冴え冴えしい尤利の双眸が、涙でいっぱいになっていた夢樹の目が、著しく震えた。 一体何の声なのかと不審がる暇もなしに「ひぃッ」とストーカーの悲鳴が聞こえ、怖々と顔を上げてみれば。 立ちこめたどす黒い煙。 その中心に立っていたのは。 「チッ。やっと解放されたぜ、此畜生(こんちくしょう)めが」 ありえないことに、狼頭の、２メートル強の大男。 正確に言うならば狗賓(ぐひん)という妖異。 天狗の一種であり、頭部は狼、胴体は人間という……人ならざるものだった。 要は大昔にオイタが過ぎる余り霊力高き巫女に封印されて延々と閉じ込められていたところを尤利の血によって解放された、というわけだ。 木端微塵と化した祠を背にし、黒煙が消え果て、夕闇に全貌を露にした狗賓の吾牙(あきば)。 高校生ストーカーは一目散に逃げ去り、蹲ったまま呆気にとられている最上父子の前にずん……ッと立ち塞がる。 「お、お父さん」 「土地神様が、こんな、こんなムキムキだったなんて」 確かに筋骨隆々、逞しい体つきをした吾牙は尤利の頬の血にまず目を止めた。 「ふーーーーん。お前ぇの血が巫女の血を穢してくれたわけか」 巫女の神聖なる血で書かれていたお札に一般男なる尤利の血飛沫が飛び、薄れつつあった封印効果を決定的に弱めたようだ。 「ん」 灰色毛の狼頭をした吾牙は次に尤利の顔立ちに着目した。 普段は長い髪とすっとぼけた眼鏡で隠されている、それはそれは眉目秀麗な中性的な美人顔に。 鉤爪鋭い手を顎にやって「ほお～～」と吾牙は意味深に数回頷いた。 「えらく別嬪じゃねぇか、お前ぇ、よっし決めた、俺の嫁にしてやる」 「え？」 「い、犬が、犬がしゃべってる」 尤利にしがみついて怯えている夢樹をギロリと睨んだ眼光鋭いギラギラ眼。 「俺ぁ犬っころじゃねぇぞ、引き裂くぞクソガキが、ケケケ」 い、犬なのに変な笑い方……と、夢樹は怯えながらもそう思った。 平屋造りの古民家の奥の部屋。 あたふたと引かれてぐちゃぐちゃな布団の上で吾牙はキョトンしていた。 「お前ぇ男かよ？」 服を切り裂かれて素っ裸にされ、なおかつ、でっかい両手で左右限界まで両足を抉じ開けられた尤利は微かに頷いた。 「チッ。鼻鈍ってんな」 土地神様に嫌われたらここに住めなくなる。 ストーカーに知られてしまったけれど、とても気に入った場所。 ここにいたい。 ここで夢樹と暮らしていきたい。 「す、すみません、土地神様……」 こいつさっきから神、神って、俺をあんな狡賢い奴等と一緒にしやがって。 でもまぁ男にしちゃあ別嬪だ。 正直、長いこと封印されてこちとら溜まってんだよなぁ。 「ま、いーわ、穴はあるしな」 吾牙は鷲掴みにした華奢な足首をさらに左右へ押し開き、長く厚い舌をべろりと這わせた、これまで秘められてきた……尤利の処女尻孔に。 「ッ…………！！」 べちゃべちゃと尻の狭間を舐る、太い頑丈な指で尻たぶをしっかり掴んで肉孔を強引に拡げる、獣唾液で満遍なくぬるぬるした舌を容赦なく捻じ込む。 「ん……ッ！」 ど、どうしよう、すごく大きな舌がアソコに、アソコのナカにまで、え、抉られてる……。 「自慢じゃねぇが俺の息子は特大だからなぁ、ぶっ壊れねぇよう念入りに解しておかねぇと」 べちゃべちゃ、びちゃびちゃ、尻の狭間をたっぷり舐め上げつつ立派な舌で尻孔をほじほじし、大量の唾液をどぷどぷ流し込む。 「あ、あ、あ……ッ！」 一方、居間の方でじっとしているよう言われた夢樹は一人落ち着きなく時間を過ごしていた。 お父さん、土地神様の言う通りにしなきゃって、ああ言ってたけど。 あんなムキムキ犬人間が神様？ ストーカーよりタチ悪くない？ ていうか、ほんと、あれなに？ 「お父さんを嫁にするって……意味わからない」 居ても立ってもいられない夢樹が居間でウロウロし、時計を確認してまだ午後七時を過ぎたばかりなのかとゲンナリしていたら。 「あーーーー……ッ！」 尤利の悲鳴が聞こえた。 ビクリと震えた夢樹は途方に暮れて明かりのない廊下奥を眺める……。