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おすふぇろもんではらませて-9
「ガルル」
ぎょっとして振り返った時岡の真後ろにはジェラルドがいた。
小松原達と離れたところで水浴びしていたらしい、漆黒の毛が満遍なく濡れている。
木漏れ日を浴びてまるでビロードさながらの艶を発する肢体。
冷めた眼差しではしゃぐ一団を眺めている。
懸命に間合いを保ちながら時岡は物言わぬ獣に話しかけた。
「彼等、とても幸せそうですね。小松原君が深い愛情を注いでいるのがよくわかります、そして、黒虎の方も小松原君のことをとても愛している……昨日、彼等のことを<これ>とか言ってしまって申し訳ないです」
蜻蛉が透明な羽を震わせて川辺を飛び回っている。
水滴を弾くビロードの毛並みがキラキラ、キラキラ。
さ、触ってみようかな。
真後ろでじっとしているジェラルドをちらちら見、時岡は、驚かさないようゆっくりゆっくり黒虎へ片手を伸ばしていく。
……やっぱり無理です、怖いです。
途中で断念して時岡が正面へ向き直った途端、ジェラルドの眼光が不機嫌そうにギラリと尖らされた。
次の瞬間、彼は全身を盛大にブルブルさせた。
ビロードから弾かれた水が時岡の背中をびっちゃびちゃにする。
「こら、ジェラルド!」
小松原に怒られたジェラルドはフンとでも言いたげに尻尾を左右にパタンパタンさせ、時岡は眼鏡をフキフキしつつ声を立てて笑った。
「先輩、今夜も泊まっていきません?」
「え?」
「お盆休みですし。ジェラルドも友達になりたがってるみたいだし」
「え、あの子が? そうですかね?」
「明日、ジェラルド帰るんです」
「え」
「先輩によくちょっかい出してるし。構ってほしいんですよ。ドライなあいつがああなるの、珍しいです」
「そうなんですか」
その日も小松原家の一間で時岡がぼんやり夜を過ごしていたら。
ドアがドンドン、ノックされた。
寝入り端で、慌てて眼鏡をかけて明かりを点け「どうしました、小松原君?」とドアを開いてみれば。
そこにいたのはジェラルドだった。
平然とドアの隙間からするりと部屋へ入ってくる。
呆気にとられた時岡だが、後輩の言葉を思い出し、ちょっと笑って布団上に戻って。
畳上で丸まったジェラルドを撫でた。
「僕と友達になってくれますか、ジェラルド君?」
予想以上の手触り。
これまでどうして躊躇していたのかと後悔するくらい夢見心地なジェラルドの感触。
「初めて自分から動物に触りました、君って……とっても美しかったんですね、ジェラルド君」
頬まで紅潮させて愛撫にのめり込んだ時岡は微笑み、ジェラルドはそんな時岡を真っ直ぐに見つめて……。
小松原は飛び起きた。
どったんばったん騒々しい物音が聞こえ、大慌てで部屋を出、音の発生源と思しきその部屋へ。
「時岡先輩ッ!?ッ、あ!!」
視界に飛び込んできた光景に小松原は仰天した。
「こ、小松原くん……」
黒虎の性フェロモンにやられて身も心もとろんな時岡、そんな先輩に向かい合わせでのしかかっているジェラルド。
ばっちり……合体している。
ジェラルドの獣男根が服を乱した時岡のナカにがっつりINしている。
「ジェ、ジェラルド……ッこらっ!!」
時岡が襲われていると思ってジェラルドを必死に退かそうとする小松原、そんな家主にガウガウ牙を剥くジェラルド。
するとビロードの黒毛並みに縋りついていた時岡もまた必死で声を上げた。
「小松原くん……っいいんです……」
「せ、先輩」
「こんなところ……ごめんなさい、本当、に……みっともなくって、でも……ジェラルド君とどうしてもひとつになりたくて、ッ、こんなはしたない先輩で……本当、申し訳ないです……っ、あ、ん……!」
どうしよう、と小松原は思う。
時岡は知らない。
黒虎に種付けされたら人間と動物の、性別の垣根を超えて、たとえ男であろうと身籠ることを。
「せ、先輩、あのですね、説明したいことが、」
「あ……っ!!」
慌てる小松原の説明なんぞ待たずに腰を振るジェラルド、奥深くまで突き立てられた獣男根で雄膣を擦り上げられて涙目で喘ぐ時岡。
まっかっかになる小松原。
そこへ。
愛しい伴侶を追ってジェシカがやってきた。
交尾真っ最中のジェラルドのそばで赤面する小松原を見て、何を勘違いしたのか。
「わっっ!!ジェシカっっ!?」
兄のすぐ隣で小松原を押し倒し、うつ伏せになった体にのそりと伸しかかる。
器用な前脚でパジャマ下とぱんつをずり下ろしてしまうと、瞬く間に準備の整った獣男根を、勝手知ったる妻の生尻奥へ……。
「あーーーーーーっ!そ、んなぁ……いきなひっ……先輩、が、隣いるのにぃ……っ!」
「あっあっ……小松原……くん」
「うううっ……先輩、俺とジェシカは……こーいう仲なんですっ……ジェンガもアベルもティアラも……っ俺が産みました!」
時岡は知った。
黒虎と体を重ねて種付けされると孕むということを。
「……僕が君のこどもを……?」
金色の眼差しにずっと見下ろされていた時岡はすでにぐずぐずな下半身奥で強い鼓動を刻んでいるジェラルドの分身に……ぽろっと涙した。
「嬉しいです……彼と家族を築けるなんて……ずっと一人だった僕に家族ができるなんて……夢みたいです」
僕の夫になってくれますか、ジェラルド君?
しなやかな肢体に両腕を回すと全身で縋りついた。
艶やかな毛並みに頬擦りして彼の子種を胎に願う。
応えるジェラルド。
都会で大分鈍っていたものの、この離島で伸び伸びと好きなだけ駆け回って野生の勘を取り戻し、短期間で鍛えた体を波打たせて……時岡を奥の奥まで愛する。
そんな獣兄に負けじと珍しくムキになって張り合おうとする獣弟。
腹這い小松原にガツガツガツガツ腰を打ちつけては雄膣底をグリグリグリグリ擦り尽くした。
「やんっっっ!ジェシカぁ……っ!!」
「あっあっあんっ……あっ……ジェラルドくん……!!」
熱烈な一夜は過ぎて。
離島を去ったジェラルド。
やがて彼の子をひっそり生み落とした時岡。
「先輩、淋しくないですか?」
「いいえ。だって僕にはこの子が、珊瑚がいますから」
小松原家の縁側でみゅぅみゅぅしている黒虎のあかちゃん・珊瑚をあやしている時岡。
隣で涙ぐみそうになっている小松原。
そこへ。
「ガルル」
「え! うそ、ジェラルド?」
定期船ではなく海を単身泳いで渡って全身濡れそぼった黒虎のジェラルドが庭に現れた。
驚いている小松原と反対にそっと微笑んで出迎える時岡。
小松原ファミリーが見守る中、腕の中の珊瑚(♀)を海水塗れのジェラルドにゆっくり見せる。
「君のこどもです。珊瑚と名付けました」
ぺろ、と我が子を舐めたジェラルドに微笑を深めた時岡。
何故か泣いている小松原に寄り添うジェシカとそのこどもたち。
いやはや、黒虎はとっても家族思いなのであーる☆
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