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俺様はしょくしゅ★/触手×不良←実験助手
「おい、お前何やってんだ!」
その日、俺はいつものように校舎の一階隅っこにある実験準備室で授業をさぼってタバコを吸っていた。
ガラリとドアの開く音。
鈴木かと思って余裕こいてたら、やってきたのは生活指導兼体育教師、ここに入るところを廊下で見られていたよーだ。
「何年だ! 名前は!?」
上下ジャージに五分刈り頭でマッチョなあるある体育教師は棚と壁の間をずかずか進み、俺の手からタバコを取り上げた。
はぁ、めんどくせぇ、オカン呼び出されっかな、一発殴られて済めばそっちの方が楽なんだけどな。
別にマッチョ体育教師なんて怖くない俺、へー然としていたのだが。
「見ない顔だな、一年か? ちゃんと答えろ!」
「あー……一年の、あ、あーー!」
俺はぎょっとした。
体育教師はまだ火が燻っていたタバコを……おはじきやビー玉できらきら光る綺麗な金魚鉢に……じゅっと突っ込んだのだ。
「てめっ何しやがるー!」
逆上した俺は体育教師に掴みかかった。
結果、殴られた、だせぇ。
狭い空間で殴られたもんだからあちこち体をぶつけて床に倒れ込む、いてぇ、オカンのとはワケが違う、ガチでいてぇ。
あ、違う、俺のことはいーんだよ。
ぱんどら、ぱんどらは……。
「うわーーーーーー! なんじゃこりゃーーーーーー!」
体育教師が悲鳴を上げた。
痛みで蹲っていた俺は慌てて起き上がって、どびっくり。
さっきまで金魚鉢でちりめんじゃこを食べていたはずのぱんどらがいつの間に水から飛び出て触手化していた。
俺を守るように複数の触手が盾となって、体育教師との間に防壁をつくっていた。
「ぱ、ぱんどら」
「ひーーっなにこれぇっ! 怖ぃーー! ほっ報告だっ今すぐ職員室っちがっ警察にっ保健所に駆除してもらわな、」
ブスッ!
「あ」
俺はまたびっくりした。
いつの間にやってきたのか、実験助手の鈴木が体育教師の背後に忍び寄ったかと思えば、自分より大柄なマッチョ体を羽交い絞めにするなり、その首筋に……お注射したのだ。
「うーん」と唸ってがっくり項垂れた体育教師、鈴木はいつもと変わらないにこにこ顔、でも片方だけ不敵に光る眼鏡が怖ぇ。
「何だか騒がしいから来てみれば、いやはや、驚きました」
いや、この中で一番驚いてねーだろ、あんた。
「あ、このお注射は人体には悪影響を及ぼさないものですから、ただ前後の記憶をちょーっとばっかし失う程度の、ね? レベルですから。心配しないでね」
鈴木は失神体育教師を実験室から廊下へにこにこずるずる引き摺って行った。
「ままー★」
俺の頬にぱんどらがべちょべちょ甘えてくる。
「……悪ぃ、ぱんどら、また助けてもらったな」
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