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おすふぇろもんではらませて-3
蜩が淋しげに鳴き渡る夕暮れ。
社は部屋にこもって小説を打ち込むのに集中していた。
待ち遠しい夕食まで遅めの昼寝に耽っていた時生。
そろそろ準備をしないと、しかし今日のお泊まりが楽しみで昨晩はなかなか寝つけず、睡魔についつい平伏してしまっていた。
ずしり
「……ん……?」
重た……これ、鏡が乗ってきた……? 構ってほしいのかな……。
「重いよ、鏡……もうちょっとで社さん下りてくるから……」
居心地のいいアンティークソファに腹這いになってクッションに顔を埋めていた時生はもぞりと頭を起こした。
「あれ」
乱だ。
乱がおれに乗っかってくるなんて珍し……外に行きたいのかな。
「乱……どうしたの……ふわぁ……そろそろ準備しようか、な……?」
べろん
ほっぺたを舐められた時生。
眠気を引き摺って締まりのなかった目つきが、ふと、さらに重たげな気だるさを孕んだ。
「ふ……くすぐった……なんか……ぽかぽかする……?」
普段はおっとりな乱に激しく頬を舐め上げられて妙な火照りに満たされていく体。
黒虎の性フェロモンだ。
見た目はなかなか立派だが成獣にはまだまだ程遠いこどもながらもいっぱしの誘惑力、絶大効果をぶっぱなしてくる。
希少種黒虎の性フェロモンを叩きつけられて平気でいられる人間などいない。
十代半ばの時生など、ひとたまりもなかった、しかも。
「あっ……鏡まで……?」
もうかたっぽの頬を鏡にべろんべろんやられて、黒虎双子に同時に顔を舐められて、顔どころか首筋や腕、足、お腹まで、とうとうアソコまで……。
「だっだめだよ……だめだってばぁ……こらぁ……っ」
どうしよう、なにこれ、頭がふわふわして……体中ジンジンして……きもちいい……。
こんなこと絶対だめなのに。
許されないのに。
お皿や花瓶を割っても一度だって怒ったことがなかった社さんでも、絶対怒る。
美術部でもないおれに絵のこと色々教えてくれた日高先生に、絶対軽蔑される。
でも、どうしよう、どうしよう。
「乱……鏡……おれのせいでおこられたら……ごめん……」
「ん。今来たのか、日高」
「おう。スイカと花火買ってきたぞ」
「道理で大荷物だな」
執筆が一段落ついて外を見ればすっかり宵闇に浸された竹林。
自室を出た社がやたら軋む階段を下りれば玄関で靴を脱いでいた日高を見つけ、二人は揃って居間へ……。
「あ……っせんせ……社さぁん……っ」
居間の出入り口なる扉を開くなり二人は揃って硬直した。
服をビリビリされてほぼ素っ裸になった時生に鏡が乗っかっていた。
ものものしげに揺れる漆黒の腰。
こどもの割にご立派な獣男根が青少年の秘めたるアソコに……ばっちり挿入っている、ピストンしている、ずぶずぶずぶずぶ突いている。
まさかの光景に棒立ちになっている男二人の前で黒虎双子は悠然と入れ代わった。
乱の獣男根がずぶずぶずぶずぶ呑み込まれていく。
すでに何度もかわりばんこに時生と交尾していた乱と鏡、ふやけた穴の入り口、奥はキュンキュン締まり、未完成なはずの雄膣は獣汁に濡れまくった双子男根をしっかり抱擁する。
鏡に貫かれ、乱に頬をべろべろされながらも、時生は。
突っ立ったままでいるオトナ二人へ震える視線を。
「ごめ……なさ……おれのせぃ……っ乱も、鏡も……わるくなぃ、です……っふぁぁ……っ」
黒虎が人間と契る、二人はそれを知っていた。
しかし双子はまだまだこどもだし、相手が時生だからと油断していた。
何せ時生だ。
どこからどう見ても平凡極まりない、ぱっとしない、極々普通の男子高校生だ。
時に家猫さながらに懐っこいながらもやはり神秘的な黒虎は面食いで余程の相手でないとツガイに選ばない、そんな固定観念を勝手に持っていた二人、だからこそ時生をバイトに選んだというのに。
二人が来ても交尾をやめない黒虎双子。
完っ全に時生をツガイ扱いしていた。
むしろ見せつけるようにガウガウガウガウ激しく動き出した、おかげで。
「あーーーー……っっっ」
射精には至らない、その分絶頂に区切りがない、長々と続く交尾に時生はいつの間にやら気を失っていた。
「ごめんね、雨宮君」
「教師失格だな、いや、人間やめるべきレベルだよな」
真夜中、ようやく黒虎双子の興奮が引いて交尾が終わったかと思えば。
希少種のダダ漏れ性フェロモンに影響を受けた、平凡男子の世にも不憫な有り様に猛烈に発情した、随分と身勝手な社と日高に時生は挟み込まれていた。
「正直、あの子らがすごく羨ましくて堪らなかった」
「まさかお前があんな……反則だろ」
床に寝そべった乱と鏡が余裕げに見つめる中、オトナ二人にかわるがわるキスされて、心も体もへろんへろんな平凡男子はかろうじて思うのだ。
乱と鏡、社さんと先生に怒られなくてよかったぁ……。
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