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おすふぇろもんではらませて-5

『今度は花瓶割ってしまいましたスミマセンっっ』 本当は掃除中に鏡に全力でじゃれつかれて、その弾みで割ってしまったというのに、全て自分の責任だという風に報告してきた優しい男子高校生。 たまに食事をご馳走すれば『こんな味つけ、ウチでは食べれないです、ていうか初めてです』と本当に美味しそうに食べてくれた。 少し不器用で、協調性があって、真面目で、絵を描いているところを後ろから覗き込んでいたら恥ずかしがって隠したがっていた彼が。 雨宮君、乱と鏡から、あんなに深く。 一夫一妻主義の黒虎。 あの子らにツガイなんてまだ先の話だと思っていたのに。 まさか雨宮君が選ばれるなんて夢にも。 「おれが……っわるいんです……鏡も乱も……わるくなぃ、です……っ」 禁忌を破らされても尚、乱と鏡を庇って。 君は本当に優しい子なんだね……。 夜気に閉ざされていた居間に瀟洒な卓上ランプの明かりがふわりと灯った。 「雨宮、雨宮」 時生はそれまで気を失っていた。 自分を呼号する声に導かれて目覚めへ、ほんの一瞬瞼を力ませて緩々と開いてみれば。 「雨宮君」 ……あれ、社さんだ。 ……さっきの声、日高先生だと思ったのに。 「大丈夫?」 あ。 「っ……あの、おれっ……ごめ、ごめんなさぃっ、すみま、」 「謝らないで」 健気に口を閉ざした時生に社はそっと微笑みかけた。 「君は何一つ悪くない。黒虎の性フェロモンに抗える人間なんていないからね」 今、何時だろう。 暗いけど、ここって居間だよね。 家に帰らないとみんな心配……あ、そっか、今日はお泊まりだって言ってたから帰らなくても大丈夫なんだ。 どうしよう。 乱と鏡と、あんなこと。 家族のみんな失神する……。 「雨宮」 そのとき時生はやっと気が付いた。 ソファの上で自分が後ろから日高に抱きしめられていることに。 黒虎双子と交尾して、気を失って、目覚めれば教師の日高にぎゅっとされていて、目まぐるしいまでの混乱続きでワケもわからず「???」している時生にさらなる衝撃が訪れた。 それまで視界にまるで写っていなかった日高に顎を掬われて背後から不意にキスされた。 唇に。 しかも……深いやつだった。 温い舌で口内をゆっくり掻き回されて相変わらず「???」な時生、黒虎に処女を奪われた直後に初キス喪失、ただただワケがわからない。 どうして日高先生にキスされてるんだろ、しかも社さんの目の前で。 おれ、どうしたらいいの。 なんかこわい。 いろいろありすぎて、何にもわからなくて、こわい……。 「……」 ぽろりと涙した時生にすぐに気が付いた日高は。 キスをやめるどころか。 微かに震えていた下唇にやんわり噛みついた。 「っ、っ、っ」 些細な刺激にビクリと波打った体。 黒虎双子にビリビリにされた服はいつの間にやら蔑ろにされて素っ裸にされていた。 「……ふ……っ」 問いかけることもできずにいる捕らわれたままの唇。 ゆっくり舌を舐められた。 歯列の裏まで。 呼吸が難しくなるくらい、たっぷり。 社はぽろぽろ涙し続ける時生にさらに近づいた。 キスに耽る日高の代わりに突然の出来事に怖がる平凡男子に優しく囁きかけた。 「正直、あの子らがすごく羨ましくて堪らなかった」 ぎゅっと閉ざされていた時生の瞼により力がこもる。 「完全に中てられたよ……乱と鏡、双子と交わってる雨宮君の姿にね……君がああなるなんて思いも寄らなかった」 囁きながら時生の涙を攫った端整な唇。 「僕も日高も獣みたいに発情してしまったんだよ、ごめんね、雨宮君……」

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