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いいえ、それは交尾ではありません-2

十五はさらに大きくなった。 しかも二足歩行ができるようにまでなった。 十五はとても大人しいので歩き回るようなことはせず、平日、ミヲが学校から帰ってくるまではクローゼットの中でじっと主人を待っていた。 夜、食事の際はダイニングテーブルの向かい側に彼を腰掛けさせて、向かい側でご飯を食べた。 入浴時は湯船に十五を浸からせ、体と頭を洗い終えると、一緒にお風呂に入った。 十五は時々鳴くようになった。 真夜中、ベッドでミヲの尿を啜りながら、嬉しそうにキュウ、と声を上げるようになった。 「十五、しっ」 ミヲが唇の前で人差し指を立て、注意しても、二つに分かれた舌を指に巻きつかせてじゃれついてくる始末だった。 その夜もミヲは誰にも内緒の秘密を十五とこっそり楽しんだ。 色鮮やかな口内に放埒に排尿し、満足して、クローゼットに彼を戻すと布団を被って眠りにつこうとした。 きぃ……。 微かな音が静寂に響いてミヲは顔を上げる。 十五がクローゼットの扉を開いて部屋の中へ出てこようとしていた。 「まだ遊びたいの、十五?」 小声でミヲが問いかけるとキュウキュウ彼は鳴いた。 「しっ」 ミヲは布団から這い出てベッドに手を突き、そして、それを目の当たりにして双眸を丸くした。 クローゼットから出てきた十五はミヲの背丈をすでに追い越し、動物番組で見たことのあるワニくらいのサイズとなっていて、壁にまでその影を伸ばしていた。 でも見た目は蜥蜴に他ならない。 稲荷神社で拾ってきた彼がそのまま大きくなっただけだった。 そんな彼は二足歩行をするようになってから柔らかな白い腹を見せるようになっていたのだが、下の辺り、股の間に、何やらピンと立ち上がるものがある。 もしかして……さっきまでなかったと思うけど……。 「十五、チンチンが生えたの?」 生殖器を生やした十五はミヲのいるベッドにまでやってきた。 いつになくキュウキュウ鳴いてミヲに覆い被さってくる。 ミヲは好奇心に促されるまま肉色の生殖器に触れてみた。 「キュウっ」 ミヲは慌てて手を離した。 ごめん、痛かったのかな。だけど声おっきいよ、十五? ミヲが頭を撫でてやると十五は擦り寄ってきた。 体格差のあるミヲはよろけてベッドに背中を沈める。 十五はキュルルと喉奥で鳴きながらミヲのパジャマを全部脱がした。 下着も、不器用な手つきで膨らみのある足から脱がしきる。 「キュウキュウキュウ」 声おっきいってば。 今日は出張でお父さんは家にいないけど、お母さんに聞こえちゃう。 「キュウキュウキュウキュウ」 十五の生殖器はミヲのものと大して変わらないサイズだった。 ただ、ぬるりとしていて、ピンと立ち上がった様は精通を迎えていないミヲには物珍しく、嗅いだことのない甘い匂いまで放っていて、興味は尽きなかった。 十五はミヲをうつ伏せにするとその背中に白い腹をくっつけてきた。 尻に彼の生殖器が当たっている。 ミヲは肩越しに、自分に覆い被さる十五を見上げようとした。 「……えっ」 肛門にツプリと生殖器の先が差し込まれる。 むず痒いようなもどかしい熱が下肢に広がっていく。 ミヲはただ不思議に思って十五を顧みた。 十五は舌を伸ばし、ミヲの唇に赤紫の滑った先端を伝わらせる。 そして、また、生殖器をミヲの肛門に押し入れてきた。 痛みはない。 ぬるぬるしていて、小さいから、腸壁を傷つけることもない。 何、これ……変なの……十五のチンチンがお尻に入っていて、熱くて、何だか……ぼうっとする……。 その時、ミヲは、思い出した。 学校の帰り道で二匹の野良猫が妙な声を上げながらぴたりとくっついていた。 とても苦しそうで、嫌な、怖い声を上げていた。 あれって確か交尾っていうんだ。 じゃあ、今、ボクは十五と交尾してる? だけど全然苦しくないし、嫌じゃないし、怖くない。 じゃあ、交尾じゃなくて、違うものなのかな? これって何だろう? ベッドがゆっくりと軋む。 ゆっくりと動く十五に合わせて、ぎし、ぎし、と鳴る。 十五の生殖器が肛門を出たり入ったりしている。 ヌチュヌチュ、クチュクチュと、粘液の掻き乱される音も鳴っている。 全身を蝕む熱でぼんやりするミヲも、十五と共に、小さい鳴き声を上げていた。 「ぁん……ぁん……」 体の下に伸ばされた舌がミヲの陰茎の尿道を弱めでありながらも執拗にほじくっている。 出し切ったはずの尿をシーツに切れ切れに散らして、ミヲは、かつてない甘い感覚に支配され、シーツを握り締めて身悶えた。 十五はぎこちない、とてつもなく強張った動きで、ミヲの肛門を生殖器で何度も突き刺す。 「あぅ……あ」 ミヲは閉じていた目を開いた。 「あ……あう……み……を……」 うそ。 十五がボクの名前を――。 「きゃぁぁぁぁああああああ!」 真夜中の静けさを切り裂いた悲鳴。 深緑に囲まれた稲荷神社に差す暖かな木洩れ日。 掌に乗せた小さな、綺麗な、生き物。 お前の名前は十五だよ。

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