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夜のパトロールは危険がいっぱい!?気をつけて!触手青姦にご注意!!/触手神×バツイチおまわりさん
二十八歳の巡査長・公平 はド田舎の駐在所に勤務していた。
駐在所の前には田んぼ、後ろにも田んぼ、どこまでも悠々と広がる長閑な田園風景。
梅雨を控えたこの時期はカエルの大合唱が盛んであった。
「お巡りさん、おはようございます!!」
分校に通うこどもたちの顔と名前は全て覚えている、何せ全学年で生徒数九人だから。
「お巡りさん、これ、今朝ウチの庭で採れたトマト」
「オナスとピーマン、野菜は毎日とらなきゃねぇ」
毎日何かしら新鮮な食材を届けてくれる、お節介がつくほどに親切な地元民たち。
「ありがとうございます、いただきます」
「それにしてもねぇ、本当に出て行っちゃったの、奥さん」
「……」
「ちょっと! あからさますぎでしょ、ヒサコちゃん! でもねぇ、都会育ちのお嬢さんには大変だったのかしらねぇ」
「ねぇ~~」
両手いっぱいに野菜を抱えた公平は苦笑するしかなかった。
先月、三つ年下になる妻が駐在所兼住居から彼女の荷物と共に突然消え失せた。
テーブルにはサイン済みの離婚届があった。
昨年にこの駐在所へ異動になり、最初から田舎暮らしと電話番など諸々の雑務に戸惑っていたが、とうとう不満が爆発してしまったらしい。
『田んぼもカエルも名前のわからない虫も、嫌々わかっちゃう虫も、もう無理、ぜんぶ無理なの!!』
何回も電話をかけ、やっと繋がったかと思えば金切り声で泣き喚かれ、ブチリと切られて。
公平は離婚届にサインした。
「悪いことをしたな」
朝の挨拶が一段落つき、駐在所前を竹箒で掃除しつつ、ブルーの半袖シャツに制帽をかぶった公平はぽつりと呟いた。
俺はトト●が好きだったから、ここへの異動が決まったとき、手放しで喜んだ。
彼女にとっては地獄の始まりだったんだろうな……。
「おはようございます、お巡りさん」
公平はどきっとして振り返った。
いつの間に背後に立っていた彼をまじまじと見下ろした。
「お掃除お疲れ様です」
半袖シャツに、黒のズボン、白スニーカー。
一見して中学生と思しき、糸目の、これまで見かけたことのない少年だった。
「ああ、おはよう。この辺で見かけない顔だね」
「僕、鈴木って言います」
「鈴木……えーと……この辺に鈴木姓はいないはずだが」
制帽のツバをやや持ち上げて不思議そうにしている公平に鈴木少年はにっこり笑いかけた。
「僕、いわゆるアレなんです、不登校、環境を変えて新鮮な空気を吸おうと思って隣町の親戚のお家にお邪魔しているんです」
「隣町? 徒歩で山を越えてきたのかい。イノシシや猿が出るから危険だぞ」
「お掃除、僕がしますから、お巡りさんは書類整理をどうぞ」
その日から鈴木少年は公平のいる駐在所へ毎日足繁く通うようになった。
「見回りお疲れ様です、さっき電話がありましたよ」
「勝手にとったらいけないよ」
「西区の本庄のおじいちゃんからでした、犬小屋に狸が勝手に住みついたって、かわいいから一度見に来るといいって」
そういえば鍵をかけていったはずなのに。
「鍵? かかっていませんでしたよ? 疲れてるんでしょう、お巡りさん、お昼寝してもいいですよ、簡単なお昼ご飯作りましょうか?」
何とも不思議な鈴木少年。
「あらぁ、お巡りさん、聞いたわよ、このコ、甥っ子さんだってねぇ」
「はい?」
地域活動に顔を出していた公平が戻ると、駐在所のお留守番を勝手にしていた鈴木少年に奥様方が楽しそうに群がっていた。
「ごめんなさい、お巡りさん」
鈴木少年は呆れている公平にするりと擦り寄ると「不登校のことを色々聞かれたくなくて、僕はお巡りさんの甥っ子で、療養でこっちに来てるって、言いました」と、悪びれるでもなく糸目の笑顔で耳打ちしてきた。
よく喋るし、愛想がいいし、小回りも利く。
だけど何だか怪しくないか。
隣町の地域課に問い合わせてみるか?
いや……もしかして……ひょっとすると……。
彼は●トロ的な存在だったりするんじゃないのか……。
頭の一部がファンタジーでできている公平は巡査長らしからぬ怠慢ぶりで鈴木少年の違和感を見過ごしてしまった。
「おにぎり作っておきました、夜食に食べてくださいね」
突然、家族に去られて淋しさもあったのだろう。
地元民の前では気丈に振る舞っている公平だが、鈴木少年の前では愚痴をこぼしたり、不甲斐ない自分への劣等感、弱音を吐くこともあった。
「みんなを守るお巡りさん、疲れるのも当たり前です」
駐在所と繋がっている住居スペース、畳の上でウトウトな公平に膝枕してやっていた鈴木少年は団扇を緩やかに扇ぎ、にこやかに言う。
「たまには体も心も休憩させないと」
トト●のフカフカそうな腹枕には程遠いが、これはこれで……悪くない……zzzzz……
しかし公平巡査は知ってしまった。
鈴木少年の秘密を。
どうして、今、彼が自分の前に姿を現したのかを。
「この時を待っていたんですよ、僕も主 様も、ね」
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