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第11話《二人の距離》

それから、数日が過ぎる。 満は、いつものように図書館にいた。 言ったとおり久弥はピタリと姿を現さなくなり、今月も終わりが近づく。 当番月が終わるということは、もう、図書館に来る機会もなくなる。 久弥との接点が、まったくなくなるということ。 生徒集会などで、檀上に立って話をする久弥を見るくらいしか出来ない。 その、りりしい姿は、図書館で気軽に話しかけてきていた久弥とは別人のように遠く感じる。 満は、図書館の時計を確認して時間が来たので帰るために、資料室の鍵を閉めていた。 その時、不意に人の気配がして、満は振り返る。 カシャッ!   その途端、眩しい光が満の深緑の瞳を焦がす。 「ッ!?」 一瞬、目が見えなくなり片手で目に触れていると急に鍵を奪い取られる。 「これが鍵?」 その人物はカメラを片手に、奪い取った鍵を入り口へ持って行き…。 「入り口はここだけだよな」 などと言いながら入り口に鍵をかける。 密室を作り出したのは満の知らない生徒だった。 「えーと、クスノキミツルだよな?俺は空手部の宮下、クスノキに恨みとかないんだけど、罰ゲームでクスノキの裸写真とらなきゃならねぇんだ、悪いけど、協力してくれないかな?」 宮下の勝手な言い分に警戒心をむきだしにし、満は頭を横に振り、宮下の持つ鍵を取り返そうと手をのばす。 「おっと、これは渡せないな。やっぱり協力する気ないよな」 そう言うと宮下は鍵をポケットに隠す。 「じゃ、力づくになるけど?」 宮下は満の腕を掴み、自分の方へ引き寄せ、強引に学生服のボタンを外していく。 「ッ!? やめてください!」 満はドンッと宮下の身体を突き放す。 「俺もさぁ、こんなことしたくないんだけど、やらないとメンツ立たないしな」 などとぼやきながらも満に迫る宮下。 「近づかないでください!」 「クスノキって、瞳の色変わってるよな、それに、性別疑いたくなるような容姿だし、よくこういうコトされてるんだろ?」 宮下は、満の抵抗に怯むことなく近づいて壁ぎわへ満を追い詰めていく。 「それで、そいつらを返り打ちにしてるって噂だ。けど、俺は空手やってるから、そこらの奴よりは手強いぜ」 宮下はそういうと、二ヤッと笑い。 急に動きを早め、満の腕を後ろで交差させ、壁に抑えつける。 さらに片腕で身体を抑え、左手で満の手首を掴み動きを封じる。 「……動けないだろ」 薄く笑いながら言い、満のカッターシャツのボタンまで外していく。 「……ッ!」 満は身体をよじり、抜け出そうとするが、宮下の言う通り身体はびくとも動かない。 宮下はそのまま、満のズボンのベルトを外しにかかる。 そのため、宮下は一瞬視線を下げる。 満はそれを見逃さず、掴まれた手首をひねり、身体を滑らせ下へ抜け出す。 拘束から逃げながら、奪われた鍵も取り返そうと腕を伸ばす満だったが、宮下は逃さないよう、その腕を強く掴む。 「っと! 凄いな、お前。反射神経、俊敏さ、空手部に入らないか?」 あの状態からでも簡単に抜け出せる満に、驚き勧誘してくる。 「……っ」 決して服従しない鋭い視線、その綺麗な顔立ちを見つめて、今度は力ずくで満を押し倒す宮下。 「気に入った」 「ッぅ」 背中を打ち、小さく呻く。 宮下は小柄な身体を力いっぱい抑え、荒っぽく素肌をなぞり、満が反撃してくることを考えて構えながら触れていく。 「っ!」 そして、宮下は満の下半身へも触れる。 満は堪らず宮下を蹴り飛ばそうとするが――。 『やめろッ!』 その瞬間、満の頭のなかで強く響く声。 ドクン、と心臓が鳴りその声が満の動きを止めてしまう。 それは満の幻聴だったのだが、満にはリアルに心に残る、日種久弥の声。 急に抵抗を止めた満を見て不思議に思う宮下。 「何?どうしたんだ?」 満の瞳を見ると、悲しそうな辛そうな表情。 「……」 宮下は息を飲んだ…。

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