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第19話
聞き返されると、なんとなく恥ずかしい気持ちになり、満は顔を赤らめる。
「ごめん、ごめん。疑ってるわけじゃないんだ、そうか…なら驚いただろう」
久弥は満の頭を軽く撫でる。
「なんだか…ミツルが綺麗すぎて悪いコトは出来ないね」
「…悪いコト?」
満は軽く首を傾げ聞いてみる。
「欲深いんだ…俺は」
こんな純粋で綺麗な満に、自分の欲情を押し付けてしまうのは罪なことなのでは…と久弥は心の中で思ってしまう。
ようやく、お互いの気持ちが通じ合えたばかりだというのに。
「欲…ヒサヤの欲は何?」
ぽつりと満がまた聞いてくる。
「はは、それはまた今度話すよ」
今はまだ…満に伝える勇気が出ない久弥…
胸の中へ隠す。
満は久弥の言葉にを聞いて、静かに頷く。
そして、そっと…久弥の手の上に自分の手を重ねる満。
「…ヒサヤ、僕に…、できることがあるなら、なんでもする…他に何も応えるすべを知らないから…」
満は頼むように言う。
今まで人と必要以上の関わりを持たなかった満には、久弥の心の内を見通す力などないから。
「ミツル…」
その純粋な言葉を聞いて…久弥の心は鼓動を上げる。
満の手に指を絡め…もう一度、唇を求める久弥…。
満は、久弥と同じタイミングで瞳を閉じて…
キスを受け入れ…
今度は、久弥のディープキスを拒否することなく不器用に受けとめ…、久弥の背中…学ランを浅く握る。
「…ん、っ…」
久弥は満の口腔内を探るように深く熱く口づける。
満の反応が初々しく感じられ…さらに可愛いらしく思う。
「…大好きだ」
長いキスを終えて囁く久弥。
肩をゆっくり寄せて、久弥は躊躇うように息をつき、満に囁く。
「俺は…ミツルを抱きたい…」
熱い気持ちに押されて、久弥は自分の想いを伝えてしまう。
「え…」
その意味を、一瞬理解できなくて、満は聞き返してしまう。
(僕を抱きたい?女性のように…?)
「…僕と…性交、したいってこと?」
満は、いまいち理解に苦しむ。
知識として性交渉くらいは知っているけれど…一般的に男女が行うもので…。
男のミツルにどこまで、何が出来るのか…。
「…ミツル、今はいいんだ。ゆっくりでいい」
何やら、考えこんでしまった満の肩をなだめるように、優しくさすって言う久弥。
「ヒサヤ…うん」
(僕が…たとえ知らなくてもヒサヤが教えてくれるはず…)
自分は、それを受け入れるだけ…久弥の望むことなら叶えてあげたいから…。
そう心で強く思う満。
「…もうしばらく、こうしていよう」
薄暗くなった教室で…二人はひそかに身を寄せ合うのだった。
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