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第21話

久弥と満の秘密の付き合いが始まって、一ヶ月半…。 昼間顔を合わせることは避けているけれど…放課後の教室や、学校の外では橋の下で密会を繰り返す二人。 以前よりも会う機会は増えたものの、やはり不自由にはかわりない。 今日もいつも会う橋の下で満は久弥が来るのを待っていた。 「ミツル!待たせてごめん」 いつものセリフ。 久弥は強制的に付き合わされている彼女を…家に送っていく関係で、どうしても満より遅くなってしまうのだ。 「…ううん、大丈夫」 満は薄暗い橋の下でひとり待っていたので、少し心寂しくなっていたところ、久弥が来てくれたのは嬉しくて軽く頭を横に振りながら久弥に歩み寄る。 久弥は満を抱き寄せるように片腕を回し…橋下のたもと、丁度…外界から死角になるいつもの定位置に、二人は腰を降ろす。 辺りは橋の下ということも手伝って寂しく暗い…。 けれど…二人の心は、あたたかい…。 会話の中心は久弥で、今日一日あったことや、気になることを満へ聞いたりしながら、限られた時間を過ごす。 暗くて満の顔が見えにくくなると、久弥は家から持ってきた懐中電灯をつけて明かりを燈す。 「明かりに照らされてるミツルは凄く綺麗だ…髪が透けて、茶色く見える」 緑の瞳に…黒髪が栗色に透けて見え、自然な感じに映る。 「……」 ふっと悲しげに俯く満…。 「…どうした? ミツル」 久弥は満の様子が気になり優しく問う。 「…ヒサヤは、茶色の髪の方が好き?」 ぽつりと答え聞く。 「…えっ」 「僕…髪を染めてるから、本当はもっと明るい毛色で…だから…」 隠していたわけではないけれど…偽りの姿をさらしていたことに少し罪悪感を感じ、俯いたまま言葉にする満。 「…だと思った」 久弥は軽く笑う。 「えっ…」 思ったより久弥の反応が優しくて驚く。 久弥は優しく微笑んで続ける。 「…髪はさ、気付いてたよ。初めて見た時から、なんとなく」 久弥の言葉に。 「…分かりやすい?」 髪を染めているのがすぐ分かってしまうほど変なのだろうか…と心配になり、自分の髪に触れながら聞いてしまう。 「…違うよ、黒髪も似合ってる。でも、本当の色は自然に映るから…いつか見てみたいな」 満の髪を撫でながら話す久弥。 「…もう、染めない。ヒサヤに…本当の姿みせたいから…」 満はそう伝える。 「ミツル、いいのか?」 「…本当は、染めたくなんかなかった。父が茶髪を嫌うから…仕方なく、染めてた」 ぽつりという満。 「そうなのか…でも、父親が怒るんじゃ…」 久弥は心配するが…。 「いい、今まで何も反抗せず生きてきた…だから、反抗してみたい」 こうして、家を抜け出すことだって、父や祖父から反感をかっている。 だから、ひとつふたつ反抗することが増えても同じこと…。 「…反抗したことがない…か、俺もそうだ。でもミツルは強いな、反抗することが出来るのだから」 「……僕、だけでは…出来ないこと、ヒサヤがいるから出来る」 満は久弥の頬に細い指で触れながらいう。 「ミツル…」 自分は満に比べたら親の言いなりで、政略結婚も仕方ないこと…と諦めていたので情けなく感じる久弥。 満はその綺麗な顔をそっと近づけ…久弥に柔らかくキスをする。 満からキスをされたことに驚く久弥…、いつも受け身でいる満が、自分から求めてくれた。 心が熱くなる感覚にとらわれる久弥。 「僕は…ヒサヤだけのもの…大スキ…」 唇を離してそっと伝える満。 「ミツル…」 その可愛らしい唇に久弥も、口づけし深く舌を絡める…。 鼓動が早まり…抑えていた感情が溢れ出しそうになる。 久弥はかぎりなく無防備な満の姿を瞳にとらえ、理性を無視し…胸の鼓動はリズムを上げる。 「…わ、ヒサヤ?」 次の瞬間…久弥は満を乾いた雑草の生える地面の上へ押し倒していた…。 殆ど、動物的な衝動だ。 「…ヒサヤ…っ?…んっ」 そのまま、満に熱く口づける…。 急に荒く豹変した久弥に、どう反応していいのか分からなくて、戸惑う満。 久弥は上服の裾から片手を滑り込ませ素肌へ触れていく…。 満は肌に触れる冷たい指に、身体を微かにビクっと震わせる。 「ミツル…」 囁かれた久弥の声は低く色っぽい…。 しかし…満には別人のように聞こえた…。

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