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第9話
そして、数日が過ぎる。
あの日以来、久弥の姿は見えない。
図書館にもやってこない。
しかし、満は逆にそれで少し心を落ち着かせることが出来た。
あんな姿を見られてしまって、どういう顔で会えばいいのか分からないのだ。
代わりに図書館に来るようになったのは、満に暴行された本人、三野繁だった。
三野は満のことを訴えたりは、さすがに出来ないらしく、図書館にやってきては友達に満に対しての愚痴を、満に聞こえるように言うなどの嫌がらせで仕返しをしている。
「でさ、アイツ、ちょっと当たっただけでキレやがって、手加減なしだぜ、信じれるか?」
大袈裟に、三野に有利なように作り話をして仲間に言いふらす。
「うそ?そんな奴には見えないけどな」
「マジなんだって、騙されんな、俺が証明してるだろ、絶対近づくなよ! 死ぬかと思ったぜ」
満を睨みながら言う。
満は、三野の言葉には耳を傾けず、棚を片付け無視を決め込んでいた。ふと、そこに聞き慣れた声がする。
「おい、お前」
三野の勝手な言いように、納得出来ず三野を制するように声をかけたのは生徒会長の日種久弥。
その声には、満もピクッと、身体を反応させ振り向く。
「あ、会長! みんな、あの時俺を助けてくれたのは会長なんだぜ、会長が来なかったら俺どうなってたか、さすが生徒会長だぜ!」
「えっ生徒会長が?」
「すごいね、かっこいい!」
久弥の登場に女子生徒たちも集まってきて、話に加わる。
久弥は外野がいては深く追求できないので、三野の愚痴を止めさせるだけにとどめる。
机を囲んで、三野のいる場所で和んだ雰囲気の久弥をみていると、久弥が自分から遠くなるのを見せつけられているようで、逃げるように図書館の奥へと姿を隠す。
久弥は、満の動きを目の端に捉らえて、躊躇う心を抑え……。
「ごめん」
と、静かに断って、三野たちのいる席から外れる。
満を追って図書館の奥へ行く。
後ろ姿をみつけ、久弥は静かに声をかける。
「くすのき」
「ッ!」
まさか、久弥が話し掛けてくるとは思わなかったので、ドキッと胸がなる満。棚整理を途中に、急いで身体をかえし、久弥から逃げる。
「あっ、楠木ッ!」
あからさまに逃げられ、複雑な気持ちになり図書館を出て行ってしまった満を追いかける。
「会長~っ、ビシッと注意してくれよ!」
三野が久弥をはやすように声をかけるが気にする余裕などない。
「……」
久弥はそれを無視して満を追う。放課後で生徒が、殆どいないので全力疾走する。
本来は、廊下を走るなと注意する立場にいる久弥なので多少罪悪感が過るが、それでも満と話しがしたい、確かめたい、その思いで追いかける。
ぐいっと、久弥は満の腕を捉らえるが、すぐ振り払われる。
満はなぜ久弥が追ってくるのか分からず、視界から外れたくて突き当りの教室に逃げ入る。
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