」 「ピアス……なにしてるの？」 「あらら……ほんっと欲深い狼ですねェ、ソチラについても教えるおつもりで……？」 肩から背中にかけてブルブルと震えている月の真下で呆れる玉藻をピアスは睨んだ。 「月の処女は俺がもらうに決まってんだろうが、お前だって童貞掻っ攫っただろ」 月がいつか誰かと愛し合う前に。 喉から手が出るほどその純潔が欲しかったピアスと玉藻。 「お前を一番最初に抱くのは俺達だ」 「ねぇ、月……可愛い子……アナタが誰かを愛する日まで、あたしとピアス、三匹いっしょに愛し合いましょうね……？」 過保護な狼と狐に溺愛された犬は「キューーン」と鳴いた。