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第20話《付き合うコト》

それから数日後。 約束通り毎週水曜日に時間を作り昼食を共にとる2人。 第二技術室の鍵を借りてきて2人だけの空間で食事をする。 久弥は星波祥子に生徒会の話し合いがあるからと理由をつけて水曜日だけは満と食事をすることができた。 「ミツル!」 技術室の鍵をあけて中で待っていた久弥。 そこに足早で満がやってくる。 戸をしっかり閉めて… 満は久弥のもとへ辿り着く。 「ヒサヤ……大丈夫?」 「あぁ、心配ない。来てくれてありがとう」 「ううん」 「さ、座ろう」 教室の一番奥の席に2人は腰を下ろす。 久弥は家から弁当を持ってきているのでそれを開ける。 結構豪華な弁当だ。 満はいつも売店でパンを買って食べるので質素な昼食だ……。 「ミツル、これも美味いから食べてみて」 いつもおかずのない満に久弥は、自分の弁当のおかずを分けてあげる。 「いい、ヒサヤのがなくなるから……」 「俺はミツルに食べてもらいたいんだ。同じものを食べて美味しさを分かち合いたい」 久弥はそう優しく言い、満を見る。 「……なら、僕のパンも」 そっと満は自分のパンを差し出す。 「ありがとう、一口でいいよ。交換な、はい」 久弥は満のパンを一口かじり、美味しいなと囁いて、お返しに満へ、厚焼き卵を食べさせてやる。 「ありがとう……美味しい」 久弥の優しさに自然と笑みが零れる満。 久弥は満に色々な話をして楽しい時はあっという間に過ぎていく。 「ミツルは何でそんなに強いんだ?」 見た目は楚々として大人しく見える満だが、その実、そこらの男子生徒より明らかに強い。   気になって聞いてみる久弥。 「……物心つく頃には武術習ってた」 「へぇ…」 「父から自分自身を守るためって…言われて」 「……」 「見た目が…こんなだから、中学のときからよく…あって……」 負い目を感じているような瞳で久弥に伝える満。 「この間みたいなこと?」 三野や宮下たちに襲われていた時のような…。 「ん、前は、そのたびに殴って蹴って逃げてた…相手に怪我負わせて、僕は酷い奴だ」 表情を落として自分自身を責める満。 「ミツル、ミツルは悪くないよ、強引にそういうことをする方が悪い。されるがままになるのはおかしいから、嫌だったらそういう態度で示すのは間違いじゃないよ」 「ヒサヤ……ありがとう」 「それに、ミツルが他の男に乱暴されるなんて俺は許せない、もしまたそんなことがあったら相手を殴ってでもいいから逃げるんだ、分かった?」 「うん……分かった。でも人を傷つけること、悪いことだから、できるだけ傷つけないように逃げる…」 「ミツル、お前はホント…」 「ん?」 「いや、ミツル…出来ることならもっとお前と一緒にいたいな…」 「うん、僕もヒサヤと、ずっと一緒にいたい」 純粋に囁き返す満。 「ミツル…」 満のまっすぐで素直な気持ちを聞いてドキッと心臓が鳴る想いの久弥。 そっと名前を呼んで、久弥は満へ口づけを落とす。 愛しむように何度も口づけて… そっと離れ、瞳を重ね合わせる……。 「橋の下で今日も会える?」 「うん」 「良かった……時間、ギリギリまでこうしていよう」 久弥は優しく満の肩を抱いて囁く。 「はい」 こくん、と頷いて、満も久弥に身体を預け、昼下がり、つかの間の幸せな時を感じあうのだった。

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