119 / 195

真夏の夜の悪夢!廃病院で触手退散!?霊能者助手に降りかかる過激触診!!-2

砂塵や鉄屑で散らかった通路。 名前も知らない医療器具が無造作に打ち棄てられている。 廃病院に何が巣食っているのか、一先ず正体を突きとめるため個人病院にしてはやたら広い院内を歩む二人。 外では夕焼けが宵闇に次第に蝕まれつつあった。 廃虚に差していた日の名残りがゆっくりと薄れていく。 「せ、先生」 「どうしました、また何か感じましたか?」 「……お、おといれ」 「うん?」 「……トイレ行きたいです」 トイレに一人で行かせたのが間違いだった。 離れるな、彼にそう言い聞かせておきながら。 「公平君? まだですか?」 とっくの昔に水道も電気も止められている廃虚だ、だからと言ってその辺でシャーなんてお行儀が悪いので形式を守って病棟片隅の男子トイレへおっかなびっくり向かった公平が。 なかなか戻ってこない。 通路で待っていた鈴木が覗いてみれば。 「……しまった」 陰惨たる薄暗い男子トイレに、もう、公平の姿はどこにもなかった……。 ……。 ……あれ、俺、どうしたんだっけ? あ、トイレ行きたい。 あれ、でもさっきトイレ行かなかったか? ホラー映画も顔負けのおどろおどろしいトイレで、出るものも出なくて、便器前でちょっと苦心していたら……。 ……あ。 ……いきなり後ろから口を塞がれて……何か薬品めいた匂いを嗅がされて……。 俺、失神した? ……。 ……ていうか、体、動かせなくないか? すっかり意識を取り戻した公平だが。 目を開けるのがすごく怖い。 このままずっと閉じていたい。 『公平君、怖いのによく頑張りましたね』 駄目だ、そうだ、頑張らなきゃ。 頑張って目を開けて周囲の状況を確認しないと。 ほら、簡単だろ、瞼を上に持ち上げるだけだ、そっと、そーーっと……。 ……………。 公平はやっぱり目を開かなければよかったと後悔した。 そこは診察室だった。 全体的に暗いがどこに何があるのか、ものの輪郭などは捉えられる。 公平は診察台に寝かされていた。 いや、正確に言うならば縛りつけられていた。 診察室には公平以外にも……ソレがいた。 ぬるりと湿った、無数の、虚空に気味悪く蠢く、性器と同じ色をした、太い、細い、卑猥な、 触手がいた。 「ぅぎゃああああああああああ!!!!」 真夏の夜が近づく廃病院の静寂が公平の悲鳴によって切り裂かれた。

ともだちにシェアしよう!