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ご主人様はペット希望!?-5

優雅に連なるソメイヨシノに抱かれるようにして佇む桜ノ森学園。 その学園で「桜ノ神」と呼ばれる一人の男子生徒がいた。 「あ、見て、桜ノ神!」 「今日も美人……」 学園随一の美貌を誇る有栖川玲。 見目麗しい桜の君には誰にもナイショの秘密があった。 ほのかなバターの香りがふわりと漂う秘められた戯れ。 「あ……ん……っ……」 総合病院の外科部長である父親、デザイナーの母親が不在の有栖川邸にて、その秘密の戯れは行われていた。 「ん……あっ」 シングルベッドにしどけなく仰向けとなったバスローブ姿の玲。 その唇は蕾が綻ぶように淡く色づいて甘い吐息を散らして。 乱れたバスローブ。 その下半身に位置を据えて先程から玲の色香を加速させているのは。 「アンジェラ……もっと……舐めて?」 玲がこの世界で愛して愛してやまないアンジェラ。 雄々しく、しなやかで、鋭く研ぎ澄まされた五感を擁する大型犬だ。 背徳的で淫靡な戯れに溺れるほどに玲はアンジェラを。 「あんっ」 肉厚の長い舌は溶けかけのバターをすっかり拭い、次は玲の先走りなる愛液を舐め尽くそうと、健気な愛撫にすっかり熱せられたペニスを上下に行き交う。 ざらついた舌に延々と刺激されて玲は切なげに身悶える。 玲の嬌声とアンジェラの短い呼吸音が二重奏を織る。 やがて。 「あ……ぁん……っゃ……っアンジェの、おっきぃの、奥まで……!」 真っ白なシーツの上でアンジェラと交わり、さらにバスローブが乱れた玲、四つん這いとなって悩ましげに肢体を震わせて愛犬との交歓に夢中に。 アンジェラのわんこぺにすがバターの残り香薫る蕾孔を激しく行き来する。 御主人様への種付けを目指して鍛えられた下肢がリズミカルな律動を刻む。 「アンジェぇ……お願ぃ……いっぱい、いっぱい、ちょおだい……? アンジェラの、熱いの……おれのおしりに……射精()て……?」 バスローブ下に覗く汗ばむ背中を労わるように舐め、アンジェラは、御主人様の熱望を叶えてやる……。 「あ…………!」 そんな秘密の戯れが。 ある出来事をきっかけにして激変した。 『はぁはぁ、今日の桜ノ神もまた美しいです……!』 ぎしッぎしッぎしッぎしッ 「あんっ……あんっ、すごぃ……ッぁぁぁ……ッッッゃぁぁぁぁぁーーーッ!」 「は……っ玲……かわいい……」 これでもかとバスローブを乱して悶絶する玲を突き揺さぶるのは、しなやかで雄々しい黒とタンの短毛に覆われた体ではなく。 「玲……玲……きもちいい?」 玲と同じく十代の瑞々しい肌を全て曝して、露出された柔尻を両手で握りしめ、小刻みにピストンしながらセックスに浮かれた眼差しを紡ぐのは。 「ん……きもち、いい……ッもっと突いてぇ……アンジェラぁ……っ」 そう。 彼はアンジェラ。 正確に言うならば。 ひょんなことから玲に付き纏っていた同じ高校の変態男子、緒賀狂也と中身が入れ替わったアンジェラだった。 で、当の狂也の中身はと言うと。 「はぁはぁはぁはぁ!」 「ッ……また緒賀が盗み見してる……」 「……え……ッ?」 ベッドでしこたま愛し合っていた玲とアンジェラ、ドアの方へ視線を向けてみれば。 大型犬の成りをした狂也がドアの隙間から涎を大放出しながらじっっっとこちらに釘づけ状態であった。 「……リビングに繋いできたはずなのに……」 「首輪抜け、習得したみたい、嫌な奴」 追い払ってくる、そう告げて玲から離れようとしたアンジェラだったが。 「やッ……行かないで、アンジェラっ」 「……玲、でも……」 「いや……お願い……このまま……ね?」 我が身から去ろうとしたアンジェラの熱に漲るペニスを、玲の蕾孔が、キュッと引き留める。 自分自身も欲深く反り返らせて、ひくひくと震えながら、肩越しに潤んだ瞳でアンジェラを一心に見つめる。 「おれのこと置いていかないで……?」 大嫌いな緒賀を今すぐにでも追っ払いたかったはずのアンジェラだが、愛しい御主人様のお願いには逆らえない、というかむしろさらに滾ってしまって……。 「ぁっぁっぁっ!」 「玲……っ玲……ッ!」 「ゃーーーっ……! アンジェぇぇ……ッ! ぁ、ぁ、ぁ、ぁーーーー……!!」 らぶらぶぶりを見せつけるように二人はいっしょに達した。 悶えるように収縮を繰り返す蕾孔の奥でアンジェラのペニスが激種付けに至り、派手な射精痙攣に促されて玲も自身の腹を白濁に濡らした。 「あ……ぅ……!」 「はぁ……玲……好き……ずっといっしょ……」 「ん……アンジェラ……おれも好き……ずっといっしょに……いようね?」 ベッドにくたりと重なって息を上擦らせながらも、らぶらぶキスと睦言を交わす二人。 たまらんですたーーーーーーーい!!!! 思わず馴染みのない方言使うほどにたまらんですばーーーーーーーい!!!! ドアの外ではぁはぁ死にそうになっている狂也、思わず丸まってクンクンキュンキュンしっぱなし。 途方もないよだれで水たまりが出来上がっている。 桜ノ神のおねだりでご飯何杯もおかわりできちゃう!! そしてゴムなし生えっち!! しかも中出し!! なんですかもーこの魅惑のアンサンブル攻撃!!!! 桜ノ神ほんま最高最強ぉ!!!!!┌(┌^q^)┐…… 「緒賀」 クンクンキュンキュンしていた狂也、はっと我に返れば。 ドアのすぐ向こうに無表情で怒れるアンジェラが立っていた。 「ぎゃわーーーーーんっ!!」 「だめ、アンジェラっ」 「もう怒った、緒賀、嫌い、大嫌い」 両親が不在の有栖川邸を逃げ回る狂也、追うアンジェラ、その後に必死で続く玲。 がっちゃーーん! がっしゃーーん! 「待て、緒賀」 もーーーーしつこい! アンジェラの奴、台所の油汚れか!? 風呂場のカビか!? ちょっとくらい盗み見してはぁはぁするくらい別にいーだろ!? こっちは愛しの桜ノ神のお汁、ちょっとお裾分けしてもらいたいくらいなのに!! いろいろガマンしてるのにぃぃ!! 「緒賀」 一階へ逃げてリビングやらダイニングをインテリアを倒しつつ必死こいて駆け回っていた狂也、再び二階までダッシュで駆け上がると、もうすぐそこまで迫ってきているアンジェラにあわあわあわわ。 追い込まれて、我を失い、てんぱった狂也がとった行動は。 「あ!」 アンジェラの後ろにいた玲は目を見開かせた。 二階から踏み切って跳躍したてんぱり狂也が、自分と同じく階段途中にいたアンジェラに飛びかかろうと、短毛に覆われたその体を宙に翻させたのを目撃して。 咄嗟にアンジェラの前に。 「玲!!!!」 …………いたたたたたた。 …………なんかお星さまが見える、家の中なのに、おもしろーい。 「玲! 大丈夫!? 玲!」 うるせーな、アンジェラの奴……お前のせいで頭んなか真っ白んなっちゃったじゃねーか、ていうかいい加減俺の体返せよ、泥棒犬め。 「玲! 聞こえる?」 ぐらぐらぐらぐら。 揺さぶられて狂也は気持ちが悪くなった。 「あー……もう、なんだよ……あっち行けよ、泥棒犬……、…………ん?」 あれ? 俺、喋れてる? 「げっっっ!?」しか言えなかったはずなのに……おお、とうとう喋れる犬にまで進化しましたか、さすが俺。 「…………まさか…………」 そこで狂也はぱっちり目を開けた。 自分を覗き込んでいるアンジェラとばっちり目が合い、ひぇっと、瞬時に竦み上がる。 「わーーーー! 噛まないでっ!! お願いアンジェラ様ぁ! お許しをぉ!!」 「……クーン……」 アンジェラの腕の中にいた狂也、その鳴き声を聞いて、何気なく視線をそちらへ。 自分のすぐ隣にアンジェラがうずくまっている。 濡れた瞳でこちらを見つめている。 …………ん? 違うだろ? だってアンジェラは今俺の体に、んで、俺はアンジェラの体に……あれ? でも今目の前にアンジェラの体が……うぉぉぉ、意味わかりません、この入れ替わりシステムの攻略本、どこかにありませんか? 「そんな、ひどい、そんな」 そう。 アンジェラが嘆くのもそのはず。 アンジェラを庇って、てんぱり狂也にタックルされた、玲。 二人は共に階段を転げ落ちた。 深手は追わずに済んだものの、だがしかし、だがしかし。 「…………え、え、え…………?」 桜ノ神こと有栖川玲の体にINした狂也、凍りつくアンジェラの腕の中でぱちぱち瞬き。 アンジェラの体にINした玲、凍りつくアンジェラにスリスリし、クーンと悲しむ。 世にも最悪な入れ替わりが起こってしまった。 「俺、今……桜ノ神なの?」

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