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俺様はしょくしゅ★-2

「公平クンの話を総括すると、ぱんどらは自力で金魚鉢を飛び出したということになります、タバコの火消が影響したというより、君を守りたい気持ちがぱんどらに力を与えたんだと、僕はそう思います、素晴らしい進化ですね、ですが、むやみやたらにおうちを飛び出て触手化されると校内の誰かに知られる危険性が増してくるので、このアクシデントを機に、ぱんどらは自宅へ持ち帰ろうと思うのです」 ……そもそも学校で触手を飼うんじゃねー、変人が。 ぱんどらが学校からいなくなった。 実験準備室でタバコをぷかぷか、俺の視線はどうしてもそこへ向かう。 変に空白のできあがった足元の棚。 ずらりと並ぶきもちわりぃ標本の間、積もった埃、だけど金魚鉢が置かれていたそこだけがまぁるく綺麗だ。 『ままー★』 やべぇ。 さみしい。 ぱんどらに会いてぇ。 「最近、元気がないですね、公平クン?」 「うるせぇ、変人」 「ぱんどらに会えなくなって淋しいですか?」 「ッちげぇよ! 変人変態助手が!」 「ふふ。よかったらこれどうぞ」 「? なんだよこの紙切れ」 「僕の自宅住所です」 「……」 「ぱんどらに会いたくなったらいつでもどうぞ、歓迎するよ、ふふ」 晴れ、ぽかぽか、きもちのいー日曜日。 俺は紙切れ片手にその家の前で突っ立っていた。 ……いや、これ、家っていうより廃墟じゃね? ……蔦だらけで、窓はぜーんぶ格子窓ってやつ? ひび割れてるのもある。 ……門とか腐ってるみてぇ、庭なんか草ぼーぼー。 ……昔ここで殺人事件がありました、とか言われたら即納得、ここは有名な幽霊屋敷なんですよ~やだな~怖いな~やだな~、と言われても違和感ねぇ。 こんなにいい天気なのに鈴木んちだけが妙に暗い。 やっぱ帰ろっかな。 あいつ変人だし。 あと……キス魔だし、俺何回されたんだよ、チクショー。 家とか上がったらもっとやべーことされるんじゃ……。 ギィィ…… 「公平クンじゃないですか」 いかにも立てつけの悪そうなドアが開かれたかと思うと白衣じゃない鈴木が表へ出てきた、なんだこのタイミングの良さは。 「ふふ。実は二階の窓から君の姿が見えて」 「ふん」 「私服もイイですね、ふふ」 やっぱ帰るか。 「ぱんどらは地下にいますよ」 「え」 「僕はお隣さんに回覧板を渡しに行ってきます、ついでにケーキでも買ってきますね、どうぞごゆっくり」 鈴木は下駄を鳴らしてやたら距離のあるお隣へ向かう。 俺は……せっかく来たし、ケーキも好きだし。 覚悟を決めて鈴木んちにお邪魔した。 中も暗かった。 入ってすぐに地下室への階段、ぎしぎし、露骨に軋む、おばけ屋敷みてぇ、否応なしに心拍数が上がる、だせぇ。 階段を下り切ったところには両開きのドア。 開くと、学校よりも広い実験室、肌に触れる空気はひんやり冷たい。 ……マッドサイエンティストって実在したんだな。 「ぱんどら? どこいんだよ?」 天井際の小窓からうっすら日の光が差し込んで空中の埃が見えた。 黒白タイルに敷き詰められた床を進む。 実験テーブルは名前も知らねぇ実験器具だらけ、なんか解剖台の上でぴくぴく動いているものが……見んのやめとこ。 「あ」 見つけた金魚鉢。 俺は思わず駆け寄った。 「ぱんど……ら?」

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