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罪なヒトと名無しのケダモノ-3

次の夜も美女の父親はケダモノの城を訪れた。 その夜は外よりも凍てつく廃墟さながらに荒れ果てた城の中で、長椅子の上で、ケダモノと。 仰向けに横たわった彼の浅ましい蕾を抉じ開けて奥深くに潜り込むケダモノ男根。 すでに一度種付けし、子種で氾濫する肉孔奥を、さらに淫らに激しく突き上げる。 美女の父親に覆いかぶさったケダモノは切なげに捩れた顔を舐めながら腰を大きく振る。 今にも壊れそうな長椅子。 ケダモノの高速律動に脚がガタガタガタガタ軋む。 「あ、あ、すごぃ……もっと……もっと欲し……もっと……」 蒼白だった肌を隅々まで紅潮させて彼はケダモノを求めた。 毛深い体を抱きしめ、醜い顔に頬擦りし、心身ともに縋りついた。 もっと私を抉じ開けて、もっと奥まで来て、もっと注ぎ込んで。 ずっとこうなることを望んでいた。 ずっと君のものになりたかった。 「もっと……愛して……?」 体を重ねるごとに、ケダモノの脳裏には、かつての野獣の声が蘇る。 ……アイしてル、ーーー…… ……アイシテル…… 今のケダモノには理解できない記憶の声。 でも安心する。 彼のそばが自分の居場所なのだと、そう、ケダモノなりの心で感じる。 そうして美女の父親は村から城へ移り住むことにした。 「お父様、食事を持ってきたわ」 よく晴れた昼下がり。 馬に乗って城を訪れた美女の視界に広がるは、前にもまして美しいバラに彩られた庭。 さすがに城の修復はされずに不穏な佇まいのまま、なはずが、庭が復活したおかげなのか、それなりに立派に見える。 庭のほぼ中心に座り込んでいた美女の父親。 その傍らではケダモノが丸まっていた。 移り住んだ当初、訪ねてきた美女を威嚇していたケダモノだが、彼に窘められて以降、露骨に牙は剥かないようになった。 「じゃあ、私、行くわ」 「もう? バラは? 一輪、いらないかい?」 「いらないわ、私、バラは嫌いになったの」 美女は馬にひらりと乗って来た道を戻る。 手を振る父親に手を振り返し、正面に視線を据え、緑豊かな道を駆け抜けていく。 『お前の父親ガ病に伏しタ……早く戻レ、看病シロ、ホラ、早く行ケ』 『私は大丈夫だから、すぐに治るから、今すぐ彼の元へ戻りなさい、さぁ、早く』 私って悪者かしら。 二人に二人の想いを伝えていれば二人は真実の愛を得て、あのひと、ケダモノに成り果てる前に元の姿に戻ることができたんじゃないかしら。 でも、そうなると、大切な二人を一度に失って、一人ぼっちになってしまうから。 私、言わなかったわ。 「でも、結局、一人ぼっちね」 罪な私への罰ね、きっと。 end

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